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真っ黒な魔法使い  作者: 一之瀬 帆希
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小さい女の子の願い

今日も地球は丸い。

今日も私たちは日常を過ごす。

今日も私は生きている。


いつもとなんら変わらない。いつも通りの日々。

でも、もしそんな“いつも通り”を変えられると言われたらあなたはどうする?


この世界には私たちの願いを叶えてくれる偉大な魔法使いがいるんだって












今日の天気は晴れだ。清々しいほどの快晴なのだ。

人々は今日の自分の目的を果たすために動いているのだろう。

みんな毎日毎日動いて疲れないのかねぇ。

俺なら絶対に無理だ。あんなに毎日毎日動いていたら絶対いつか死んでしまうだろう。

今は朝。みんな仕事や学校に向かっているのだろう。だか、そんな人たちは俺をチラチラみながら通り過ぎていく。理由は簡単だ。それは俺がはたから見れば中学生ぐらいの子供に見えこんな朝の時間に制服でもなく、ましてや黒のパーカーに黒のパンツという真っ黒な姿で歩いているからだろう。まぁ唯一白いキャップをかぶってはいるがそれもさらに目立つのだろう。

さてさて、そろそろ学校はどうしたなどと言われるのは面倒なので移動しようか。

といってもあてはないのでぶらぶらするだけなのだが。今日はなにをしようか、そんなことを考えていると公園が見えて来た。するとその公園から小さな女の子らしき泣き声が聞こえてきた。俺は声のする方へ行ってみることにした。

そこにいたのは小学校低学年ぐらいの女の子だった。

「お嬢さんこんなとこで泣いてどしたの?」

「え?ちょ、え?無視??いやいや、無視はやめてよ俺ピュアだからさ、すっげぇ傷付くんだけどー」

なんと言う事だ。この女の子は俺を無視したのだ。さっきも言った通り俺はそれはそれはとてもピュアなんだ。無視なんかされたら小さい女の子相手だろうが泣いてしまうぞ!

俺があからさまに落ち込んでいると女の子は少ししてから

「ごめんなさい、、」

と弱弱しく言ってきた。

「あ、全然いいよ。」

俺は立ち直りの早い男なのだ。

「で、さっきも聞いたけどこんな時間にどうしてこんな所で泣いてるの?学校は?」

俺の質問に対して女の子は少し考える様子を見せたがまた目に涙を浮かべて見せた。今にもまた泣き出しそうだ。

ちょ、泣かないでねぇー。心の中で唱えてみる。

「あのね、、、ひなね、友達とケンカしちゃったの、、」

「君はひなちゃんっていうの??」

こくん

ほーほーなるへそなるへそだいたいわかったぞ。ひなちゃんの話をまとめるとこんなかんじだ。

まず、ひなちゃんは学校の友達とケンカしてしまったらしい。それがきっかけで友達からハブられ、学校に居場所がないようだ。親にも相談できず悩んでいたらしい。

「ひなちゃんの気持ちはよーくわかったぞ。でもな、学校には行くべきだと俺は思うよ?」

「やだ、、学校に行っても楽しくないもん。みんないじわるするんだもん。しかもお兄ちゃんだって学校言ってないじゃん」

おっとと、それを言われたらなんも言えんなぁー。

「あー、あれだよ。俺は特別なの!だから学校なんか行かなくてもいいの!おうけい??」

「それならひなだって今日から特別だもん!」

これはもうあれだな。最終手段だ。秘密兵器だ。

「よっし、わかったひなちゃん。じゃあなんでお兄ちゃんが特別なのかを教えてやろう。実はな

俺“魔法使い”なんだよ。」

「魔法使い??」

「おう、そうだ。ママから聞いたことないか?

この世界にはなんでも叶えてくれる魔法使いがいるって

それがこの俺ってわけ」

普通の大人たちなら俺のことを馬鹿にして終わるだろう。だがどうだろう。この小さい女の子はまだ世界の汚れを知らない真っ白なままだ。きっと俺の言ってることを信じてくれるだろう。信じてるよ!!

