王都ナミハ3
王都ナミハは人口50万規模の大都市である。
交通の要衝のため商業も盛んで、道を行き交う人は人種も様々だ。近くにパンテオン教の総本山があるため、通過する巡礼者も多い。
「残念だったわね。ここの遺跡見てみたかったわ」
「大阪の施設は一番探索できる確率が低かったから妥当なとこね」
「仕方ないさ。建物壊して街中を掘り返すわけにはいかないからな。あとは福岡と長野の施設に期待しよう。気持ちを切り替えて、今日は街中で情報収集だ」
「タケル、あのお店に入らない? 情報収集にはうってつけのようだけど」
ヒミコが指差したのは大きな店で『冒険者ギルド 幾百の星霜亭』という看板が掲げられていた。
その店に入ると、美味そうな匂いが3人を包み込んだ。
中の案内には一階パブ、二階ギルド受付、三階宿屋と書いてあった。
匂いに後ろ髪を引かれながらも、昼食にはまだ早かったため、先に二階のギルドを見に行く事にした。食事は後からでも出来る。
二階はロビーになっており、木製の長椅子が並んでいた。壁には掲示板があり、部屋を中央で二分するようにカウンターがあった。内部の作りとして一番似ているのは銀行だろうか。いや、ここの業務から言えばハローワークか。なら掲示板に貼ってあるのは求人票か。
ロビーには数人の男たちが長椅子に座っていたが、冒険者というイメージとはかけ離れた者も中にはいた。
タケルたちが周囲を見回していると、カウンターの中の若い女性が手招きをしていた。
タケルたちは素直に呼ばれるままカウンターに行った。
ちょっと広めの5人くらい座って対峙できるカウンターの窓口で手招きしていた女性は、タケルたちに、どうぞどうぞ、と椅子を勧め座らせた。
自分も対面して座ると口を開いた。
「あんたたちその格好から見るに冒険者だね。ここは始めてかい? ハイエルフのいるパーティは珍しいねぇ。ここへは仕事探し? それとも仲間募集? どっちにしても登録が必要だよ。パーティの得意分野は? 戦闘? 護衛? 探索? 交渉ってことはないよね。さあさあ、こいつにパーティ登録しておくれ」
立て板に水でまくしたてられ、タケルはタジタジとなる。こういうグイグイくるタイプには弱いのだ。
「よくわからないの。冒険者ギルドについて教えてもらえる?」
アルラが口を出す。
ナイス、アルラ! タケルは心の中で喝采を送った。
女性は知らないことに驚いたようだったが、全員違う国の人種だと勝手に納得したようで、勝手に喋り始める。どうやら説明好きなようだ。
「オーケイ。じゃあ説明してあげるよ。冒険者ギルドってのは、二大ギルドのうちの一つさ。冒険者ギルドと商人ギルドは、他の職業ギルドとは規模が違う。この二大ギルドだけは国境に縛られないネットワークでつながっているのさ。といっても、カムイ、ウェルバサル、ツクシの3カ国だけどね。
冒険者ギルドと言っても、あんたらみたいに如何にもな冒険者だけが利用するわけじゃない。定職に就かずリスクのある仕事をする人間を『冒険者』という括りで呼んでるのさ。
だが、リスクと言っても冒険者ギルドは合法な仕事しか斡旋しないよ。その辺はクリーンだよ。違法な仕事はそれこそ盗賊ギルドにでも行ってもらうしかないね。
冒険者ギルドが斡旋するのは、低リスクな仕事なら、街の外での肉体労働や、街中での労働なんかだね。この辺の仕事を求めて普通の労働者も冒険者ギルドにはやってくるのさ。
冒険者のパーティ登録をすると、それよりもリスクのある仕事を請けれるようになる。
護衛や用心棒、モンスターや野獣の討伐、未開の地の探索、賞金首の山賊討伐とか、そういう仕事だね。
場合によっては貴族や軍にそのまま仕官することもあるよ。
特に今は戦争が起こってるから、傭兵の募集は常に出てるね」
タケルは疑問を口にする。
「冒険者と傭兵の違いってどこで分けてるんだ?」
