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相場より安いワンルームマンションに引っ越したら、もれなくオバケちゃんが憑いてきた。
仕事は残業が当たり前で、休日出勤も多い。疲れて、せめて通勤時間を短くしようと引っ越しを決めた。友人達の「結婚して、引っ越しました!」なハガキが舞い込む中、なかなか侘しい理由の引っ越しだ。
賃貸斡旋業者ムニムニのオッサンが「築浅で、日当たりの良いワンルームマンションで、対面式キッチンのこの部屋などどうでしょう?」と出してきた物件を「日当たりの良い時間は会社にいるの。一人暮らしのワンルームに対面式キッチンって何の意味があるの? そんなのどーでもいいから、もっと安い駅から近いのにしてよ」といったら、この物件が出てきた。
引っ越しの片付けもなんとか終わり、いらなくなった古いシーツを処分しようとしていたときのことだった。
突然、誰もいないはずの部屋から声がした。
「そのシーツ、いらないならちょうだい?」
驚いたけれど、あまりに可愛らしい声だったので、怖いとは思わなかった。
「えーと……」
私はシーツを手にしたまま、固まった。くいくい、とシーツを引っ張る手ごたえがあり、シーツが丸くふくらんだ。ピカ○ュウくらいの大きさだろうか。シーツのふくらみが動いている。
「ちょっと古くて、しんなりしていて、とってもいい感じ!」
可愛い声がシーツの中からする。あわててシーツをめくってみるけれど、何もいない。でも、確かに透明な何かがいる。
………これがオバケというものか。
妙に納得し、段ボールの空き箱にシーツを入れ、その透明な弾力のある可愛い声でしゃべる物体を入れ、さっさと寝た。とにかく疲れていたのだ。どんなにファンタジーな出来事がおころうとも明日が仕事という事実は変わらない。
これがオバケちゃんと私の出会いだった。