「ほんとに魔法使いなの??」

「おう!そうだよ!偉大な魔法使いだよ!だからこの偉大な魔法使いがひなちゃんに友達と仲直りできる勇気をあげるよ!」

「そんなのいらない!」

、、、え!?いまなんて言ったこの子!?!?いらないって言った!?!?!?

「え!?え!?な、なんで??だってひなちゃん友達と仲直りしたいんじゃないの??」

「確かに仲直りしたいの、でもね、きっとひなが謝ってもあの子たちは許してくれないわ。ひなわかるもん」

おう、これはやばいな、、えーじゃあ俺今回ただの役立たずになっちゃうじゃーん(泣

「だからね、お兄ちゃんには

“ケンカをなかったこと”

にしてほしいの」

え、まじ??なんやこの子は、、

「ひなちゃん、ほんとにそれでいいの??ケンカがなくなってもひなちゃんのなかからそのケンカの記憶は消えないんだよ。

それにね、人々はそういうぶつかり合いの中でお互いに成長していく生き物なんだ。ひなちゃんは今回のケンカから逃げたら絶対に成長できない、それに臆病になってしまって、本当の友達がなんなのかわからなくなってしまうよ。周りの人が怖くなってしまうよ。ほんとにいいの??」

ひなちゃんは少し考える様子を見せた。だか、

「ひなはいまが辛いんだもん!それにみんながひなに優しくなったらひなはみんなのこと怖くないもん!!」

どうやら俺の言葉は届かなかったらしい。んー悲しー!

だが、この子が望むなら仕方ないか。

「わかったよひなちゃん。君の願いを叶えてあげる。でも、願いを叶えるためには俺が言うものをちょうだいね?交換条件ってこと。おうけい??」

ひなちゃんは少し不安な顔色になった。お金がなんだと言われると思っているのだろう。俺だって鬼じゃない、こんな小さな子からお金なんて取らないさ。まぁ、大人だったら話は変わるけどね!

「んーどーしょっかなー、、あ、じゃあ、それちょーだい??」

俺はひなちゃんのランドセルについているくまのストラップを指さした。

ひなちゃんはかなり焦っていた。どうやら大切なもとらしい。でも、これが条件だ。

「どうしてもこれじゃなきゃダメ??ひなの好きな飴でもダメ??」

「んー飴は好きなんだけどねー、俺はこれがいいんだ」

ひなちゃんは少したってからしぶしぶ「大事にしてね」と俺にストラップを渡してくれた。

「ありがとう。よしっ!んじゃまぁちゃちゃっと願いを叶えるかー」

どっこらしょっと俺は立ち上がった。

「いくぞー!アン・ドゥ・トロア!」

パチンッ!俺は指パッチンしながら唱えた。

「さぁひなちゃん、君の願いは叶ったよ。学校に行っておいで。」

「ほんとに叶ったの??よくわかんないや。」

まぁまぁ、いけばわかるよ、とひなちゃんに説明した。

「魔法使いのお兄ちゃんありがとう!ひな行ってくる!」

いってらーといいながら手を振りひなちゃんの姿を見送った。

んーもう少ししてからほかの街にいくかなーよし、そーしよー。


俺はまだこの街をぶらぶらしていた。するとこの前ひなと言う女の子と出会った公園にたどり着いたのだ。するとなんとびっくりデジャブが起きたのだ。もう一度言おうデジャブだ。前回と違うのはいまが夕方ということぐらいだろう。

「お嬢さん、こんなところでどうしたの??」

俺が声をかけると女の子は勢いよく顔を上げ俺の顔を見ると泣き出したのだ。

「え!?まってまって泣かないで!え、俺なにかした??謝るから!謝るから泣き止んで!!お願い!!」

頼む泣き止んでくれ!このままじゃ俺が小学校の女の子を泣かした不審者だと思われてしまう!!