「明確な違いはないね。パーティ登録の人数が一桁でクラスがバラバラなら冒険者、二桁いってて戦士中心なら傭兵団って感じかな。仕事的には冒険者の方が状況対応力に優れて何でも請けれるけど、単純に戦闘だけなら数の多い傭兵団有利って感じだね。ただ傭兵団の場合は少し平和になると仕事がなくなって、すぐに山賊や強盗団に看板を架け替えてしまう連中もいるから、あんまり信用はないね。この王都の近くの傭兵団の有名どころとしちゃあ、もうパンテオン警護のお抱えみたいになってるけど重装歩兵編成の神聖なる盾団とか、騎兵特化の旋風の旅団とか、あとは街の防衛によく雇われる銃兵編成の奈落の雷鳴隊とか。ここに根を張ってない冒険者や傭兵団は今はフジリバーかオワリに移動しているね。今はあっちの方が仕事が多いからね」
それで閑散としているのか。
いや、それよりも、いま聞いた傭兵団の名前のカッコ良さはなんだ? セイクリッドシールズにサイクロンブリゲイドにアビサルサンダーバタリオンだって? 厨二魂が揺さぶられるものがあるぞ。
ここはやはり、郷に入っては郷に従えという諺もあることだし、国になるまでは傭兵団の名前を厨二系の名前にしたほうがいいんじゃないか? 日本というのはシンプルすぎて耳目を集めない。それでは団員集めも苦労してしまうだろう。負けないようなカッコいい名前を考えなければ。
タケルが別方向で思いに耽っている間にも受付の女性の話は進む。
「そんなわけで、パーティ登録をしてくれないかね。助けると思って。仕事に対して冒険者が足りてないんだよ。急ぎの仕事が一件あるんだけど、出れそうなのが単独登録の1人だけなんだよ。特に今回のヤツはエルフがパーティにいてくれると、斡旋しやすいんだ。あんたたちなら色んな意味で信用できそうだから頼むよ。明日の朝出発すれば閉門までには帰ってこれる仕事だから」
ここから半日ほどのところにある、森の中の開拓村へ仕事に行った商人が戻らないらしい。帰りが遅くなってそのまま村に泊まる事はあったそうだが、一泊以上することはないそうだ。本来なら巡回兵や憲兵への依頼なのだが、昨今のゴタゴタで軍の手が足らずに対応に時間がかかるらしい。その時間次第で商人の命に関わるため商人ギルドから冒険者ギルドへ依頼が来たということだ。
本来帰ってくるのが一昨日、そして昨日帰ってこなかったためさっき依頼が来たところらしい。出せるパーティがいないところへ三人が顔を出したため、パーティ登録を頼んだと。
「どうせ数日はこの街にいる事になるでしょうから、人助けになるならいいんじゃない?」
アルラは横で語感を確かめるようにブツブツ言っているタケルに声をかける。
「……ダーク……インフェルノ……エターナルフォースブリザード……あ、ああ、いいんじゃないか。しようじゃないか、パーティ登録。だけど団とは違う名前をつけたほうがいいよな、うん」
「??? じゃあリーダーはタケルでいいわね。タケルってクラスは魔術師になるのよね。私は弓兵でいいわ。ヒミコは衛生兵ってなに? わかんないわよ。普通に剣士でいいじゃない。グレイヴはいないけどどうしよう。ま、戦士でいいか」
さらさらと記入を進めるヒミコとアルラ。
時間に追われたタケルは急いで思考をまとめる。
よし、決めた。日本に関連しそうで、ドラゴンもいるし、このぐらい外連味があってもいいだろう。
タケルはアルラたちが記入している登録用紙を覗き込んだ。
記載必要な事項は全て記入されていた。全て。
タケルはがっくりと肩を落とした。
パーティ名のところにはヒミコが既に書き込んでいた。
『ジャパン』と。
冒険者ギルドの仕組みや互助制度、紹介料やサポート体制の説明を受け、では明日の早朝に集合と決まったところでタケルが口を出した。なぜか説明の間、落ち込んでいるようだったが、ちゃんと聞いてはいたらしい。
