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<赤い瞳の少女Ⅰ>

続きです。

リンクはあらすじに書いております。

――エル……エル……。起きて、エル……。

「……ん、うぅ……。どこだ、ここは?」

 目を覚ましたエルナードは、透き通る景色をその黒い瞳に収めた。

 果てのない白に吸い込まれそうになるのを感じながら、ただひたすらに両の瞳を擦った。しかし、どれだけ擦っても景色に変化が訪れる事はなく、目に映える無限の白が夢ではなく現実である事を教えている。

「オレ……もしかして死んだのか?」

 残された左手を眺め、自らに問いかける。だが、答えが返ってくるはずはない。

 しかし、1つだけ気掛かりな事があった。自分の事を呼んだ、懐かしく温かい声だ。その正体が分からないわけではない。しかし、確信があるわけでもないのだ。

「……オレを呼んだのは誰だ?」

 エルナードは尋ねた。目の前に対象はいないが、それでも、どこかにいる気がして声を掛けたのだ。

――しばらく待つと、ついに返答が返ってきた。

「私だよ、エルナード」

 うしろの方から聞こえた。

「――! アイ、リス……?」

 この時、エルナードの瞳にはしっかりとブロンドのロングヘアに黒い瞳の幼馴染アイリスが写っていた。しかし、それなのになぜか、エルナードはそれがアイリスであるとは思えなかったのだ。

 当の本人も、それから何も答える事はない――。


「――はっ……!」

 目を見開いた先、次に飛び込んできた景色はまたしても見覚えのないものだった。しかし今度ははっきりとしたものであり、茶色がかった天井の美しい木目が、ライトに照らされてよく映えていた。

 首を回して辺りを見回すも、誰かがいる気配もなければ、特に変った事がある様子もない。

 ただ、無性に空腹感が感じられ、間隔をあけて面白いように腹の虫がないていた。

「オレ……まだ生きてるのか」

 エルナードは正直に驚いていた。両目を見開き、左の掌を眺めて。

 そして、この時あまりよくない予感もしていた。しばらく前に体験した出来事を思い出したのだ。

 恐る恐る、扉のほうを眺める。

「――っ師匠ー!!!」

「うわぁーっ!」

 扉を開けてエルナードを一目見るなり、その弟子であるリノが子猫のようにベッドに飛び掛ってきたのだ。しかも大号泣でだ。

 そのようすから、一体エルナードがどれほど目を覚まさなかったのかをうかがわせる。いくら慰めようにも、まったく泣き止んでくれる素振りはなく、エルナードは大いに困った。

「リノ、リノ、もう大丈夫だから、泣き止んでくれよ。な? なぁ~、頼むってー」

「う、うぅ。本当に、本当に心配したんでうからえ? もうダメかと思っちゃいましたよー!!」

 そういうと、再び大粒の涙をこぼし始めた。

(だめだ。これはしばらく泣き止みそうにないな……)

 はぁ、とため息をつき、とにかく早く泣き止んでくれるよう、リノの頭の上に手をそっと乗せた。

「なんか、またこんな事がありそうで怖いな。お次は誰だ? って……、あっ!」

エルナードは大口を開けた。

「おい、リノ、アイリスは、あの洞窟にいた女の子はどうした?!」

「ぐすん。私を差し置いて他のこの話ですか師匠?」

 目元を真っ赤に染めながら、リノがじっとりとした目で見る。

「冗談言ってるときじゃない。本当に、オレはちゃんと助けられたのか?!」

 それからしばらくダンマリを決め込んだリノも、熱心なエルナードの瞳に観念し、口を開いた。

「あの子ならつい少し前に目を覚ましましたよ? でも、なにも言わないんです。起きてはいるみたいなんですけども」

「そうか。で、いまどこにいるんだ? そこに案内してくれ」

エルナードにしては珍しく、リノに詰め寄る。

「わ、わかりました。こっちです」

 リノの手を借りてエルナードはベッドから出て、自らの足で地面に立った。しかし、しばらく寝たきりだった所為か筋肉がどうやら衰えているようで、フラフラとしてしまう。

 ベッドの横の化粧台に誰かが用意してくれたであろう松葉杖を見つけると、それを手に取り、リノの後を歩き始めた。

 ツカ、ツカ、ツカ、と床の上につく足や杖の音が耳に気持ちいいほどよく響く。よくあたりに気を配ると、どこも静まり返っており、人の気配を感じさせなかった。

「今は師匠たちが安静にしなくちゃいけないってことで、皆さんには他のところで静かにしてもらってます」

 なんだ? リノは心でも読めるのか?

「皆さんって、そうか、あいつらもみんなココにいるのか」

「いいえ、皆さんというのはセンスさんたちじゃなくて、村長さんたちのことです」

「え? 村長?」

 いきなり会話に登場した人物に、エルナードは目を点にして驚いた。

「そうですよ。ここはヴィエリの村長さん宅なんです。親切に、私たちに貸してくれたんですよ」

 そうだったのか。知らなかった。あとで礼を伝えなければいけないな。

 部屋を出て廊下を真っ直ぐ行き、突き当たりの右の部屋に入る。

「ここです。皆さん、師匠がやっと目を覚ましましたよ!」

 その声に反応して、その部屋にいた総勢4名の視線が一点に集まった。こういうときにコミ障気味のエルナードは一歩引いてしまうのだ。

 センス、ヘネス、ユマは、その様子に呆れてか、くすくすと笑った。

 しかしただ1人、一番奥のベッドにいるアイリスだけは、1度視線を向けたにしても反応を見せる事はなかった。

 その様子に、エルナードは足を引きずりながらアイリスのもとにいく。

「よぅ。やっとちゃんと会えたな。いろいろ聞きたい事はあるけど、今はゆっくりしてくれ」

「…………」

アイリスは何も答えようとしない。

「アイリス……?」

「――違う。私はアイリスじゃないわ。私の名前はニーナ。ニーナ=アルノエアルよ……!」

「え……」

 エルナードは絶句した。

 ニーナと名乗る、ブロンドのロングヘア、そして燃えるように赤い瞳の前で。

オレを漢字からカタカナに変えました。

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