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第三十三話、氷と君と強制的使役

「やだねぇ、いっぱしのビーストテイナーみたいな顔しちゃって」


 氷狐が両手を振りながら、

 こっちを眺める。


「氷は本来、魔獣を殺す為にはない。正解だよ。すごく、やりずらい」


 私は真っ直ぐ、氷狐を睨む。

 ビーストテイナーは

 心と絆で戦う。

 気持ちで負けるな。

 気を強く持て!


「ガルルルル……」


 威嚇するニーナの首に触れ、

 軽くなでる。


「ニーナ、分かるね。

 遠慮しなくて良い。

 あれは人じゃない」


「ガウ」


「毒も魔法も存分に。

 私が良いというまで」


 息を吸い込む。


「全力を尽くせ!」


「ガウ!」


 ニーナが飛び出して、

 氷狐が氷で受け止める。

 氷か砕けて床に散らばる。


「犬ごときが、砕け散れ」


 狼の、特有の俊敏さで、

 すぐにまた飛びつく。


「×××××!」


「ニーナ、左」


「ガウ」


 床に氷が突き刺さる。

 氷狐が驚いて、私を見る。


「は? 聞き取れる? 魔族の音階だ、聞き取れたとして」


「一度聴いたら、忘れない」


 こっちは、

 新人には仕事内容すら説明されない

 ブラックではたらいてきたんだ、


「聞き取れない?

 意味が分からない?

 上等!」


 そんなの、

 社会にどれだけあると思ってる!


 見て覚えろ。

 自分で考えろ。

 言われる前にやれ。


 と、死ぬほど言われてきた。


 全然いい事じゃないけど。

 説明しろよ、とマジ思うけど。


「社会人なめんな。応用力が違う」


「ははっ、いいねぇ、良い顔だ、泣かせたい」


「ニーナ!」


「ガウ」


 ニーナが飛び出す。


 狭い部屋だ、ベッドも椅子もあって、

 動きづらい。


 そんな中で、大きな狼が向かってきたら、


 氷狐が氷の壁を出す。

 

 受け止めるしかない。


「ニーナ! 全力!」


「ガウ!」


 ニーナが、氷に体当たりする。

 バキバキと、氷にビビが入る。


 知ってる。

 氷の壁は、長く持たない。

 すぐ、壊れる!


 甲高い音で、壁が弾ける。

 氷狐を巻き込んで、ニーナが転がる。


「ん、だと、この」


 床から氷が付き出して、

 ニーナが悲鳴を上げた。

 転がったニーナに、

 氷柱が突き刺さる。


「ギャン!」


 動けなくなったニーナを見下ろして、

 氷狐ふらりとこっちをみる。


「やってくれる……だが、甘い」


「ううん、もう終わった」


 無表情の私に、

 は? と氷狐が答えた。


 そして、ゴフっ、と口を押えて、

 顔を歪めた。


「こ、れは……新緑系の、」


 苦しそうに、胸を押さえる。


「新緑系の毒! お前!」


「毒はニーナがいる限り、供給される。あんたが、倒れるまで!」


 私が叫ぶと、氷狐はギリと歯を食いしめて睨む。


「さぁ、ココを、返して!」


「あーあ。頭にくる、こんなのは久しぶりだ」


 頭を押さえて、私に向き直る。

 左手に、バキバキと氷の爪が生えてくる。


「その口、黙らせる!」


 氷狐が私に飛び掛かってくる。

 避けきれなくて、首を掴まれ、

 壁に押し付けられる。

 背中に激痛が走って、

 氷の爪が、痛いほど冷たい。


「まったく、やってくれる。可愛い顔して」


「まだ、だから……」


「は?」


「新緑系の毒は、」

 私はポケットから

 ライターを取り出し火をつける。


「お前、まさか!」


「良く燃える!」

 燃えるライターを

 氷狐の身体に押しつけた。


 一瞬で炎が大きくなって、

 氷の弾ける音がした。


「……ガウ?」


 動けないニーナの、小さな声が、

 静かになった、部屋にひびいた。


 私の手が震える。

 氷狐に掴まれて。


「あ、ぶなかった」


 ギリギリと締め上げられて、

 ライターが落ちる。


 氷に当たって、火が消える。


 氷狐に当たる前に、掴まれたのだ。


「正気とは思えないな。

 自分だって、だだじゃすまないでしょ、今の」


「ココを、返して」


 氷狐が私の手と胸倉をつかんで押す。

 背中が壁に当たって、痛みが走る。


「ぐっ!」


「あー、気分が悪い、最悪だ」


「うっ」


「ちょっと、この毒、止めさせてくれない?」


「嫌!」


「ふーん……×××××」


「いっ」


 ニーナの真上にいくつもの氷柱が出来て、

 それがニーナに突き刺さる。


「ギャウ! あー!あー!」


「や、やめて! ニーナはもう動けない」


「そう。じゃ、わかるよね。やめさせて。出来れば帰して。僕は君と2人になりたい」


 グイと、胸ぐらと腕を掴んだまま、冷たく言う。


「うっ……ニーナ、もういい」


「ガウ!」


「もういいの!もう帰って」


「ガウガウ!」


「言うこと聞いて!」


「……ガウ」


「あなたは、よくやった。ゆっくり休んで。大丈夫だから。」


 ニーナの体が金色に光って消える。

 傷ついて、小さくなると、しばらく出てこれない。


 氷狐から、毒が抜けていくのが視覚でもわかる。

 白いキツネの耳が、

 ゆっくり逆立っていく。


「……正直、ここまでやると思ってなかった」


 グイと、私の胸倉をきつく握る。


「うっ……」

 と、思わず声が漏れる。


「僕はね、君の嫌がる顔とか、痛がる顔とか、泣き顔とか、屈辱にまみれた顔とか、諦めた姿とか、全部、彼に見せたかったから、だから本当は嫌だったんだけど」


 ココの顔で、少しだけ笑う。

 真っ直ぐ私を見て、顔を近づける。


「寝首かかれても嫌だし、仕方ない」


 にっこり笑って、そして

 目を見開いた。


 私の身体がビクンと跳ね上がる。

 衝撃がビリビリと皮膚を伝う。

 こ、れは……

 視線が外れない、動けない、

 ドクンと心臓が跳ねて、

 不快感が背中をはい回る。


 これは……強制的使役……

 テイム!


 ダメだ!嫌だ!嫌だ!

 気をしっかり持て!

 心を強く!抗う!

 かからない、

 かかりたくない。


 頭の中が一斉にざわつく。

 必死に抵抗を繰り返す。


 氷狐がふいと顔を近づけて、耳元で呟いた。


「可愛いよ、アスナ」


 え?

……ココ?


 それは、たしかにココの声で


 それは、たしかに


 ココがにっこり笑う。いつもの、安心する目で、


 ゆっくりと、顔が近づいてきて、

 その口が、白い唇が、

 私の口に触れる。


 あぁ、私、今、

 キスされて……


 頭がしびれて、

 目の前がかすんでいく。


 あぁ、ココだ。

 ココが、ココが、


 ゾクッと体が震えた。

 気持ちいい……すごく、


「大好きだよ、アスナ」


 頭がボーとする。

 ココしかもう見えない。

「私も……好き」


「うん、堕ちたね」

 にっこり、ココが笑った。


 身体に力が入らない。

 すべてをゆだねる。

 全部あげる、全部。


 私の心はテイムに支配されて、

 すべての抵抗を失った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「だからキツネには懐くなと、あれほど」


 誰?


「これは、緊急回避措置で、仕方ない事ですからね」


──舌!?


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

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