「今すぐ出発しよう」
受付の女性は反対する。
「今すぐ出ると到着は夕方だよ。帰りを考えたら明日出発の方が安全だよ」
「さっきサポートの中に馬のレンタルもあったろ。馬を使えば今日中に帰れるんじゃないか?」
「それはいいけど、報酬が減るよ?」
「その商人に何かあったのなら、すでに遅すぎるくらいだ。急いだほうがいい」
「わかった。じゃあ馬の用意と、組んでもらうソロの冒険者を呼ぶから一時間くらい待ってておくれ」
「その間は下の店で腹ごしらえしとくよ」
タケルたちは一階に降りていった。
一階のパブはまだ昼前ということで客の入りはまばらだった。
旧日本文化と英語が交じり合っているため混乱するが、ここでのパブは日本での居酒屋のようなもののようだ。ハイランドのパブは学生御用達という側面もあったのだろうが本来の英国式パブだったのに比べると、ここのパブは日本人には馴染みのあるスタイルの店だ。アルラに確認したところ、エルフ文化圏でのパブはハイランドで入った店が一般的なようだから、人間の文化圏ではパブは日本式居酒屋スタイルなのだろう。
呼びに来た時に分かりやすいように入り口近くのテーブルに陣取り、料理を注文した。
「ヒミコ、グレイヴに誰でもいいから帰りが夜遅くになると伝言するように伝えて。あとスレイプニルをここへ呼んでおいてくれ」
「了解したわ。他は何かある?」
「目的地の上空監視を開始してくれ。あとは今のところはないな」
あとは腹ごしらえをして準備が整うのを待つだけだ。
「やっぱりここの名物はこれか」
お好み焼きとたこ焼きを食べながら、タケルは食文化が残っていてくれたことに感謝する。
粉モンはこの街のソウルフードらしい。外の世界に出てからというもの、無性に腹が減る。運動しているし、病院食に比べて豊富な味付けで、食事の楽しさが何倍にも広がったように感じているせいかもしれない。食べ物だけでも、各地を巡る楽しみが増えるというものだ。オワリでは街中を散策できなかったので、味噌カツやひつまぶしがあるのか探せなかったのが微妙に残念だった。
なので、ここでは名物はしっかり押えておきたかったのだ。
ただ、お好み焼きをおかずに白米を食べるという組み合わせは予想していなかった。
テーブルの上が炭水化物だけで満たされている。
何か別のものも頼めば良かったか?
食事を満喫していると、タケルに一人の男が近づいてきた。
なにやら鼻をヒクヒクさせている。
「にぃちゃん、いい匂いさせとるのぉ」
見ると190cmは超えているだろうガタイのいい三十路手前くらいの男が、人懐っこい笑顔で後ろに立っていた。
「ここ、ええか?」
男はそう言うと、答えも聞かずに同じテーブルの空いてる席に座った。
目を丸くしたタケルが『ゴハンのたかりかな?』と失礼な想像をして「食べますか?」と食べあぐねていた白米を差し出す。
男は笑顔のまま、椀を受け取ると「ありがとうな」とむしゃむしゃとかきこみ始めた。
男はお好み焼きをおかずにすることには抵抗が無いようで、合間にお好み焼きを食べながら、あっという間に椀を空にした。ものすごい早食いだ。あとから来たのにタケルたちより食べ終わるのが早い。
「馳走になったのう。ワシはサイファーっていうもんや。いい匂いがしたもんで、つい絡んでしもうた。すまんすまん。だがまあ、袖摺りあうも他生の縁と言うでな、どうじゃ、これから軽く一杯?」
男はクィッと酒を飲む仕草をして見せた。
恐るべきことに、この男、昼前から普通に酒に誘ってきた。
「いや、私たちはこれから仕事があるから……」
そろそろタケルは気付き始めていた。この街の人間は人見知りしない上にグイグイくるタイプが多いのだ。王都という政治的要衝、交易が盛んな土地柄、国境から離れた平和な場所、そんないろんな環境から、住む人の性格の傾向を考察するのは楽しそうだが、今はそれどころではない。
