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第二次世界大戦 概観  作者: 孫覇
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オーバーロード

 大戦の流れからは一度離れることになるが、ここで海兵隊という職種について説明する。

 海兵隊は上陸作戦を行う部隊のことだ。上陸作戦とは、その名の通り海から陸地に上陸する行動のことである。


 言葉で言うと簡単だが、実際にはそうではない。

 上陸は基本的にボートで行う。水陸両用戦車で行うこともあるが、数に限りがあるので、主に使われるのはボートだ。

 上陸する先は当然敵地。敵が待ち構えているところへボートで突っ込むのである。

 ゆっくりだと的になるから、それなりの速度が必要になる。波の上を飛び跳ねるでボートにしがみついているのだから、銃なんて撃てたもんじゃない。アニメでは走りながらはおろかアクロバティックに飛び回りながら射撃をしたりしているが、あんんなのは特殊部隊だって不可能だ。射撃するときは立ち止まる。20メートルくらいの近距離なら歩きながらでも撃てるが、相当訓練が必要だし、歩く速度もゆっくりだ。


 そんなわけで、上陸のときは火力が出せず、無防備になる。

 対して防御側はマシンガンでも地雷でもなんでも設置して待ち受けていられるわけだから、断然有利だ。相手は撃ってこないが、こちらは撃ち放題。

 上陸作戦は難しいし、損害も大きい。そこで海兵隊という、上陸作戦のみに特化した訓練を行なった部隊が作られた。

 とはいえ、軍事に詳しくない人間は海兵隊というのはどうもピンと来ない。海軍の船に陸軍を乗せただけに見える。今でも海兵隊は不要な組織だと言われ、アメリカでもあまりいい扱いは受けていない。まあ、死亡率が高いからそもそも人が集まらないというのもあるが。

 そんな海兵隊が廃止されずに生き残っているのは、結果を出してきたからだ。必要を理解されず、死傷者が多く、非難を浴びるからこそ、常に最前線に立ち、戦い続ける。もはや上陸行動がなくても、一番最初に戦場に入ったりもする。とはいえ、やはり根源は上陸作戦にあるのだが。

 その上陸作戦で史上最大のものが、これから語るノルマンディー上陸作戦である。


 ノルマンディー上陸作戦はオーバーロード作戦の一部だ。オーバーロードは連合軍がフランスに上陸してドイツ侵攻のための拠点を作る作戦に名付けられたもので、その最初の行動がノルマンディー上陸である。


 オーバーロードを成功させるため、英米は一年以上準備してきた。

 上陸地点を選定し、LST(戦車上陸用舟艇)を集め、上陸作戦の訓練を行い、大西洋の制海権を得る。

 1944年、ようやく準備は整った。

 連合軍はイギリスに39個師団、100万人以上の兵を集結。2回に分けてイギリス海峡を渡った。


 最初の上陸日の6月6日は天候が悪く、上陸には向いていなかった。これがドイツ軍を欺いた。ドイツ軍の指揮官たちは今日は連合軍は来ないだろうと思い、不在にしていたからだ。このときはフランス防衛の任にあったロンメルもまた、妻の誕生日を自宅で迎えるため、ベルリンへ戻っていた。


 油断していたドイツ軍に、連合軍が襲いかかった。慌てたヒトラーの本営は前線のルントシュテットに電話をかけた。「どうすればいい?」ルントシュテットは答えた。「戦争を終わらせるんだ! それ以外に何が終わらせるというのかね?」

 この言葉で、ルントシュテットは罷免され、後任にクルーゲ元帥が任命された。クルーゲ元帥は前線の状況を知るや、ルントシュテットと同じ見解に至った。ドイツ軍の戦力で連合軍に抵抗することは不可能だった。


 ノルマンディーの海岸に上陸した連合軍はただちに周辺を占領。空軍の支援のもと、占領地を広げていく。7月の終わりまでに、フランス北西部のノルマンディー地方とブルターニュ半島を占領する。

 8月25日、連合軍はパリを解放する。8月末までにはフランスとドイツの象徴的な国境、ライン川まで達する。9月にはブリュッセル、アントワープに突入。


 順調に進んでいた攻撃だが、9月17日にドイツの防衛体制が整ったことと、ガソリン不足で戦車が動かなくなったことで、連合軍は停止する。

 進軍は停止したものの、もはや連合軍の勝利は確実なものに見えた。連合軍は上は総司令部から下の一兵卒まで戦争は終わったも同然と思い、気が緩みきっていた。そこへ、ヒトラーの一撃が加えられた。


 12月、フランス北東部のアルデンヌの森から、ドイツ軍が大攻勢をかけてきた。連合軍の陣地を突破し、二日で50kmも前進したが、燃料不足のため次第に尻すぼみになる。

 結局翌年1月、ドイツ軍の攻勢は叩き潰される。ヒトラーはこの攻勢作戦に自信を持っており、この作戦で連合軍は攻撃力を失うと確信していた。そのため、残った兵力を東の対ソ戦線へ輸送する。

 ヒトラーが兵力を東へ移動させたため、アルデンヌの反抗後、西部戦線の抵抗力は失われた。


 3月、連合軍はライン川を渡る。4月、東から国境を越えたソ連軍と合流し、ベルリンを包囲した。敗北を悟ったヒトラーは自殺。デーニッツが国家元首の地位を継ぎ、停戦交渉が行われた。

 5月8日、公式に戦争は終結した。

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