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【隠居生活編】最晩年迎えて旅立っても物語は続く

江戸から明治になったばかりの頃から、慶喜の46年にも及ぶ隠居生活が始まり、その明治の世が終わり明治から大正に年号が変わった頃まで、慶喜の隠居生活は続いた。


西南戦争から、日清、日露の戦いへと、世は移ろう。


そして、46年に及んだ隠居生活も、間もなく終わりを迎えようとしている頃の様子を、見てみるとするか。


明治の世が終わり大正という新たな年号になってから2年目。


慶喜は年老い、既に余命いくばくもなくベッドに横たわる。


あの激動の幕末を生きた者たちも、時の流れの中で1人死に、2人死に、生き残った者たちもやがて年老い、そして鬼籍(きせき)に入っていった。


「西郷隆盛も、大久保利通も、皆、私よりも先にあちらの世界に行ってしまった…。」


勝海舟も先立った。正室の美賀子も、やはり慶喜よりも先に、旅立った。

思い返すのはあの幕末の激動の日々、そして共に同じ時代を生きた人物たちのこと。


長い長い隠居生活を送っている間にも、世の中は移り変わっていた。


そして、日露戦争では、旅順攻略戦でロシア軍の機関銃に撃たれ、多くの若い兵たちが命を落とした。


戦争には勝ったが、犠牲は大きかった。


長く生きると、自分より若い者が先に死んでいってしまうこともある。


それを見届けながら、やはり自分だけが生き残っていく。


伊藤博文はハルビンで安重根(あんじゅうこん)に射殺されてしまった。


日本はそれを機に日韓併合を強行する。


これらの一連の事件も、今や新聞記事を読めば瞬時に知ることができる。


1903年に、ライト兄弟が本当に飛行機を発明して人類で最初にその飛行機を飛ばしたことや、

1910年には、ナイチンゲールが90歳まで長生きして、そして天寿を全うしたことなど、全て新聞記事で知ることができた。


ナイチンゲールは他人の病気やケガを治療するだけでなく、自らも健康には気をつかっていたから、だから90歳という長寿を全うできたのだろう。


1912年、辛亥(しんがい)革命が(しん)で起こり、これにより徳川幕府に続いて(しん)王朝もまた、その長い歴史に幕を下ろしたことになる。


そして、明治天皇も崩御し、その後を追うように、乃木希典(のぎまれすけ)大将が自刃(じじん)してしまうという衝撃的な事件もあった。


これが、『乃木坂(のぎざか)』という地名の由来につながったという説がある。


それがさらに後の時代のアイドルグループ、『乃木坂46』の命名につながっていくということまでは、さすがに想定はしていなかった。


そして…。


西暦1913年【大正2年】、徳川慶喜は周囲の人々に看取られながらこの世を去る。




その訃報は、新聞の記事でも大きく伝えられた。


山本権兵衛(やまもとごんのひょうえ)内閣が、ジーメンス事件によって総辞職したまさにその頃だった。


その後、肥前藩出身の大隈重信(おおくましげのぶ)が、再び内閣を結成した。


大隈重信(おおくましげのぶ)は、この年までよくがんばっているな。

山本権兵衛(やまもとごんのひょうえ)は、若い頃は負けず劣らずイケメンだったというが、ジーメンス事件で墓穴(ぼけつ)を掘ったな。」


それだけ見届けた後に、慶喜(よしのぶ)はこの世を去る。


そしてそれと同時に、松平時男(まつだいらときお)もまた、慶喜(よしのぶ)の体から幽体離脱(ゆうたいりだつ)するのだった。



慶喜(よしのぶ)の体から幽体離脱(ゆうたいりだつ)した松平時男(まつだいらときお)は、そこで先に幽体離脱(ゆうたいりだつ)していた、毛利富美親(もうりふみちか)と顔を合わせる。


ともにもはや肉体を失い、魂だけの状態となっていた。


時男「おお!毛利富美親!毛利富美親ではないか!」


富美親「松平時男か、やはりお前も死後はこちらの世界に来たのだな。」


時男「なあ、富美親よ、今度はどこの時代の、どの人物に転生しようかな。」


富美親「そうだな、それを考えておかないとな、お互いに。

できれば同じ人物よりも、今度はもっと違う時代の違う人物の方がいいかと思うのだがな…。」


時男「そうだな…。」




そして、ここから向かう先の時代は、どんな時代になるのだろう。


だいたいからして俺らのように、現代社会の流行とかに疎い、現代社会に適応していくのが困難な人間たちというのは、もしかしたら生まれてくる時代を間違えたんじゃないかと、時折そんなことを考えながら生きてきたような気がする。




そして、次にたどり着いた時代は…?


えっ!?もしかしてここは、明治初期の時代!?


しかもそこは徳川慶喜が今まさに蟄居(ちっきょ)している、その屋敷ではないか!


そして今まさに、松平時男の目の前にいる人物こそ、その徳川慶喜だ!


慶喜「はて?おぬし、どこかで見かけたかのう?

まあよい、毎日このように蟄居(ちっきょ)させられている身分、どこかにちょうどいい趣味の相手がいればと思ってな。」


こうして俺、松平時男は、江戸改め東京の情報屋となった佐吉やおみつとともに、

将軍を辞めて気ままに隠居生活を送る徳川慶喜とともに、趣味仲間(しゅみなかま)としての日々を送ることになったのだった。


時男「あのー、将軍様、いえ、元将軍様でしょうか、何とお呼びしたらよいかと…。」


慶喜「もう将軍じゃ無い。

気ままに『ケイキさん』とでも呼ぶがよい。

もはや主君と家来でもなく、気ままな趣味仲間としての関わりなのだからな。」



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