表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

0.転生

ごつんと、頭の奥に響く音。

それが自分の頭から響いていると気付いた時には、もう両手両足の感覚がなくなっていた。

痛いなと思う間もなく意識が落ちていく。

どこかで誰かが叫ぶ声がしているけれど、何もできないまま私の瞼は暗闇に包まれ、そして私の生はそこで終わりを迎えた。






…………と、思ったのだが。

頬をたたかれる感覚にはっと目を開けると、目の前には見たことのないきれいな顔があった。

いや、嘘だ。見たことは、ある。


「ウィスタリア!あぁ良かった目が開いた!」


まだ少し高さのある声がわたしの名前を呼んだ。

…私の名前?

頭の片隅でそれは私の名前じゃないと考える私と、兄に心配をかけてはいけないと考える”わたし”がいる。

なぜか頭の中にある二人分の記憶。

それは、幼い「わたし」と大人である「私」の記憶だ。

わたしが何とか兄を心配させまいと「だいじょうぶ、です」と言葉を絞り出す。

小さなその声を聴いて、目の前のきれいな顔が泣きそうに歪んだ。


「ウィスタリア…!すぐに、すぐにお医者様が来るから…!」


医者、なぜ医者なのだろうと私は首を傾げた。

こんなイケメンな男の子(私からするとものすごく年下)を兄と呼ぶのも変な感覚だ。

違和感を感じながら、ふと頬を流れる何かに気付いて手で触れると、真っ赤な指先が視界に入った。

………血液?


「…にい、さま…」


わたしが、不安そうに兄を呼ぶ。

あぁそうか、これは私の頭から流れている血液なのか。

じゃああの頭の中で聞こえたごつんという音は、やっぱり頭をぶつけた音だったんだぁ。

そんなのんきなことを考えていると、また徐々に意識が遠のいてくる。

目の前で「わたし」の名前を呼ぶイケメンの顔をぼんやり見つめながら「私」は闇に抗うことなく意識を手放した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