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第二話、四枚羽根とキツネのしっぽ

 授業が終わって、

 グリフォンが帰っていく。


「モフモフが帰ってくー」

 あぁ、名残惜しい。


「手足をちゃんと洗うように!」

 先生が解散を宣言している。

 どうやら、授業は終わりのようだ。


「アスナ、すごい! 

 トップ合格だったよ」


「そう? ……ラウル!

 その傷! どうしたの?」


 ラウルの頬に、爪跡があった。


「あぁ、グリフォンに引っかかれて……

 かっこ悪いよね」

 悔しそうに視線を逸らす、

 青髪、幼馴染……可愛い。


「そんな事ないって!」


「え?」


「誰だって、最初は失敗するの。

 大事なのはやり続ける事。

 いつか必ず出来るんだから」


 そう、入社一年目は、

 私も失敗ばかりだった。


 電話とれなくて、

 取っても聞き取れなくて、


 メモも取らず、

 先輩に伝えもせず。


 叱られ、落ち込む私に

 先輩が言ってくれた。


──なぁ倉田。失敗しても良い

──やり続ければ、いつかできる、

──だから頑張れ!


 あぁ、私、倉田だったわ。

 今思えば、ブラックな会社を

 辞めさせない為の言葉だけど。


「アスナ、あの……ありがと」


「え? あぁ、うん」


 名前を呼ばれて、我に返る。

 そうだ私、今アスナだったわ。


「とりま、血は拭いてあげる。

 ちょっとこっち向いて。

 あの、恥ずかしがらないで

 そういうの今、良いから」


「なんか、アスナ。

 混乱魔法くらってから、

 雰囲気、違うっていうか」


「え? そ、そう?」


「昨日はグリフォンとか嫌って、

『私に触れるグリフォンは、

 お父様に言いつけて、

 縛り首にしてやる!』

 って言ってたのに」


「え? マジで?

 私、そんな傲慢キャラなの?」


「いや、僕は可愛いと……思ってますが」


「ちなみに、今は?

 私、どんなキャラ?」


「暴走?」


「グゥの音もでねぇ」


「いや、僕は良いと思う。

 アスナの違う一面、嬉しい。

 魔獣に優しくしてるの初めてだし。

 なんか……僕にも優しいし」


 いつもはどんな扱いしてたんだろう。


「僕の傷は、もう良いよ。

 手と足、洗いに行こう」


 ラウルは本当、良い子だねぇ、

 良い子で、顔も良くて、

 おまけに腰羽根──


「そうだ、腰羽根」


「ん?」


 手洗い場まで歩きながら、

 ラウルに聞く。


「羽根って、みんなあるの? 私には?」


「アスナにはないし、

 みんなじゃないよ。

 クラスだと、半分くらいかな」


「半分! 半分モフモフ!」


「さっきからその、モフモフって何?」


 あー……えっとね、

 どう答えるか悩んだ時だった。


「おい、コネ入学のお嬢さま」

 バサリと羽音が鳴った。


「お前がトップ合格とか、

 どんな汚い手を使ったんだ、

 お嬢さま」


 黒の羽根を羽ばたかせて、

 男子生徒がおりてくる。


 大きな羽根が、四枚もあった。


「ジル!」

 ラウルが反応する。


「やめてよ!  

 アスナは実力で受かったんだ」


「あぁ? ラットコアも触れない奴が

 グリフォン、手なずけた。

 不正を疑うのが自然だろ」


「それ以上言うと僕、怒るよ」


 なんか酷い事

 言われてるのはわかる。

 だけどそんな事、よりも……


 よりも、だ!


「四枚羽根!」


「ん? おい、アスナ嬢。

 お前、聞いてる?

 どこ見てる? 羽根?」


 ふわふわなの!

 四枚もあるの!

 これは、もう!


「触らせて!」


「は?」

 ラウルとジルが、同時に言った。


「四枚も! 真っ黒でフワフワ!

 素敵! すっごいいいい、

 素晴らしい! おっきい!」


「お前、大丈夫か? 頭とか打ったか」


「アスナは午前中に

 セイレーンの混乱魔法、

 かかったんだよ」


「あぁ、吹っ飛ばされたヤツか。

 セイレーンは、女嫌いだから」


 あれ、心配してくれてる?

 実は良いやつ的な?


