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第三十九話、下着と歌と混乱魔法

「どうする?やっぱりやめる?」

 ラウルが不安そうな顔をする。


「いや、やる。決めたの、逃げないって」

 言って、上着を脱ぐ。

 シャツ一枚になって、

 決意を決めた。


「じゃ、開けるよ、良いね」


「うん、お願い」


 ラウルが扉を開けた。


 とたん、水が飛んできて、

 全身に浴びた。


「あ……」


「あー、やっぱり」


 中からクスクス笑い声がする。


「ねぇ、アスナ」


「逃げない! やめない」


 叫んで、セイレーンの小屋の中に入った。


 セイレーンは人魚みたいな魔獣で、

 すっごい美人。

 鱗混じりの肌で、スタイルも良い。


 が、男好きで、女を嫌う。


 ブラシを掴んで中を進む。

 びしょ濡れの私を、

 セイレーンは笑う。


 クスクス、クスクス


 あぁ、もう

 ミスコンの水着審査で

 私だけ、スクール水着

 着てるみたい。


 居心地の悪さを覚えながら、

 掃除を続ける。


「大丈夫? アスナ」


「うん、大丈夫だから、ラウルは向こう掃除して、ラウルまで濡れちゃう」


 セイレーンはいっつも、

 私に水をかけてくる。


 でも今日は、上着脱いだし、

 透けない肌着着てきたし。


「でも、なんでこんなセイレーン多いのよ」


 小屋自体は大きくはない。

 石張りの、温泉みたいな、

 半分は水が張った住処。


 そこに15匹はいる。

 昼間は上級生が連れてく事もあるから、

 もっといる。


「セイレーンはねー人気があるのねー」

 ココが隣にきて言った。

「使いたがる上級生が多いの」


「可愛いから?」

 美人で、胸が大きくて、

 半裸状で。


 べ、別に負けて無いからね!

 今は!


「それもあるけど、男には使役しやすくて、従順なの」


 男好きだからね。

 なんか納得いかない。


「ハーピーも可愛いけど。

 懐きにくいの」


 あー、プラテッサ。

 口の悪いハーピーを思い出して納得する。


「この辺は僕やるよ。また濡れても嫌でしょ」


 お言葉に甘えて、セイレーンから離れる。

 掃除一つで、大騒動だ。


「おい」


「あ、ジル、どうしたの?」

 なんか、顔をしかめて、


「お前……なんで今日下着付けてねぇの?」


「な、な、なんでわかるの」

 反射的に胸を隠して。


「いや、いつも透けるブラ線がねぇから」


「いつも見てるの? 気にしてんの?」


「ち、ちげぇって、目立つんだよ、濡れると特に」


「だから外してきたんじゃん!

 透けると、は、恥ずかしいの」


「別にいいけどよ」


「それに、ブラ濡れると困るの!

 乾かないし、つけ続けられないの!」


「別にかまわねぇって。

……あと、背中になんかいる」


「へ?」


 カルアは、水、苦手だから、

 いないはずだけど。


 ジルが手を伸ばして、

 張り付いたシャツをひっぱった。


「ひゃあ!」


 それ! 気持ち悪い!


 ズルと何かが背中から落ちて、

 金色の光を放つ。


「え、コレ……」


 光は大きくなって、金色の犬が現れた。


「ニーナ?」


「ぷはっ……」


「服の中に居たが、濡れて息できなくなってたな」


「また小さくなって、服に隠れてたの?」


「ガウ!」


 ニーナが犬の姿でニコニコ笑う。

 

「お前の気を引きたいんだろ」


「まぁ、昼間なら、違反じゃな……いよね」

 ニーナの頭を撫でながら、聞くと。


「でも、今は、外に出しとけ。

 流水系は、新緑系を嫌う」


 流水? 新緑?

 属性は難しい。


「じゃ、ちょっと外にいてね、ニーナ」


「ガウガウ」

 イヤイヤ、と首をふる。

 多分、一緒にいたいのだろう。


「ダーメ。ほら、行くよ」


 ニーナを抱っこする。

 犬形態なら、まだ抱っこできる。


「ガウ……」

 ニーナが金色に光る。


「や! 小さくならないで!

 服に入ろうとしないで!」

 もぞもぞとシャツの中に

 潜り込んでくる。


 濡れてるから気持ち悪い!


「おい!」


「た、た、た、助けて! ジル! ひゃ!」


 ドタンと後ろに倒れて、

 ニーナが転がり出る。

 シャツが大きくめくれる。


「ぎゃ! い、い、今、見た?」


「見てない、見てない」


「じゃあ、なんでそんな顔してるの!」


「いや、ギリギリ、ギリギリ見えてない」


「何がギリギリなの! 何が見えて

 何がギリギリ見えなかったのー!」


「そ、それより、ニーナなんとかしろ」


「あー! 走り出さないで!

 ちょっと!」

 走り出したニーナを追いかける。


「おい! セイレーンには近づくなって!」


 セイレーンが悲鳴をあげて、

 ニーナを避けてく。


 1匹が嫌がって、

 両手を大きく振った。


 水が空中に渦巻いて、

 ニーナに飛んでいく。


「うわっ、ちょ!」


 セイレーンの流水魔法。

 いっつも私にぶっかけてる奴。


 なんとか追いついて、

 ニーナ抱き上げて、

 代わりに水をかぶる。


 別にもう濡れてるし。


「ガウ……」


「大丈夫、大丈夫」

 ニーナおろして、

 ぼたぼた水を垂らす。


 あぁ、もう、パンツまで

 びしょびしょだ。


「ガウガウ!」


 降ろしたニーナが吠える。


 え? 後ろ?


 振り返ると、

 すぐそこにセイレーンがいて。


 なんか怒っていらっしゃる?

 怒った顔で、口を開いて、


「×××××」


 聞き取れない音階を放つ。

 魔族の?

 いやちょっと違う、

 これは……歌だ。


「×××××……×××××……」


 歌……

 セイレーンの、混乱魔法!


 しまっ……た……


 歌声が頭を侵略して、

 すべての色を塗りつぶす。

 記憶がこぼれ落ちていく。


「アスナ!」


 頭の中、端から順番に

 パタパタと神経が閉じていく。


 ぐるりと視界が回った。

 私はその場に倒れて。


 世界がパタリとひっくり返った。



  ◇◇◇◇

  ◇◇◇◆

  ◇◇◆◆

  ◇◆◆◆

  ◆◆◆◆



「セイレーンの混乱魔法?

 またかかったのか?」


「怪我は無いし、すぐ起きる思うけど」


「おい、起きたぞ」


 目を開けると、

 何人かが私を見ていて、


「気が付いた? 大丈夫?」


 誰だっけ、思い出せない。


「大丈夫? 自分の名前、言える?」

 青髪が聞いてきて、

 考える。


 私の、名前? 


 そうだ、私は……私は、


「私は……ルシファルス」


「は?」


「え?」


「ん?」


 そうだ。それが、名前。

 私の、名前。


「ルシファルス」


 みんな騒いでいるけど。

 なんでだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「アスナ、あんな胸あったか?!」


「サイズは変わって無いはずだけどー」


「あんな、足長かったか!」 


「僕に聞かれてもー」


「じゃあ、なんでこんな恰好なんだよ、ちくしょう!」


「ジル、喜ぶか悲しむか、どっちかにして」


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

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