第六話:味方陣営の会合
帝国の艦隊を退け、ひと時の静寂が訪れた廃都の最上階。
そこには、湊を筆頭とした新生「技術帝国」の幹部たちが集まっていた。
円卓の周囲には、湊によって特別にカスタマイズされた三人の少女兵士が並んでいる。
一人は、湊が最初に救い、現在は全軍の総指揮を執るリュミエ。
二つ目の席には、情報戦と電子解析に特化した、知的な眼鏡をかけた少女、セレス。
三つ目の席には、重装甲と拠点の防衛を担う、小柄だが頑強な体躯を持つ少女、ボルト。
そして、その中心には、作業着の袖をまくり、ホログラムの図面を眺める湊がいた。
「……さて、現状の進捗を確認するぞ。セレス、例の解析はどうだ」
湊の問いに、セレスが冷静にホログラムを操作して、帝国の版図を映し出した。
「はい。帝国の王都周囲に展開されている『大魔導障壁』、その周波数特性を完全に特定しました」
「核融合による干渉波をぶつければ、理論上、コンマ三秒で無効化可能です」
セレスの淡々とした言葉に、隣のボルトが拳を打ち鳴らす。
「いいっスね! あの分厚い壁を、バターみたいに切り裂いてやりましょう」
「防衛ラインの三千体も、マスターのメンテナンスのおかげで、稼働率は常に百パーセントを維持してるっス!」
リュミエは、自分の新調された機械腕をじっと見つめながら、湊に視線を向けた。
「湊……。三千体の姉妹たちは、みんなあなたを神のように慕っている」
「でも、帝国はさらに強引な手段に出るはず。彼らは自分たちの過ちを認めるより先に、全てを焼き払おうとするわ」
湊は、手に持っていた電子ペンを置き、背もたれに深く寄りかかった。
「……わかってる。あいつらにとって、機械は使い捨てるもの、人間は支配するものだ」
「だが、俺の作りたい国は違う。全ての部品が、最適な場所で、最高のパフォーマンスを発揮できる場所だ」
湊は立ち上がり、円卓のモニターに、帝国の地下深くにある「巨大な熱源」を投影した。
「帝国は、古代のレグを動かすために、少女たちの命を燃料にしている」
「そのシステムそのものを、俺が核融合炉で上書きしてやる」
「解体するだけじゃない。帝国そのものを、俺たちが正しく『組み直す』んだ」
湊の言葉に、幹部三人の瞳に熱い信頼の火が宿った。
「会合は終わりだ。各員、自分の持ち場の『最終調整』に入れ」
「一箇所のネジの緩みが、国を滅ぼす。……完璧に仕上げろよ」
「「「了解、マスター!」」」
少女たちの力強い返唱が、冷たい石造りの部屋に響き渡った。
それは、旧時代の歪な支配を終わらせる、新たな時代の工程表の始まりだった。
【後書き】
本日は、新生帝国の幹部たちによる戦略会議の様子を描かせていただきました。
リュミエだけでなく、セレスやボルトといった個性的な「専門家」たちが湊の右腕として育っている様子はいかがでしたでしょうか。
湊の考え方は、支配ではなく、あくまでエンジニアとしての「最適化」に基づいています。
その思想が、虐げられてきた少女たちの心を動かし、一つの強大な国家としてまとまり始めています。
次回は、この三千体と幹部たちを引き連れ、帝国の重要拠点への電撃侵攻を開始する予定です。
湊の技術が、帝国の「理不尽」をどのように解体していくのか、ご期待ください。