「触りてぇの? 羽根」


「触りたい!」


 ふうん、とジルが少し考える。


「いいよ、触っても」


「ほんと?!」


「ただし、」

 と、ジルは私のすぐ前に立った。


「俺にも、お前を触らせろ」

 と、私の胸を突く。


「お前の胸とか」

 ちょっと、指先触れてるんですけど!


「下もな」

 指先が肌を押しながら、

 下に下に、下がる。

 ちょ、ヤバいんですけどー!


「いい加減にしろ、シルディット!」


 ラウルの叫びと同時、

 風が固まりで吹きぬけた。


 ジルが飛び上がって、羽が舞った。

 ラウルが、左手を突き出していた。


 ラウルの周りに風が渦巻いて、

 青い髪がフワフワと揺れている。


「え? なにそれ魔法?」


「あはははははははっ」

 四枚羽根で飛んだジルが、

 遠くに着地して、笑い声を上げていた。


「白羽根ごときが、風で俺に勝てると、

 思ってんのかよ」


 ジルが羽根を広げ、

 風を吸い込んでいく。


 広げると、ほんと大きい、

 ふわふわ。


「アスナを侮辱するなら、

 僕が許さないから」


「試してみろよ!

 拾われっ子の親無しが!」


 ボン、と音を立てて、

 空気がぶつかった時だった。


「はいはい、ストップー。

 ストップストップ」

 明るい、はずんだ声が、二人を止めた。


「ふたりとも落ち着いて」


 白い髪で、服も同じく白い、

 不思議な男子だ。


「これ以上、やると、

 みんな怖がっちゃうから

 もう、おしまい」


 にっこり笑って、二人を止める。


「でも!」

 と、食い下がるラウルに


「これ以上やるなら、

 僕も能力使うよー?」

 と、笑って言う。


「だからやめようね」

 と二人を諭す。


 笑うと、目が糸目になる、

 キツネ目の顔だ。


「ふん」


 ジルが不満そうに羽根をたたむ。


 四枚もあるのに、器用に服に納まる。


「なんで止めるんだよ、ココ」


「言ったろ? みんな、怖がってる」


 と、ココは周りを指す。

 あぁ、確かに。


 遠くにいるグリフォンや、

 ハーピーや、ワームとか。


 生き物たちが怯えて、

 こっちを見ている。


「風使いの能力は、

 彼らを殺す能力だから。

 ラウルも羽根閉じて、

 君は感情に左右されやすいから」


「でもココ! 

 ジルはアスナの胸を!」

 まだ声を荒げるラウルを、


「わかった、わかった。

 君がそれを許せないのは

 よーく分かるよ」


 ポンポンと叩いて、

 ココは話し続ける。


「でも、ラウル。早く手洗ってきて

 風臭くって苦しい、辛い。

 風は僕らに毒なの知ってるよね」


「おい、ラウル。命拾いしたな」

 ジルが遠くから言って、


「ジルは早く帰ってよ」

 とココに追い払われた。


「ラウルも早く。

 アスナ嬢は僕が見てるから」


 しぶしぶ、と言った様子で、

 ラウルは手洗い場に足を向ける。


「まったくねぇ……」

 と、ココは息を吐く、

 気のせいか吐く息も白かった。


「あの、止めてくれて、ありがとう」


「え? あ、いいよ。

 ごめんね、混乱魔法かかってる所」


「知ってるの?」


「キツネは、耳が良いから」


 あ、やっぱりキツネ種なんだ。


「ところで、僕には羽根は無いよ」


「え? 残念」


「代わりにしっぽがある」


「マジで!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「ん? なんで顔赤いの?」


「気持ち良いんだけど、

 敏感っていうか……」


「え?」


「なんか、おかしくなる」


「もしかして、感じるの?」


 毎日更新!


 今日も皆様、

 お仕事お疲れ様!モフモフー

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― 新着の感想 ―
ココさんの仲裁の仕方がとてもかっこよかったです!! もし他の人が同じ仲裁のセリフを言ってもココさん程圧倒されてしまいそうなオーラ出せなさそうです!! アスナちゃんのしっかり羽がないと教えられたときに落…
[良い点] やべー! 2話目からモフモフどころか乳触りきましたか!?  [気になる点] 獣貫とはもしかして”姦”のことですかʕ•ٹ•ʔ?
[良い点] モフモフLOVE感がすごく伝わる♪  暴走気味なのも少し可愛い  [気になる点] 触っていいよの当たり方いろんな意味でドキドキですね♪ [一言] おもしろいです!テンポ良く読めてます♪  …
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