タケルはこのタイプの人間に弱いのだ。
「そうか! それは丁度良かった。にぃちゃん冒険者やろ。ならワシが手伝ってやろう! ああ、報酬なんか気にせんでいい。一宿はしとらんが一飯の礼や。しかもこんな別嬪さんたちとの仕事やろ。ワシに任しとき」
サイファーはタケルが抗議を述べようとするタイミングに全て言葉をかぶせて潰してしまっていた。
そこへ二階から受付の女性が降りてきた。
「準備が整いましたよ……あら?」
「おう! ねーちゃん、ワシは今日このにぃちゃんたちの仕事に手ぇ貸すで」
「サイファーさんだけですか?」
「ああ、ワシだけや」
「ならいいです。皆さんこちらへ」
ああ、これだから。結局会話をする暇なくなし崩し的に進んでしまった。だからあのタイプは苦手なんだ。コミュ障には荷が重い。しかも悪意がないと無碍にもしづらい。
諦めて、女性に従った。あの反応からすれば信用できる冒険者なのだろう。
「では紹介しますね。こちらが冒険者チームジャパンの皆さんです」
その名前は間違っていはいないが、チームをつけられると、これから行く危険を伴う探索行がまるでスポーツの試合をしにいくような錯覚に陥ってしまうから止めて欲しい。
「で、こっちがソロの魔術師のレティシアよ」
そこにはつば広のトンガリ帽子をかぶり、ローブを着た小柄な女性が身長よりも長い杖を手に立っていて、ペコリと頭を下げた。
タケルは思わず尋ねた。
「きみいくつ?」
「15才。問題ない」
可愛らしいか細い声が返ってきた。
まだ子供じゃないか。いや、そうか、中世の基準なら成人年齢が下がっているのか。それにしても、140cmくらいしかないこの少女に冒険が可能なのか?
受付の女性を見ると、お願いするように目で訴えてきている。
なるほど『色んな意味で信用できそう』と言うのはそういう意味か。
美人の女性が2人いるパーティなら、この子を組ませても問題は起きないだろうという事か。
たしかにこの子をむくつけき男だけのパーティに放り込むのは、冒険に出す以上に危険な事は理解できる。意思が通じたと思ったのか、女性は彼女を紹介し始めた。
「こう見えてもレティシアは魔術学院を飛び級で卒業資格を取得しているし、授業で戦闘魔術師のコースも修めている秀才よ。既に何回か仕事をこなしているし実力は折り紙つき。口数は少ないけどね」
なら、確認しておこう。自分と同じように、この押しの強い人達に流されてこの状況になっていないかを。
「レティシアはこの仕事に参加したいのかい?」
「お願い。やりたい。これが最後の仕事になるかもしれないから」
「わかった。なら一緒に行こう。よろしく」
結局馬は2頭借りた。サイファーは荷物を積んだ自前の馬を持っていたし、タケルはやってきたスレイプニルに乗ったからだ。レティシアはサイズ的に一人で馬に乗るのは無理そうなのでアルラと相乗りにした。そしてヒミコが単騎で馬に乗って4頭の馬は目的の村に向かって駆けている。
城門では冒険者ギルドが発行した夜間通行証を渡したところ、いきなり破られたので驚いたが、それが普通だったらしい。その通行証の半分を城門で保管し、帰って来た時に突き合せて本物であることを確認する方式なのだということだが、流石に知らないと拒否されたのかと思って慌ててしまった。
ところで、タケルは乗り心地が非常に悪い。背中に当たるゴツゴツしたもののせいだ。
ドラゴンとスレイプニルに乗るなんて考えてなかったな。鎧の形をした鱗が当たって痛い。
アルラとタンデムしてた時は最高だったのに。
なぜタケルとグレイヴが相乗りしているかという理由は消去法である。
タケルとヒミコしかグレイヴには触れられない。それは馬も同様である。そのためスレイプニルにしかグレイヴは乗れない。そして、普通の馬に乗る技術をタケルは持っていない。
