◇2話◇体育館裏
今日は金曜日。当然、平日だから学校はある。面倒臭いな、と思いながらも学校に向けて自転車を走らせた。
「……またか。」
自然と、ため息がでた。学校に着き、靴を履き替えようと下駄箱を開けると俺の上靴がなくなっていたからだ。
ほぼ毎日、一体誰がこんなメンドクサイ事をやってるんだか。…あ、うちのクラスの奴か、犯人。
……にしても、よく飽きないな、もう一ヶ月は経つぞ?
俺に対する嫌がらせは、十月頃から始まった。犯人を知っていても、それを先生に告げ口しようなんてメンドイこと、実行しようとなんか思わない。
だって、エスカレートしたら嫌だし。それに、もうすぐ卒業して、会うことなんてなくなる。だったら、このまま平穏に残り少ない高校生活を楽しもうじゃないか、という考えに落ち着いたのだ。
ケータイをポケットから取り出して時間を確認する。8時25分、朝のホームルームまであと5分だ。それまでに、上靴を探して教室に行かないと遅刻扱いになる。学校にはちゃんと登校出来てるのに遅刻扱いとか虚しすぎる。早く見つけて教室に行かないと…。
早速、靴箱周辺を探る。俺に嫌がらせをしている奴等は、どうやら嫌がらせはしたいけど、自分がやって疲れるほどの事はしたくないらしい。だから、いつも簡単に見つかる。昨日は使われていない靴箱に入ってたから、今日は靴箱の裏にでも落とされてそうだな…と目星をつける。身をかがめて壁と靴箱の間を覗く。……ビンゴ。そこには、俺の上靴が無造作に押し込まれていた。俺スゴくね?、と思わず自画自賛してしまう。
無事に上靴を見つけた俺は教室に向けて全力で走った。ギリギリ朝のホームルームにも間に合った。今日は絶好調だな。いつもこんな感じだったらいいのに。
* * *
放課後。同じクラスの天野に体育館裏に呼び出された。天野ってのは、俺に嫌がらせしてる奴等のリーダーみたいなやつ。なんで嫌がらせされてるのか全く検討がつかない。
つか、体育館裏っていえば告白スポットじゃん。
特にうちの学校は、校長が妙な気を遣わせて体育館裏はきれいに整備されている。告白にはもって来いな場所だ。だが、雰囲気がよ過ぎて逆に誰も寄り付かないようになっている。まぁ、校長はその事実を知らないようだが。
そんな場所にわざわざ呼び出して何をするつもりだろう?まさか人気が無いのを利用してカツアゲか…?それだけは勘弁してほしいな。今月は5冊も漫画を買う予定なんだって。金取られたら買えなくなるじゃん。
カツアゲ以外ならなんでもいい、どうかカツアゲじゃありませんよーに。
そう願いながら体育館裏に向かった。
* * *
体育館裏に着くと既に天野がベンチに腰をかけて待っていた。
天野一人で今日はお仲間がいないようだ。…ってことは、カツアゲではないみたいだな。
ん?カツアゲじゃないなら何の用だろう?
「えっと、お待たせ。…あの、俺なんかした…?」
ベンチに座っている天野に声をかける。
天野は一瞬驚いた顔をして、すぐに返事をした。
「…別に。話があるから呼び出した…だけ。」
何だ?イジメをしてるヤツが俺に話?…これから嫌がらせがエスカレートします的な宣戦布告か?
「話…?何の?」
「えっ、あー… えっと…」
なんだよ。歯切れ悪いな…いつもズバズバ俺に文句言ってくるクセに。
「…なんなの?早く言ってよ。言わないなら帰る。俺用事あるからさ。…あ、嫌がらせの事ならどうぞご自由に。俺そういうの気にしない性格だからイジメがいは無いだろうけど。」
そう言ってその場から立ち去ろうとしたら腕をおもいっきり引っ張られた。
「待って!言うから!!……好きなんだ、お前のこと。」
「………はぁ?」
好きって誰が誰を?天野が俺を?嘘だろ?…だってコイツは俺の事が嫌いで、その証拠に俺に嫌がらせをしてるじゃんか。つか、何でいきなり告ってんの?コイツ。何?好きの裏返しで意地悪してました、って訳?小学生かよ!お前はっ!?
「……ははっ。いきなりでビックリしたろ?」
そりゃそーだろ。ビックリしないヤツがいるなら見てみたいっつうの。
読んで下さってありがとうございました。・・・展開が早い気がするけど大丈夫です(多分)。