20 殺さないでね!
階段で8階に降りるとそこにはキルナさんがいた。
「キルナさん!?なんで」
「しっ!静かに。リリー、このままだとあなた殺されかねないわよ」
「何で?キルナさんは怒ってないの?誰に?」
「マロンによ。私はあなたがそういう人だって分かった上でずっと付いてきたし、あなたの想いはマロンちゃんにあるって知ってて告白したの。だからそんなに気にしてないわ」
メンタルお化けかな?
「でもマロンは違うの。最初にあなたがあの子に猛アタックしたせいで自分だけが特別って意思があるの。そんな中でマロンはあなたに好意を寄せた。で、そう考えると今の状況は非常にマズいでしょう?」
つまり、私に猛アタックしてきた好きな人が実は遊び人でしたってことか。うん、たしかにちょっと辛いかも
「マズいけど、殺すほどのことじゃないよ?」
「はぁ、まったく。あの子、独占欲強いでしょ?見てて分からなかった?」
あー、そういうところ鈍いって元の世界でもさんざん言われた気がする
「8階は食堂らしいの。さっきから板前さんとずっと話し込んでるよ」
「わー怖いなー」
「そんな、他人事みたく言わないで。あなたが死んだら私は—」
「可愛いなぁ、キルナさん。大丈夫、死なないから」
「なにか対策があるの?」
「ないよ」
「ダメじゃないの」
「そうかな?」
なんとなーく平気な気がするんだよねぇ
「ねぇ、キルナさん。聞き耳立ててみよっか」
いくらなんでもダメでしょうというお咎めの声を無視してキルナさんの手を握り、気付かれないようになるべく近くまで移動する。
ぎりぎり聞こえるかなってところまで接近して壁側に座り込む。
「......分かりました。その程度でしたら。もう一度聞きますが、殺したりなどはしませんよね?新しく女王に就任されたばかりの方が亡くなりますといろいろと面倒くさいので」
「大丈夫です。それは約束します」
以上の内容が私が聞き取れたこと。何をされるんだろう?板前ってことは夕飯になにか仕込まれるのかな?
今考えてもしょうがないし、今は挨拶をするためにここを出よう
「キルナさん、私行くけど、行く?」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、今一緒に出て行ったら更に機嫌悪くすると思うよ?」
「あぁ、確かに。んーじゃあ時差で出てから適当に話し合わせてくれる?」
「うん、分かった。」
「そうしたら出ていくのは私じゃなくてキルナさんが先の方がいいかな?」
「そうね、じゃ、行くわ」
「お願い」
そして出ていったキルナさん、しばらく様子見をしようかな
「こんにちは、お初にお目にかかります。キルナです。マロン、用事って終わったの?」
「初めまして。ここの板前をやっているものです。以後お見知りおきを。キルナ様」
「キルナ!ちょうど終わったところです!」
「随分とご機嫌だけど、なにかいいことあったの?」
「んー、まだ内緒にしていいですか」
「そう、もしかして用事と関係あるの?」
「そうですよー。これ以上はもう言えないですが」
「ま、すごく気になるって程ではないからいいけど」
これ以上情報を聞き出すのは無理そうかな?
私もそろそろ出るか
「マロンちゃん!キルナさん!やっと見つけた!どこ行ってたの、探したんだよ!あ、初めまして、リリーです!」
「初めまして、リリー様」
我ながらあっぱれな演技だと思う。板前は一言だけ挨拶を済ませると奥に下がった。
「別に探される筋合いはないと思うんですけど」
「こら、マロン!」
「ごめんなさい、キルナ!」
見せつけるようにキルナさんに抱き着くマロンちゃん。これはこれでいいかも、というかもっと見ていたい。
ほにゃっとした笑顔で見てたら二人にひっぱたかれました。なんでだろう?




