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鋼鉄の鼓動、星霊の火:オーバーホール・レジェンド  作者: ダッチショック


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第四話:三千の眠り

古代廃都の地下深く、湊とリュミエは巨大な円形ドックへと辿り着いた。


そこは、帝国の歴史から抹消された「最終処分場」だった。


湊がレグ・ルクスのライトを点灯させると、闇の中に無数の影が浮かび上がる。


それは、リュミエと同じ境遇にありながら、起動試験に耐えられず廃棄された少女兵器たちの残骸だった。


「……こんなにたくさん。みんな、私の姉妹だった子たち……」


リュミエの声が震える。


湊はコックピットから飛び降りると、埃の積もった床を歩き、一体の少女の傍らへ膝をついた。


彼女たちの背中には、無理やり増設された重魔導ユニットが、無惨に剥き出しのまま錆びついていた。


湊はエンジニア・インターフェースを起動し、広大なドック全体をスキャンする。


「……個体数、およそ三千。全機、魔導回路の焼き付きによる機能停止状態か」


彼は、その一体の接続端子に指先を触れさせた。


「だが、コアは死んでいない。ただ、膨大なエネルギーの逆流に、システムが『安全装置セーフティ』をかけただけだ」


湊の胸の核融合心臓が、共鳴するように熱を帯びる。


「リュミエ、手伝え。こいつらを全員、ラインに乗せるぞ」


「湊、三千体も直すなんて無理よ。帝国の技術者たちが何十年かけてもできなかったのよ?」


湊は不敵に笑い、核融合プラズマを指先から細い糸のように伸ばした。


「帝国の連中は、無理やり電気を流し込むことしか知らなかった。だが、俺は『流れ』を整える方法を知っている」


湊はドックの中央にある、古びた動力制御盤へと歩み寄った。


彼は迷わず、自分の右腕をその制御盤の動力源へと直結させる。


「核融合出力、定格の四十パーセントまで上昇。全個体へ向けて、最適化パルスを送信」


湊の体から溢れ出した青白い光が、床に張り巡らされた魔導回路を伝わり、三千体の少女たちへと広がっていく。


それは、暴力的な破壊の光ではない。


凍りついた機械の油を温め、錆びついた歯車を優しく解きほぐす、母なる熱量だった。


カチリ、カチリと、静まり返っていたドックに、小さな駆動音が響き始める。


三千体の少女たちの胸元にある魔導水晶が、核融合の火を受けて、一斉に黄金の輝きを取り戻していく。


「……再起動リブート完了。全機、システムチェックを開始しろ」


湊の号令とともに、一斉に三千の瞳が開いた。


彼女たちは、自分たちを縛り付けていた呪縛が消え、かつてないほどの力が全身に満ちていることに気づく。


「……主様マスター。指示を、お待ちしております」


一人の少女が、代表して湊の前で膝をついた。


それは、帝国が「使い捨ての部品」として扱った少女たちが、湊という一人の技術者の手によって「個としての兵士」に昇華された瞬間だった。


「いいか、お前たちはもう、帝国の操り人形じゃない。俺の国の、大切な『国民』だ」


湊は立ち上がり、彼女たちを見渡した。


「これから、この廃都を俺たちの拠点に改装する。足りない資材は、帝国から分捕ってこい」


三千の少女兵器たちが、力強く肯定の声を上げる。


それは、やがて世界を震撼させる「技術帝国」の産声だった。



【後書き】


第四話をお読みいただきありがとうございます。


三千体という膨大な数の少女兵器が、湊の核融合エネルギーによって一斉に目覚めるシーンを描かせていただきました。


帝国が「ゴミ」として捨てた三千の戦力が、湊の手で完璧なコンディションに整えられたとき、世界は真の恐怖……いや、真の技術革新を知ることになります。


次回は、この三千体と共に廃都を要塞化し、攻めてくる帝国軍を「技術の差」で圧倒する防衛戦を描きます。


引き続き、物語の発展をお楽しみください。

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