表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

<赤い瞳の少女Ⅱ>

終わり方がさっそく微妙になってしまいました。

「アイリスじゃ……ない……?」

 エルナードの目の前にいる少女は鋭い目付きで確かにいった。『私はアイリスじゃない』と。

 それならば、洞窟で聞いた声は彼女のものだったのか、それとも別の誰かだったのか、あるいは本当にアイリスだったのか。それを知る術はないのだが。

 しかし、ニーナという少女は、どこから見てもアイリスと瓜二つなのだ。

 唯一違うことといえば、その瞳の色だけだった。すんだ黒をしたものとは打って変わって、燃えるような赤い色をしているのだ。しかし、それ以外、見た限り差はない。

 あと変わっていそうなのは性格やらの内面的なものくらいだが、まだ目を覚ましたばかりで、まったく分からない。

「わかった。じゃ、とりあえずいまはゆっくりしててくれ。まだ、体が本調子じゃないだろ?」

エルナードはそっと微笑む。

「――わからない」

「えっ?」

「どうして私がここにいるのか、いままで何をしていたのか、いままで何を思ってきたのか。考えたけど、わからなかった」

 エルナードだけではない。他の人間も、そろえて口を広げて、言葉につまった。「まさか、記憶が……ないのか?」

 ニーナがコクりと頷く。

 皆現実が信じられなかった。エルナードは大切な家族に、センスたちは真実へたどり着くヒントに、スルリと離れられてしまったのだ。

「そんな……こんなことって」

 皆俯き沈黙する。

 そしてすぐ、それをエルナードは打ち破った。

 ドンッという松葉杖の音が響き、エルナードにすべての視線が集まる。

「オレは諦めないからな。絶対に諦めない! 記憶がないなら取り戻せばいい、作ればいい!」

 エルナードはニーナの手をとる。

「ニーナ、オレが絶対にお前の記憶を取り戻す! だから約束してくれ。お前の記憶が戻ったときは、全部話してくれるって」

 エルナードがすべてを言いきり、ニーナは口を開けておおいに驚いていた。そして、涙も流れた。

 ニーナはその涙を空いている手で拭うと、それを不思議そうな顔で眺めて、口を開いた。

「なんで、そんなに私のために頑張るの? どうして……」

ニーナはエルナードの手を払う。

「――家族だからだよ。どうしてって言われても、そう答えるしかない」

エルナードはそっと微笑んだ。

「私はあなたの言っている人じゃないわよ?」

「それでも、あのとき声が聞こえたという事実だけは変わらない。オレのなかで君は、あのときからもう家族なんだ」

 ニーナの表情が変わった。そして、自らエルナードの手をとり、頭の上にのせる。

「勝手にしなさい。私は好きなようにやるから」

(性格は案外似たようなもんなんだな)

エルナードは苦笑した。

「――さて、話も大体まとまったところで、今後について話すとしようか?」

紺色の髪をはらって、ベッドにて横たわるセンスが話を切り出した。

「そうね。そうしましょう」

後ろで髪を束ねながら、ユマが返す。

 エルナード松葉杖を置くと、はニーナのベッドに座った、

「今後のはなしかぁ。オレはいま言ったとおり、ニーナの記憶を取り戻すためにあちこちいくつもりだけど、センスたちはどうするつもりなんだ?」

 センスは考えた。しかし、なにも答えようとはしない。

「まぁとりあえず、1回ギルドに帰らないといけないんだし、この話はその時でも――」

「――いや、」

いきなりセンスが口を開いた。

「エルナード、僕らはギルドには戻らないよ。このまま、別の仕事にいく。ユウカさんには、そう言っといてくれ」

「は?」

エルナードはセンスのいきなりの言葉に戸惑った。そして、頭のなかでその意味を処理しようとすると、具体的な意図がつかめず、困惑した。

「なんでだ?」

挙げ句聞き返した。

 このエルナードの返しに、センスはひとつため息をつく。

「あのだね、エルナードだけでも重傷なのに、そのうえ僕がいたりしたら、ユウカさんがとんでもなく騒ぐとおもうんだ。この間エルナードが怪我をしたときだって、テーブルクロスまで作っちゃったろう? あまり迷惑をかけたくないんだ。重荷になるのも嫌だ。だから、僕らはしばらくギルドには戻らないよ」

 なるほど。と、エルナードはコクりと頷いた。センスの言っている事は当たりすぎているのだ。

 ということで、センスたちの行く先もなんとなく決まった。エルナードたちの行く先もとりあえずギルドだとして、最後に残る問題は、ニーナのことをどうするかだ。

 ギルドに連れて帰ったとして、部屋は空いていない。さすがのエルナードも、2人部屋にしかも男1人に対して女2人というのは気が引けた。

「どうしようか……」

 この問題が地味に難問なのだ。少しでも間違えればユウカが可笑しなアイディアを出しかねない。それこそ、『3人で住め』とか言い出しそうなものだ。

 エルナードはココに来て現れた思いもしない強敵に、苦笑するしかなかった。その様子にセンスたちも同じように口元を歪め、気持ちを共感した。

「とにかく、僕らは明日ココを出るから。しばらくお別れだ」

「あ、ああ。そうだな。またいつか、だな」

 そうして、なんとも言いがたい微妙な空気の中で、男達は約束を立てたのだった。


――道が別れていてもゴールは同じ。枝道がつながるその時まで、また、いつか――

非常に眠いです……;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