表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/63

第六話、フワフワ浮く髪と小屋の掃除

「大丈夫? アスナ眠そうだけど」


 次の朝、ラウルは会うなり言った。


「そうね……昨日、あんまり眠れてない」

  昨日の夜、起こった

 一連の出来事を思い返して、息を吐く。


「ねぇ、アスナ。その、首の赤いのって」


「え? やっぱり痕になってる?」


「昨日の夜、誰か部屋に来たの?」


「あぁ、うん。そうそう、それで」


「……それって、誰かな?」


  ん?


 横を向くと、

 青髪がフワフワ浮き出していて。

 風が少しずつ集まりだしてる。


 こ、れ、は、風使いの……


「あ! あぁ、違う! 違うのラウル」


「何が違うの?」


 笑ってますが、

 明らかに怒ってますよねラウルさん。


「ねぇ、アスナ。昨日の夜、

 君の首にその痕をつけたのは誰?」


「ち、違います。

 決してキスマークじゃなくて、

 むしろ、蚊に刺された

 に近いです。はい」


「そうなの? 

 じゃあベッドに押し倒され

 腕掴まれて、首にキスされた

 とかじゃないんだね」


 いやもう、状況だけ考えたら、

 明らかにそれなんだけど。


「ほんと、違う。

 ラウルが心配するような事は

 何もない」


「じゃあ、行こう。次は

ペガサスの小屋の掃除だよ」


 風が収まっていく。

 青髪も。今は重力に従っている。

 あぁ、良かった。


「これがペガサスの小屋だよ」


  おおきな馬小屋で、

 屋根が変な形をしていた。


「空から戻る時、あそこから入るんだ」


 なるほどなぁ、と、眺めていると、

 どうする? とラウルが聞いてきた。


「ん? 何が?」


「授業の無い日、大抵、午前中は掃除。

 休日も毎日。ビーストテイナーの

 仕事のほとんどは

 魔獣の世話と掃除なんだ」


「うん、わかった」


「え? やるの?」


「もちろんやるよ。

 大事な仕事でしょ」


 仕事が華やかなでない事は、

 嫌ってほど知ってる。

 成果には10倍の事務処理がある。


 ビーストテイナーも、

 魔獣を操るだけじゃない、

 掃除や世話が大事で

 むしろそっちが主体。


「休日出勤どんとこい。

 定時で帰れるなら、疲れはゼロ!」


 そう、私は社畜だったのだ。


「すごい。ちょっと前まで、

 掃除サボってばかりだったのに」


「え? そうなの?」


「『わたくしにこんな臭い所で

 何をさせるつもりなのよ!』って」


 どんだけ高飛車だったんですか。


「じゃ、行こう。コレもって」

 ほうきと、おおきな、ちり取り。


 中に入ると、

 すでに数人の生徒が掃除を始めていて、

 大きな麦わら帽子かぶったココが、


「珍しいね、アスナ嬢」

 と、にっこり笑って言った。


「あ、ペガサス!」


 中には一体のペガサスがいて、

 真っ白で大きな羽根があった。


「カワイイ! フワフワ! モフモフ」


「外に出さないと掃除できないんだけど、

 出てくれないんだよね。

 今、ジルが挑戦してる」


「ペガサスは上級生の使い魔獣で、

 僕らの指示は聞いてくれないだ」


「ちょっと、ラウル、風臭いんだけどー」


「えー、ごめんて……」

 ココに言われて、

 ラウルがパタパタ両手を振る。


 とりあえず、ペガサスに近づかず、

 出来る所から床掃除を始める。


 コンクリートの床は、

 固くなった糞と

 汚れた藁が積み重なっていて、


 それを全部、リアカーに乗せて

 運び出す。


 けっこうな重労働だし、

 臭いし重いし、小屋も広い。


「だが問題ない。

 なによりみんな働いてるのが良い」


 社畜時代は、仕事しない上司、

 怒ってばかりの常務、

 ミスを報告しない同僚に

 士気を削がれていた。


 思えば私だけが異常な量の仕事してた。


 掃除もして、用紙の補充とか、

 備品を代えてたのは私だ。


 見えない仕事がどんどん出てくる。

 何なら同僚が仕事増やす。


 それが小屋の掃除はどうだ。


 同級生がみんな真面目に掃除してる。

 キレイになっていく場所が増える。

 あぁ、なんてすばらしい。


「その水受け、重いから僕が動かすよ。

 アスナはその下、掃除してー」


「アスナ嬢、このスコップ使ったら。

 軽いから良いよー」


 そして、みんな私に優しい。

 信じられない。嬉しい。


「なんで泣いてるの? アスナ」


 いやほんと、幸せだわ。


「おい、そこ、あぶねぇぞ! お嬢さま」


 へ?

 誰かに思いっきり引っ張られる。

 すぐ鼻先を、馬の後ろ脚が横切った。

 ダァン! と、でかい音がして、

 壁に脚が当たった。


 ヤバッ!

 いつのまにかペガサスに近寄りすぎて


「伏せろ! バカ!」


 ジルに頭を押され、体勢を崩す、

 真上を、真っ白な翼が振り抜いた。


 ペガサスが、怒ってる!


 思い出した。

 馬に後ろから近づいてはいけない。

 馬は後ろも見えるけど、

 視力は良くない。


 だから怖がって、

 後ろから近づく物は何でも蹴る。


 甲高い鳴き声がして、

 ペガサスが方向を変える。

 ブルンと、ひとつ息を吐いて、

 こっちに飛び掛かってきた


 ジルの舌打ちが聞こえる。


 振り下ろされる前足と、

 私をかばうように伸ばされる、

 黒の4枚の羽根が見えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「おい!こら、お嬢さま!」


「ご、ごめん、知らなくて」


「は? 知らないで済むと思ってんの?」


「あと、ありがとう」


「は?」


「助けてくれて、ありがとう。

 かばってくれて、嬉しかった」


 毎日更新!


 今日も皆様、

 お仕事お疲れ様!モフモフー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