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<吸血猫再びⅡ>

これからはしばらく穴が開きますね。

 ザッザッ……――。

 エルナード、ユウカの2人が足を踏み入れたのは、ホームタウン・シュルトの町からエルエスを越え、さらに西に行ったところに位置する、ミルの森。サラサラと流れる川の岸に沿って、シェアキャットの痕跡を探してただひたすら歩いていた。

 まだ時刻が早い所為か、あたりは清清しいほどに落ち着いていた。川の流れる音、木々の揺さぶれる音、小鳥の朝のさえずり。その全ての音が、心を和ませてくれた。

 しかし、それでもいまは討伐依頼の遂行中、あまり気を抜く事はできない。……とは分かっていても、どうしても、やはり、なぜか、和みきってしまう。

「あぁ~、空気がうまいなぁ……」

エルナードもとてとてと足を進める。

「そうねエル。朝も早いからね、清清しい気分になるわ。でも、なかなか見つからないわね。一体どの辺りにいるのかしら? まったく困ったわね~」

ユウカも口をあけてぼやく。

「まったくだな。でもさ、ホントなんだってユウカはついてきたんだ?」

「なによ、ついてきてほしくなかったの?」

ユウカが鋭い視線をエルナードへと向ける。

「いや、そういうわけではないけどさ、腕が鈍ったオレと、しばらく戦闘には出てなくて明らかに鈍ってるお前との組み合わせって、セットにする意味無いんじゃないかな?」

「…………」

ユウカはピタッと足を止め、俯いた。

「ユ、ユウカさん?」

「……無意味じゃないわ。私が絶対にエルを守るの! 義理でもお姉ちゃんだもん。もう2度と、あんな思いはしたくないもん……」

涙を流しながら、ユウカは言った。

「……悪かったよ。一緒に行こう。それにしても、最近よく泣くね、お義姉ちゃん」

「うるさいわよ、義弟くん……」


――丁度いいところに橋を見つけ、2人は川の上を渡った。以前来たときは、この橋を渡って森の奥地へと入っていった。そして、最深部の岩山洞窟で雌であるレス・シェアキャットを発見し、討伐した。

 その時は道の途中で手掛かりとなるものを見つけて向かったのだが、今回はそれが無い。どこを歩いても、何の痕跡もない。

 これでは絨毯から1本の毛髪を探し当てるに等しく、この広大なミルの森から、ワンセットのシェアキャットを見つけ出すのは至難の業だ。

 この状況にはエルナードもユウカも大いに困った。ただ歩くだけでは、体力をひたすら消耗するだけだった。

「エル、こういうときはどうするの? ぜんぜん見つからないよ?」

「そうだなー。風でも吹けば、それに便乗してソナーみたいな感じでいけるんだけどな~」

 ふと、そんなことを言ったとき、風が吹いた。意外とその勢いは強く、森中に行き渡っていそうだ。

「……風、吹いたね」

「……ああ、吹いたな」

 木々はユラユラと揺れ、茶色く染まった枯れ葉がひらひらと落ちてきた。

「わかりました? シェアキャットの位置」

「わかっちゃいましたよ。シェアキャットの位置」

 エルナードのスキル《エアディテクト》。風を読み、流れを感じ、そして、場の状況を把握するスキル。基本は素材収集家なんかの類が習得しているスキルであり、エルナードが使えるのはたまたまだ。

 さて、感知した敵の位置は思っていた以上に近いものだった。現在地から歩いておよそ3分の距離。

 枯れ葉の上をサクサクと進み、とうとう巣に使われている洞窟にたどり着く。

「――さてユウカ、こっからは命懸けになるが、覚悟はできたか?」

「もちろん。ギルドを出たときからできてるつもりよ」

「……それでこそギルドマスターだ」

 エルナードの一歩から、戦いの場に足を踏み入れた。

 薄暗い石の床の上、エルナードは左手に聖剣シルバークロスを取り、ユウカは腰のホルダーから回転式銃ボルトラインを取り出した。

 それと同時に、火薬の臭いに反応したのか、闇の奥深くから瞳を光らせて、オスのロス・シェアキャットが現れた。

 エルナードとユウカはお互いの顔を見合わせ頷くと、別れて走り出した。

 まず何よりも早く、ユウカのボルトラインが火を放つ。一歩と同時にハンマーを起こし、そして引き金を引いた。連続で6発、シリンダーに備えられた全弾を撃ち出した。

 しかしそこでは終わらず、ユウカは走りながら石の壁に手を付くと、その一部を弾丸大に生成し、シリンダーに入れる。

 ユウカのオリジナルスキル《ダートメイキング》だ。これも基本的には素材収集家なんかの類が習得するようなスキルだが、ユウカが覚えていたのはたまたまではない。幼い頃練習しているのを見た。

 このスキルはとても希少かつ難であり、自然物から小物を生成する、古代で言う錬金術のようなものだ。ユウカの場合は自然物から銃弾を作り出し、活用する。

 エルナードも負けていられない。

 ロス・シェアキャットが銃弾を受け、そこからの反撃に出るより前に、素早く回りこんで刃を立てる。体長が大人の半分ほどのシェアキャットの後ろを取るのは容易く、そこへの攻撃もすんなりととおった――。

 その後、攻撃を続けた結果として、ものの数分で戦闘は終わりを告げる。



 明るく保たれる青い空、時刻としては午後7時。

 戦闘も終え、エルナードとユウカの2人は葉の落ちる道を、ゆっくりと歩いていた。シェアキャット夫婦の死肉もすでに魔道転送網(テレポータ)にてギルドに転送済み。体力も休憩を取って回復済み。

「久しぶりに運動して、どうだったよ?」

エルナードが訊く。

「そうね、ちょっと疲れたかな。ずっと業務と心配ばっかで体力落ちたかも。狙いの精度も落ちてたしさ」

 ユウカはああ言っているが、実際狙いはほとんど外れていない。ユウカは一体何を目指しているのだろうか。

「まぁとにかく、オレはちょっと左だと戦いにくいから、特訓しないとだな」

「そんなこと言って、ぜんぜん斬れてたじゃないのよ」

ユウカがぶーぶー言っている。

「まぁ、これから大変だからな」

「故郷に、行くんだよね。帰ってくるよね」

「……もちろん」

 クラリスに照らされた帰路は、肌寒いものだった。

今回はちょっと書き始めて日が開いたので、後半ぐちゃぐちゃです;

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