2
天を貫くが如く山脈、その麓に広大に広がる森林。その中にポツリと町があった。町で営むのは、ゴブリン、オーク、オーガ、コボルト、人間でなくモンスターと呼ばれる者たちであった。町中心の広場で数人で話し合っている。
「町の型は、出来上がってきたな。南側の農地が広がれば食糧問題は解決だなグルゥフ」
「しかし、北のエルフ達、森を切り拓くのには反対派が多いからなぁブルルゥ」
「仲良くだ、仲良。彼らも今後の事を考えるようになってきたから。賢者様が長く説得しておるしバゥ」
話し合う、古参の厳つい者たち。
ふと、噴水予定地の長椅子に座る小さなゴブリンを皆んなが見る。
「自然と共に生きるやり方は気楽だが安定はせん。自分の子供達の未来を考えればどちらが良いかを考えて欲しいと言ったよ。」
言いながらゴブリンは、懐中からキセルを取り出し咥える。
「賢者様、多種多様の種族による、国家?、国を作ると前に話された・・・本当に人族?があの山を越えられるとお考えですか?」
輪の中から筋肉隆々のコボルトが、目だけ山に向けて前にでる。
「直ぐには来ない、国が出来、ワシが死に、世代交代しても、来ないかもしれん。だが、多種多様の種族の中で、人族、人族は注意せんといかん」
賢者様と呼ばれたゴブリンは、皆に霊山と呼ばれる雲を貫き、大陸を分断する山脈の一際目立つ伝説のホワイトドラゴンが住む山を見る。
「人族を、敵視しているわけでは無い。ワシの師匠の・・・・・ふふ、大賢者様も人族よ。だが、その大賢者様がワシに忠告する。何事にも備えよと」
目を閉じ、備えるなど関係ないだらしのない自身が慕う師匠を思い出す。
「事実、ワシらは越えてきた。規格外のワシじゃなくとも、場所を選べば人族でも越えられるわい。簡単ではないがな。ウベルスの様に鍛えた者たちなら越えられるじゃろうて」
賢者は、コボルトを見据え、フゥと紫煙を吐く。
「バフフ、貴方のような方が沢山居たらこまります。完膚なきまで叩きのめされた昔を想い出す。今も鍛えているが、勝てるイメージが湧かない。」
「情け無いことを、お主らは各種族の長ぞ、ワシに手傷でも負わせてみよ」
賢者共に山越えしたゴブリンのフォボイ、オークのリア、元々住んでいたコボルトのウベルスは、お互いを見合いやれやれと賢者をみる。
「「「無理っす」」」
ゴブリンの賢者は、天を仰いだ。