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魔王をやめよう。-魔王令嬢冒険記録-  作者: A46
Chapter2. ほとんど着の身着のままなので、お買い物に行きました。
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魔王の素質その7 市井の物価感覚を身につける

 あっ……村に着いたみたいですね。


 先ほどの決意はどこへやら、さっきまでのお嬢様の画と台詞とが頭の中で無限ループして離れず、上の空のまま村まで来てしまいました。


「村に着きましたね、お嬢…ウーラニアー」

「その口調は変えないの?」

「今更変えられません、魔王城に来る前からこんな調子です」


 同級生やその取り巻きの下級生から敬語を強要されるのは、最初は屈辱でしたが次第にそんな感情も湧いてこなくなっていました。


 彼奴等、普段は碌に勉強しないくせに、言葉遣いだけはやたら厳しいんです。しかもちゃんと正しい敬語だからたちが悪い。

 まあ、社会的地位も成績評価も底辺のレベルでしたが、試験の成績だけは頂点だったわたしからすれば造作もないことです。


 ……ってあれ?試験の成績が頂点で宿題も全部こなしていたわたしの成績評価が底辺って、わたしこれ先生にもいじめられてません?


「市場ってどこにあるのかしら……」

「多くの村には中心部に広場があって、そこに市場が出る、というパターンが基本みたいです。それで、村の中心の広場には、たいてい遠くからでも目立つ背の高い塔が建っているので、それを目印にして広場を目指しましょう」


 わ、私としたことが、なかなかの早口でまくし立ててしまいました。

 どうやら先生にまでいじめられていたらしいということに無性に腹が立ってしまいまして……


「へえ、詳しいのね」

「学校で習ったことがあるだけですよ」

「私、教えてもらってないわ」


 そうそう、わたしはここ2, 3年くらい、お嬢様の家庭教師役も務めていました。


「すみません、魔王になるとしたら村なんて略奪対象くらいにしかならないんだろうなぁ、と思いまして、省いてしまったんです」

「……まあ、これから色々教えてもらうわね」

「いえいえ、わたしも教えられることはそんなに多くないので、一緒に学んだり、体験したりしたいですね」

「ええ、楽しみね。魔王なんてやってたら一生味わえないわ、こんな気分」


 それもそうですね、と相槌を打ちながら少し後ろに反って伸びをすると、ある店の看板が目に入りました。


「ウーラニアー、服屋さんがありますよ!その格好じゃ寒いわ人目を引くわですし、ちょっと見ていきませんか?」


 お嬢様は今なお肌より布の方が少ない服をお召しです。剣は通さずとも外気は通すので、冷え込む夜には結構寒いはず。


「服?まあ夜とか寒いものね。服って高いの?自分で買ったことないんだけど……」

「安いものから高級なものまで様々ですよ。わたしが魔王城で1時間働けば2,3枚買えるような普段着から、1ヶ月働いても手が届かないような高級なものまで、たくさんあります」


 まあ、冒険者の装備でいうなら脱・初期装備向け、一般人向けとして考えるなら中の下くらいのレベルの服までしか自分で買ったことはないんですけどね、わたしは。


 真っ当な職場で同じ仕事をした時の倍以上の給料が貰える魔王城勤務ですが、わたしの場合はまず貯金として半分ちょっと除けてから、残りの大半は本を買うのに費やしていました。食費や家賃はかからないので、毎月ギリギリ読みきれないくらい本が買える幸せな環境でしたね。

 それで、読みきれなかった本が1ヶ月分溜まったら服や足りない日用品を買い揃える、といったサイクルです。


 まあ、そうして集めたささやかな蔵書は今ごろただの燃えカスでしょうけどね!


「じゃあ、お金には余裕あるし、服も買うことにするわ」

「そうしましょうそうしましょう!かわいい服を選んであげますね!」

「あなたのそういう分かりやすい感情表現好きよ」


 今のわたしには、6年間に及ぶ反社会的組織での高給労働と最大で月収の8割を貯め込むハイペース貯蓄で得た、一般的な家政婦の平均年収約10年分のお金があります。お嬢様はもっと持ってます。


 節約は大事ですけど、初期投資はもっと大事だと思います。


 というより、よく考えたらこれだけのお金がありながら宿屋ぐらしをしない時点でだいぶ節約してるのでセーフです!


 これから毎月お嬢様を着せ替えして遊びましょう?

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