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鋼鉄の鼓動、星霊の火:オーバーホール・レジェンド  作者: ダッチショック


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第五話:技術帝国の進撃

廃都の静寂は、空を覆い尽くすほどの爆音によって破られた。


ガルマ帝国の正規軍、三つの飛行艦隊が雲海を割り、牙を剥いたのだ。


その数は、戦艦二十隻、魔導機五百機。


「失敗作のゴミ溜めに、我が帝国の裁きを下せ! 全門、斉射!」


艦隊司令官の傲慢な号令とともに、数千の魔力弾が降り注ぐ。


だが、廃都を焼き払うはずの光は、空中で見えない「壁」に阻まれ、霧散した。


「……出力が足りないな。演算のやり直しだ」


湊は廃都の中枢、巨大な管制塔の座席に深く腰掛けていた。


彼の周囲には、三千体の少女たちがそれぞれの端末を操作し、街全体を一つの「巨大な要塞」へと変貌させていた。


「湊、迎撃準備は整っているわ。みんな、以前とは比べものにならないほど体が軽いって喜んでる」


傍らに立つリュミエが、鋭い視線で空を見上げる。


湊は不敵に笑い、コントロール・パネルのメイン・レバーを押し込んだ。


「全ユニット、オーバーホール後の実戦テストだ。核融合炉、最大戦速。帝国のポンコツ共に、本当の『馬力』ってやつを教えてやれ」


次の瞬間、廃都のいたる所から、三千の白銀の閃光が飛び出した。


それは、湊によって完璧に調律され、核融合エネルギーを分け与えられた少女兵器たちの軍勢だった。


彼女たちは重力を無視した機動で、帝国の艦隊へと肉薄する。


帝国の操縦士たちは、自分の目が信じられなかった。


かつて自分たちが「欠陥品」として捨てたはずの少女たちが、今の自分たちの機体よりも遥かに速く、鋭く舞っている。


「バカな……! あの速度、機体が耐えられるはずがない!」


「耐えられるように、俺が組んだんだよ」


湊の声が、全通信回線をジャックして響き渡る。


リュミエの駆るレグ・ルクスが、プラズマの翼を広げて敵旗艦の真正面に現れた。


湊は核融合心臓の出力を、一気に臨界まで引き上げる。


「プラズマ収束砲、発射。……出力の計算を間違えるなよ、空が燃え尽きるぞ」


放たれた白銀の極光は、帝国の戦艦三隻を、まるで行列の薄紙のように一瞬で貫通し、蒸発させた。


空は青白く染まり、帝国の精鋭艦隊は、戦う間もなく半分が灰へと変わった。


三千の少女たちが放つ精密な射撃は、敵機の装甲の「最も弱い継ぎ目」だけを正確に撃ち抜いていく。


それは戦闘というよりも、巨大な機械を分解していく「解体作業」に近かった。


「ひ、退け! 退却だ! あんなものは魔法じゃない、別の何かだ!」


悲鳴を上げて逃げ惑う帝国軍。


だが、湊は冷酷に、最後の一撃を予約した。


「……逃がすか。俺のラインから出た製品こいつらを傷つけた代償は、高くつくぞ」


廃都の地下に眠っていた巨大な電磁投射砲レールガンが、湊の魔力改修によって目を覚ます。


核融合の莫大な電力を注ぎ込まれた砲弾が、音速の数十倍で放たれ、逃げる艦隊の最後尾を粉砕した。


空を支配していたのは帝国ではなく、かつて彼らが捨てた少女たちと、一人の整備士だった。


「リュミエ、第一段階完了だ。次は、あっちから帝国へ『納品』に行こうか」


湊は、恐怖に染まった空を見上げながら、次の工程表ロードマップを思い描いていた。


それは、帝国の王都そのものを、自らの手で解体し、再起動させるという壮大な計画だった。



【後書き】


第五話をお読みいただきありがとうございます。


湊の技術と三千体の少女たちの連携により、帝国の精鋭艦隊を文字通り「一掃」するシーンを描きました。


単なる魔法の撃ち合いではなく、湊が教えた「構造の弱点」を突く戦い方は、エンジニアが支配する戦場ならではの冷徹さと爽快感がありますね。


三千体の少女たちが湊を「主様」と呼び、心から信頼して戦う姿は、ブラック企業で使い潰された彼にとって、ある種の救いでもあります。


次回は、いよいよ帝国本土への進攻、そしてさらなる古代技術の接収を描く予定です。


このまま、湊たちの覇道を派手に描き進めてまいります。

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