<家族のもとへⅢ>
Ⅲというのは、前編でⅠ・Ⅱをやっていました。
話は変りますが一応つながりのある話なので(思いつかなかったとはいえない
どこまでも晴れ渡る空。雲ひとつない蒼の色彩の上を、黒白様々な鳥が行きかっていた。
1週間ぶりに耳にする開門の音は実に騒々しく、それでいて心地のよいものだった。
エルナードたちギルド《自由の悪魔》メンバーのホームタウンであるシュルトの町は、外観内観ともに特に変化は見受けられず、依然として穏やかなものだった。
「ニーナ、ココがこれから住む町だ。住んでる人もいい人ばかりだし、いいところだよ」
「そう……」
帰路の間、あまり口を開く事のなかったニーナだが、ココへきてはじめて言葉を発した。それとともに、ニーナの少し表情が和らいだ気がしてエルナードも口元を緩めた。
そして、その様子が面白いものでないのがうしろで歩くリノである。
武器屋レーベルスの角を右に曲がり、そこから突き当たりの空き家を今度は左に曲がる。
「さぁ、ここだ」
石レンガ造りの塀に、木製の中世的な建物。門の前に置かれた石造が侵入者を拒むかのようにプレッシャーを与えている。
ごく普通の両開きドアと同じ名ばかりの正門を開けて、ギルドマスターに帰還を告げる。
「ユウカ! いま帰ったぞ!」
その声を聞いて、ユウカが来るより早く他のギルドメンバー、総勢20名がエルナードに視線を向けた。
しかし、それはいつも通りのものというわけにはどうしても行かないようで、なかには座っている椅子から勢いよく立ち上がるものもいた。ギルドに残り、エルナードたちの帰還を待っていた元ギルド《赤い森》のユーリスがそのうちの1人だ。
「――おい、エルナードてめぇ、その腕どうしやがった!」
席を立って向かってくるなり、胸倉をつかんでくる。
「いやぁさ、ちょっと四天王の1人に持っていかれちまってさ、はは……」
「なに笑ってやがんだ! てめそんなんじゃ戦えねぇだろ! それにセンスたちは、あいつらはどうした? まさか、死んだとか言うんじゃねえだろうな……」
ユーリスの顔色が悪くなった。
「いや、あいつらは大丈夫だ。センスもダメージは大きかったけどもう大丈夫。あいつらはそのまま次の道に進んでったよ」
「そうか、よかった。でもお前、本当にこれからどうするんだ?」
「残されたこの左腕で戦うさ。しばらくはリノに面倒見てもらうつもりだ。でも、必ず復帰してみせる。ニーナの記憶のためにも」
エルナードはニーナに向かって微笑んだ。それに返すように、ニーナはそっぽを向く。
「そういえば、誰、その子?」
「ああ、そうだった。この子はニーナ=アルノエアル。僕の家族みたいなもんだよ」
エルナードは横からニーナに叩かれるが気にしない。
「そう……か。まぁいいか。ああそう、マスターだったら、部屋にいるぞ。なんかしばらく引きこもってる」
「そ、そうか。ありがとう、な」
ユーリスはなにやら仕事があるらしく、とりあえずはココで別れた。
ロビーから廊下に移り、ユウカの部屋を目指す。
「ユウカ、入るぞ?」
コン、コンと乾いた音を立て、エルナードは扉を開けた。
「げっ……」
扉を開けた先にユウカがいることにはいたのだが、しかし多少問題があった。
「――イ、イ、イヤアアアァァァァ!!!」
「ぶへぇっ!」
視界に映ったのは、グレーの下着姿だった。帰還早々くらったグーパンチは、勝利と敗北の味がした。
「なによまだいいって言ってないじゃない!」
「……い、いや、てっきりまた心配しすぎて引きこもってんのかと思ってだな……」
「――おかげさまでずっと引きこもってたわよ! 一体どれだけ心配したと、思って、る、のよ……」
「ユウカ?」
急にユウカが黙り込んだ。エルナードは何が起きたのかとユウカの顔を覗き込む。
すると驚くことに、いや、いつも通りではあるのだが、目の下が真っ赤に染まっていた。何度見ても驚きは隠せない。おそらく散々泣きじゃくった結果なのだろうが、さすがにひいてしまう。
「……。……」
ユウカが何か言おうと口をパクパクしている。
「ど、どうした?」
今度はユウカの両目から大粒の涙がこぼれ出した。
「……エ、エルの、腕、そんな、なんで……なにがあったの……? っ! しかも、アイ、リス……?」
目の前の現実に、ユウカは早速混乱しだしていた。
「ああ、まぁそうなるよな。とにかく、オレが言えた事じゃないが、今は服を着てくれないか。うしろからの視線が痛いからさ……」
エルナードの背後からは、リノとニーナからの凄まじいほどに殺気のこもった視線が送られていた。体をじりじりと削られて骨だけにされてしまいそうだ。
「……てなわけでさ、オレ、アルフレット城でやられちまって。そこで、ニーナを助け出したんだ。……んで、そこまではよかったんだけど、この後どうしようかと思ってさ。とりあえず報告に帰ってきた。といってもまぁ、あの依頼はなかったもんだったんだけどな」
エルナードはとりあえず服を着たユウカに、これまでの事を説明していた。なのに、その話しの合間中ずっとユウカは涙をだらだらと流していた。
ニーナのことはなんとなく納得してくれたみたいだが、やはりエルナードの腕については納得してくれそうにない。
エルナードは心の中で、腕をどうにかする秘法かなにかをを探さないとユウカがどうにかなっちゃうかされちゃうな、と思っていた。
この日は結局、エルナードはリノ、ニーナ、更にはなぜかユウカとともに夜を明かすこととなった。今度については、結局のところ決まっていない。
次回は何をm書こうか;