8.神の小羊:AGNUS DEI
AGNUS DEI
Agnus Dei, qui tollis pecata mundi: dona eis requiem.
Agnus Dei, qui tollis pecata mundi: dona eis requiem.
Agnus Dei, qui tollis pecata mundi: dona eis requiem sempiternam.
アニュス・デイ
世界の罪を消し去る神の小羊よ、彼らに安息を与えてください。
世界の罪を消し去る神の小羊よ、彼らに安息を与えてください。
世界の罪を消し去る神の小羊よ、彼らに永遠の安息を与えてください。
アニュス・デイ(神の小羊)は、通常のミサでも歌われますし、アグネス~という女性によくある名前との関係もあって広く知られていると思います。これはヨハネ福音書の第1章第29節で、洗礼者ヨハネがイエスを見て、「見よ、世界の罪を消し去る神の小羊。私が『私のあとから来る人がある。その方は私に優る方である。私より先におられたからだ』と言ったのは、この方のことです」と言ったことに由来するものです。つまり『神の小羊』とは他ならぬイエスのことであり、世界の罪を消し去るという力強いイメージです。
さらに、その淵源をたどると旧約聖書のイザヤ書第53章第7節で「彼は痛めつけられた。彼は苦しんだが、口を開かない。屠り場に引かれて行く小羊のように」を踏まえたものであると思われます。つまり、ヨハネ福音書の編者はイエスの運命をほのめかすとともに、救い主を待望するイザヤ書の言葉を実現するのがイエスだと示すために洗礼者ヨハネに上記のように言わせたのでしょう。
通常のミサでは次のような歌詞になります。
Agnus Dei, qui tollis pecata mundi: miserere nobis.
Agnus Dei, qui tollis pecata mundi: miserere nobis.
Agnus Dei, qui tollis pecata mundi: dona nobis pacem.
アニュス・デイ
世界の罪を消し去る神の小羊よ、我らを憐れみたまえ。
世界の罪を消し去る神の小羊よ、我らを憐れみたまえ。
世界の罪を消し去る神の小羊よ、我らに平安を与えたまえ。
すなわち、通常のミサの自分たちへの神のご加護を祈る言葉がレクイエムの場合には、死者に安息を与えるよう祈る言葉に置き換わっているわけです。第二回バチカン公会議(1962-1965)による典礼の刷新後は、通常文に合わせられたようです。