「お兄ちゃん、、ど、どうしょっ!ひな、ひなぁぁぁぁ!!」

あぁー!ダメだ!泣きながらだとなに言ってるのか全然わからん!!とりあえず泣き止むまで待つことにした。

すると案外早く泣き止んでくれた。

「ひなね、、お兄ちゃんにお願いしてからね、友達とも前みたいに仲良くなったの。でもね、ひなね、怖いの。またケンカしちゃうんじゃないかって、それが怖くてね、いままで通りに友達とおしゃべりできないの、、いまならお兄ちゃんの言ってたことがわかるよ、周りの人が怖くて怖くてしょうがないの、、お兄ちゃん、どーしよー、、」

うむうむ。やっぱり俺が思っていた通りなったってわけか。

「じゃあさ、ひなちゃんは後悔してるってことだよね?あの時素直に友達と仲直りすればよかったって」

こくん。ひなちゃんは頷いた。

「じゃあ、もしもの話をするね。ひなちゃんがこの前俺に会ったときに、その時とは違うお願いができたらなにをお願いする?」

ひなちゃんは涙をたくさんためた目で俺を真っ直ぐに見て、「友達と仲直りできる勇気がほしい」と言った。

よし!俺はその言葉を待ってたんだ!!

「おうけい!じゃあひなちゃんには特別にもう一度だけチャンスをあげるね。でも二回目だから願い事は俺が決めるね?一人二回はちょっとずるいからね。」

ひなちゃんはそれでもいい!と言ってくれた。

「じゃあ俺はひなちゃんを俺と前に会ったときまでもどしまーす!」

えぇ!?とひなちゃんは驚いた。いやーいい驚きっぷりだなー!

「俺は偉大な魔法使いだよ?できないことはないのさ!そうと決まれば早速交換条件だ!そうだねー、、あ、飴ちょーだい?」

前にひなちゃんが言っていた飴を条件に出した。ひなちゃんは「え、前みたいにストラップじゃなくていいの??」と少し戸惑っていたが俺が言ったんだからいいのだ。

ひなちゃんから飴をもらい準備万端!

「そんじゃ!アン・ドゥ・トロア!」

パチンッ!

さて、さっきまで夕方だったがいまはどうだろうか。いまは夕方ではない。俺とひなちゃんが初めて会ったとき、そう朝なのだ。

「ほんとに前に戻ったの??」

あれ?信じてないのかな?ちょいショックだー、、

「大丈夫、安心してちゃんと戻ってるよ。あ、そーだはい、これ。」

俺はひなちゃんに交換条件でもらったくまのストラップを渡した。ひなちゃんはどうして?と頭にはてなを浮かべている。

「だって、時間がもどったからね。俺がひなちゃんの一つ目のお願いを叶える前に戻ったってこと。だからこれはひなちゃんのってこと。おうけい?」

いまいちわかっていないらしい。まぁ、しょうがない。

「じゃあひなちゃん。いまから学校だ。いまはまだ友達とケンカしたままだからね。しっかり仲直りしてくるんだよ?大丈夫、ひなちゃんはいい子だからきっと上手くいくよ。この俺が言ってるんだから絶対大丈夫!」

俺が言い終わるとひなちゃんは眩しい笑顔で「うん!」と大きく答えてくれた。

「お兄ちゃんありがとう!ひな頑張るね!行ってきます!!」

走り出したひなちゃんにいってらっしゃいといい手を振った。きっとあの子は大丈夫だろう。今回はいい働きをしたと思う、我ながら。

さて、そろそろこの街をでてどっか行くかな。


俺は今日この街を出る。公園の近くを歩いていると小さい女の子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。とても仲が良さそうだ。その証拠にお揃いのストラップまでつけている。

俺は少し小腹がすいたので飴を食べることにした。あー、これいちご味じゃん。あんまっ!

糖分も取れたしそろそろ行くかー。次はどこの街に行こうかな。


今日も魔法使いは街を歩く。

読んでいただきありがとうございました!

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