◇1話◇木曜日
初BLです。…というよりも、物語を書くの自体が初めてです。至らない所が多いと思いますが、よろしくお願いします。
木曜日、俺にとってその日の夕方は特別な時間だ。
「……」
「…悠、手が止まってるぞ。」
そう言って俺に注意したのは、中村 喜秋。身長は俺よりも10センチほど高い細身の男で、かなりのイケメンだと思う。ついでに云うと、頭も良い。学年でずっと上位をキープしているらしい。ちなみに、現役大学生で、3歳年上だ。
なんでそんな奴が隣に座っているのかというと、大学受験に向けて勉強を始めたのだが、正直何処をどう勉強したらいいのかさっぱりわからなかった俺に、小さい頃仲の良かった、出来のいい幼馴染の喜秋を母さんが家庭教師として呼んだのだ。
「…考えてるとこなんですけど。この難問の答えを」
俺は数学の問題集から顔を上げて喜秋を睨んだ。
「難問って…。それ、基礎中の基礎だから」
「えっ、これって基礎なの?」
嘘だろう?だってもう15分くらい考えてるけど解けない問題なのに。俺ってそこまで馬鹿だったのか?
「その調子だとご褒美は無理っぽいな」
「!!そんなこと無いし。余裕だしっ!」
喜秋のいう”ご褒美”ってのは、俺が大学受験に成功したら昔みたいにまた色んなところに行って遊ぶ、というものだ。ガキの頃はよく俺と遊んでくれていたのだが、俺が中学生になった頃から俺とは遊ばなくなった。いや、普通に考えたら今までよく遊んでくれてたものだとは思うけどさ・・・。
「この問題、公式を覚えてないから解けないんだよ。・・・ていうか、これ、中学生でもちゃんとしてたら解ける問題だと思うんだけど?」
「・・・公式?中学の??こんな問題を解くための公式なんか習って・・・・あ!!分かった、三平方の定理だ!!」
「そうそう。それを使えば簡単に解けるから。このhを求めて、こっちに代入して・・・」
正直、喜秋の説明は馬鹿な俺でも分かりやすい。学校の先生が、わかって当然って感じで解説をしてくれない所も喜秋は丁寧に教えてくれる。・・・ん?家庭教師なら当然なのか??
* * *
「・・・ふう、喜秋~終わったよー・・・」
「喜秋じゃなくて、今は、中村先生だろ。それが嫌ならせめて喜秋先生って呼べ。バカ悠。」
「喜秋先生ー、本当の馬鹿にバカとかいうなよ・・・、結構傷つくんですけど。」
取り敢えず、傷ついたフリをしてみる。
「バカ、本当の馬鹿なら1回説明しただけで公式とか文法を覚えられるわけないだろ。」
「え、何それ?褒めてんの??貶してんの??」
「半分褒めて、半分貶してるかな。基礎中の基礎を1回は教えないと駄目な訳だし?」
そんな他愛も無い話をしていると、母さんが部屋に入ってきた。
ノックくらいしろよ・・・、母さん。
「喜秋くん、いつもありがとうね。もう8時きたけど、どうする?お夕飯食べてく?」
「あ、じゃあ、お言葉に甘えて。・・・美和子さんの料理美味しいですし。」
そういってニコッと爽やかに笑う。
「じゃあ、用意は出来てるから、勉強道具片付けたらすぐにリビングに降りてきてね。」
そう言って母さんは部屋から出ていった。息子の存在はガン無視っすか。まぁ、いいけど。
下に降りていくといい匂いが漂っている。今夜はハンバーグか。俺と喜秋の好物だ。皆席に着いて”いただきます”をする。俺に父さんはいない。俺が小学3年生のときに事故で亡くなった。だから喜秋、母さん、俺の3人で夕飯を食べる。いつもは二人で食べるが、喜秋がいるといつもより母さんが明るくなる。勿論俺も。
「あんたね~、あと受験まで四ヶ月しかないのに、基礎をまだやってんの?それで受かるのかしら?」
「それは俺も思うけど、大事な約束があるから落ちる訳にはいかないんだって。それに、大体分かってきたから大丈夫。」
「あぁ。基礎が、な?」といらない補足を喜秋がする。基礎で悪かったなっと思いつつ反論したら余計からかわれるので取り敢えず黙ることにした。
読んで下さってありがとうございました…!!