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また江戸市中にお忍びで…。カレーライスを振る舞う慶喜

慶喜は再び、一橋邸から小石川の水戸藩上屋敷に戻ってきていた。


「お帰りなさいませ!慶喜様!」


久々の帰還に、屋敷の者たちも大喜びだった。


「ところで、西洋からは様々な西洋料理のレシピが伝わっているらしいな。

西洋から伝わったものを、東洋の食材と組み合わせて、日本独自にアレンジして売り出すという試みも始まるそうだ。」


西洋から伝わったカレーと、日本の米を組み合わせれば、カレーライス。


「そうだ、江戸市中の者たちにも、このカレーライスを振る舞おう!」


それまで西洋の食べ物の情報は、江戸庶民には一切伝わってきていなかった。


慶喜が伝えるカレーライスは、なんのことはない、平成の時代にはごく一般的に食べられている、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、豚肉の入った、ごく普通のカレーライスだった。


他にも鶏肉やエビの入ったカレーや、牛肉の入ったカレーも。


いわゆる、ポークカレー、チキンカレー、ビーフカレーという、メジャーなところから伝えていこう。


どこにでもあるような普通のカレーでも、西洋料理を知らない江戸庶民にとっては、まさに初めて口にする、未知の味。


それに、カレーは独特のにおいがする。江戸庶民にとっては、これも今まで嗅いだことのない、未知のにおいだ。


「このカレーのにおいにつられて、江戸庶民たちが集まってくるぞ…。」


すると、どうしたことか、予想を上回る人数の江戸庶民たちが、長蛇の列をつくっていた。


おそらく物珍しさから集まってきたのだろう。


しかし、これは狙い通りといえる。いや予想以上の大反響、嬉しい誤算とでもいうべきか。


「さあさあ!西洋より伝わったカレーなるものを、日本古来より我々が食べている白米の上にかけて食べる、これがカレーライスという食べ物だ!」


本当は、カレーというのはインドが発祥の地であり、

それをインドに進出してきたイギリス人がヨーロッパに伝えて、

ヨーロッパの方ではスプーンで食べるようになったから、

西洋料理としても定着したという流れがある。


カレーライスは予想以上の大好評だった。


なるほど、これだから日本にも広まり、日本でも国民食となり、子供が好きなメニューの一つになっていったというのも、納得できる。


そして用意していたカレーライスは、あっという間になくなってしまった。


「まいったな、こんなにも早く完売してしまうとは、さてどうする…。

…そうだ!アレだ!今度はアレを出すことにしよう!」


するとさらに、慶喜はまた別の、カレーライスに似てはいるがカレーライスではない、という、ある食べ物を用意した。


「こんなこともあろうかと、こちらの食べ物も用意しておきました。

何だかわかりますか?これは、ハヤシライスというものです。」


しかし、よくよく考えてみると、普通のカレーだぞ。


それに、食べたことのないような初めてのものを、こんなにもおいしそうに食べるなんて…。


よく見ると、町人だけでなく、下級の侍や、浪人者なども、おいしそうにカレーライスを食べている。


たぶん、よほど腹をすかせていたのではないか。


ここであらためて、下級の武士たちはそれこそ、江戸の町人以下の生活環境に置かれているのではないかと感じた。


「下級の武士たちの気持ちになってみると、生活環境を変えてやりたいという気持ちも、わからなくもない。

大名家をはじめ上級の武士たちは、いかに恵まれていることか。」



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