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第一話、幼馴染とグリフォンモフモフ

 神様、私……

 生まれ変わったら、猫、飼いたい。


 死ぬ前、願ったのは、そんな事で。

 結婚もしないで、彼氏も居なくて。


 まさか、働きすぎて、死ぬなんて

 思ってなくて。


 お願い……

 次は、私、私を大事にするから、

 大事に、大事に……


 そのまま椅子から転がり落ちて、

 意識が終わった。


  ◇◇◇◇


 日差しを受けて、ゆっくり目を覚ます。

 ちゃんと眠ったのは久しぶりで、

 とても気持ちが良い。


 誰かの顔が目の前にあって、

 若くて素敵で……


 あぁ、

 イケメンの顔みて目を覚ますって、

 めっちゃ良い──。


「起きた?」


 うん、起きた。そして、


 知らない男の隣で寝てる。という、

 ヤバい状況だと、気づいた。


「なっ!」


 慌てて起きたもんだから、

 相手と、盛大にぶつかって、

 激痛が走った。


「痛っ! ちょ! アスナ、大丈夫?」


「ご、ごめん……いたい、って、え?」


 あすな? え?

 誰? てかどこ?


「もう、昼寝しすぎだよ、

 早く起きないと、先生に叱られるよ」


 目の前の彼は、

 青い髪で、変わった格好、

 まるでファンタジーみたい……


「ファンタジー……」


 初めて辺りを見回した。


「なんか、羽根の生えた

 おっきなトカゲが飛んでるんだけど」


「スカイドラゴンだよ、

 毎日飛んでるでしょ?」


「なんか、妖精みたいなのが歌ってる」


「ハーピーだよ。いつもその辺にいるよ」


「なんか足に巻き付いてくる、

 蛇みたいなのは?」


「ちょ! ワーム! 

 今、取るからね、足貸して!」


「ひゃ!」


 抱きかかえられて、

 優しく座らされて、

 足からワーム外してくれる。


 なにこの子、めっちゃ優しい!


「毒はないけど、怪我してない?

  なんで泣いてるの?」


「いや、他人に、男に……

 こんなに優しくされたの、初めてで」


 そ、そんな事、言ってる場合じゃない。

 つまりここはファンタジーの世界で。


 牧場みたいな広い草原に、

 柵と、学校みたいな建物。

 大きな木の根元で、

 どうやら寝ていたらしい。


「ねぇ、私の名前って?」


「え? アスナ・クラウジットだけど」


「ここは? どこ」


「セルディア魔獣学園。

 ビーストテイナーの養成学校。

 春から入学したでしょ」


 ビーストテイナー……


「ちなみに僕はラウル。君の幼馴染」


 魔獣を扱う職業……


「聞いてる?」


 モフモフし放題!


「もしかして、記憶が混乱してるの?

 あ、午前中、セイレーンに

 吹っ飛ばされた時、

 混乱魔法かかった?」


「そ、そう。混乱してるの」


「僕は君の恋人って、言えばよかった」


「え? 何?」


「アスナ、さっきからどこ見てるの?」


「あれ、あのふわふわした生き物は

 なんですか?

 羽の生えた、タカみたいなでっかい」


「グリフォンだよ。

 午後の授業で、手なずける試験が」


「触れるの?!」


「触れるかどうかが試験なの。

 もうすぐ昼休み終わるから、

 行ったほうが……」


「連れてって!」


「へ?」


「早く、ほら!」


 手を差し出すと、

 ラウルはなぜか嬉しそうな顔をして、

「いつもは、恥ずかしがるくせに」

 と、笑った。


 ん?


 私の手はグイと引っ張られ、

 「へ?」

 抱きかかえられた。


 んんんんんん?


 バサと羽根の音がして、

 ラウルの腰から真っ白な、

 大きな翼がのびた。


「しっかり捕まってね」


 私をお姫様抱っこしたまま、

 羽ばたいて、上空へと舞い上がる。


 マジで!

 てか、お姫様抱っこも、空飛ぶのも

 刺激強すぎーー!


 あー、私、今、ファンタジーの世界で、

 優しい男に抱っこされて、空飛んでる。


 ちょっと前には考えられなかったわ。

 死ぬのも考えれられなかったけど。


 暖かい胸板、すぐ近くの顔。

 なにより……


「羽根……ふわふわ、触りたい」


「ちょっと、アスナ、大丈夫?

 もう着いたよ、ほら。

 よくこうやって抱っこして飛んだよね。

 聞いてる?」


「こ、今度、羽根、触らせて、

 白くて、ふわふわァー」


「もう、しっかりして。授業始まるよ」


 着いたのは、小屋の前で、

 すでに生徒が集まっていた。

 高校生くらいだろうか。

 そういえば、ラウルも、若い。


 つまり、私も高校生って事かー

 あぁー、懐かしきキラキラした青春。


 1人、大人な男の人がやってきて、

 生徒たちの前に立った。


「あれはレオナルド先生。

 担任だけどすっごい厳しい」


「渋い顔の中年おじさま、良き!」


「ほんと大丈夫?」


「グリフォンは心を読む生き物である!」

 先生は良く通る渋い声で高説を始める。


「恐れには恐れを。疑心には疑心を持つ。

 なにより、相手に愛情をもって、

 接するように。

 グリフォンに触らせてもらうまでが

 試験である。

 達成できなかったものは追試が……」


「ねぇ、ラウル。

 あれ、あれが……グリフォン。

 いやー、ふわふわぁー」


「アスナ、先生の話ちゃんと聞いて」


「では、一学年、試験開始!」


 号令が鳴って、

 グリフォンがこっちに来る。

 目の前に鎮座する、ふわふわの魔獣。

 大きなタカみたいな、ふわふわの─


「ちょ! アスナ!」


「ふわふわー。モフモフーーー!

 かわいいね、かわいいね。

 君かわいいー、いやーふわふわするー、

 モフモフもふもふもふ………」


「あ、アスナすごいね」


「えへへへへ、ふわふわぁ、

 頭なでていいの?

 君いいこだねぇ、もふもふもふ………」


 これはすごい!

 しあわせ!めっちゃしあわせ!

 なんて素晴らしい!


 あぁー、良いー、良いー。

 ふーわーふーわー


「うむ。アスナ・クラウジット、合格」


 先生の声がして、無事、

 私は試験に合格したらしい。


 あぁ、神様。

 私、この世界でやっていけそうです。


 モフモフー……


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 第一話読了ありがとうございます。

(この説明文は第一話にしかありません)


 気に入りましたら、

 是非ブックマークをしてご覧ください。


 この作品は完結済みです。


 毎日頑張る皆様を

 少しでも癒せますように。


 なお、この作品には、

 毎回、次回予告があります。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『次回予告』


「触りてぇの? 羽根」


「触りたい!」


「いいよ、触っても」


「ほんと?!」


「ただし、俺にも、お前を触らせろ」


 次回もお楽しみに!


 今日も皆様、

 お仕事お疲れ様!モフモフー

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