そもそもグレイヴを呼んだ覚えはないのだが、スレイプニルが勝手に出て行くのを見て、伝言を果たしたグレイヴは「面白そうだ」という理由で勝手にスレイプニルに乗ってついて来たのだ。
グレイヴがいれば荒事になっても前衛は安心して任せられるので、役には立つのだが、このタンデムは背中が痛い。
既に森の中に入り、道程の最後の休憩中、言葉の少ないレティシアから話を聞くと、少し切ない気持ちになってしまった。
レティシアは3年前位から家が傾き、貧しくなってしまい、割のいい仕事として冒険者をやっているらしい。
父母は何とか娘だけは人並みの生活をと苦心したようだが、それがたたり、病に臥せりがちになってしまった。レティシアが飛び級してまで卒業資格を手にしたのは一刻も早く卒業して学費を安くあげるためという、非常に現実的な理由からだった。学院在籍中から、その魔術で冒険に出て学費と生活費を稼いでいたらしい。しかし、組んでもらっていた幾つかのパーティが全てオワリに移動してしまい、ここ最近は冒険に出れず、生活にも困窮する有様であった。
そんな中、レティシアに身売りの話が来たそうだ。破格の条件で、自分が身売りすれば、両親の面倒は見てもらえる上に、毎月お金を支給して貰えるらしい。
レティシアが苦労して学院を卒業したのは、その方が冒険にも将来にも役立つと思ったからだった。途中で金銭的に難しいからと止めてしまっては今までの投資が無駄になるだけでなく、普通の生活に戻るチャンスすら失うと考えていた。
そしてその考えは、想像していない方向で結実したのだ。
魔法に詳しい、頭の回る秀才で、15歳の女子、として破格の条件で身売りされるのだから。
レティシアは考えた末、その話を受ける事にした。
そのため、この冒険が、冒険者としての最後の仕事になるという事だった。
様々な思いがあるのだろうが「これで踏ん切りをつける事ができる」と少し陰がありながらも健気に笑った顔は印象的だった。
レティシアが花摘みに行っている間に、残った者では今聞いた話の感想を言い合う。
タケルは率直な心境が口をついて出る。
「15歳の女の子を売り買いするなんて、残酷な話だな。しかも両親の弱みにつけこんで。酷いヤツがいたもんだ」
「この場合、両親は人質でしょうね。普通の奴隷なら鎖で繋ぐけれど、魔術を修めた秀才じゃあ力で縛れないもの。逆らったり逃げたりすれば、両親がその責めを負わされるわけね。明言しなくても、レティシアならその程度は頭が回るでしょうからね」
アルラの言葉にサイファーが返す。
「だがまぁ、良心的といやぁ良心的だな。武器一つの値段よりも安値で売り買いされる子供もおるで。そいつらから見れば天国のような条件だ」
「こんな事が早くなくなるように、タケルはこの国を正さなくっちゃね」
「ああ、頑張るよ」
ヒミコにいつものように答えたタケルだったが、ここにサイファーがいるのを忘れていた。
「おお! 世直しか! いい目標だのぅ。最近そんな理想を語る漢はついぞみとらん。やっぱり面白いにぃちゃんだな」
そうだった。図体はデカイくせに、気配がないし、溶け込むのが早すぎなんだよ。
「違うぞデカイの。タケルの目標はもっと大きいのだ。我が傭兵団の目標は打倒ミーム帝国よ。そしてその土地を領土に国興しよ。世を直すのではない。世を作るのだ」
そしてここにも途中参加のために空気読めてない身内が一人、いや一匹いた。
ヤメテ。そんな身内の話をベラベラ喋らないで。機密がどうこうとか言う前に、恥ずかしさで死んじゃうから。言った本人が。まさか装甲車の中で夜のテンションで語り合った内容を一部とはいえ暴露されるとは思わなかった。嘘じゃないし思ってもいるけど、晒すのはやーめーてー。
レティシアが戻ってきたので、タケルはこれ以上暴露される前に切り上げた。
「さあ、出発しよう。もう少しで目的の村だ」




