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鋼鉄の鼓動、星霊の火:オーバーホール・レジェンド  作者: ダッチショック


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第二話:建国の産声

「……おい、湊! ぼさっとするな、来るぞ!」


リュミエの鋭い叫びが、レグ・ルクスのコックピットに響いた。 正面の雲海を割り、帝国軍の飛行魔導兵器「ガル・ヴァルト」が三機、編隊を組んで突っ込んでくる。


それらは醜悪な鉄の鳥のような姿をしており、嘴にあたる砲門から赤黒い魔力弾を放った。


「落ち着け、リュミエ。……外部マイクの音量を下げろ。ノイズで機械の声が聞こえない」


湊は冷徹に、視界に浮かぶホログラムをフリックした。


核融合心臓から供給されるプラズマ流体は、機体の全身を巡り、数世紀分の錆を一瞬で焼き飛ばしていた。


「……まずは一機。出力調整、十五パーセント。これ以上出すと、この機体の古いフレームが持たない」


湊が操縦桿を押し込む。


次の瞬間、レグ・ルクスは「消えた」。


物理法則を無視した加速ではない。


核融合による爆発的な推進力が、機体の質量を強引に前方へ押し出したのだ。


回避行動が間に合わなかった敵の一機が、レグ・ルクスの白銀の拳によって一撃で粉砕される。


「な、なんて出力なの……。魔導炉の限界値を軽々と超えているわ」


「出力だけじゃない。この機体は、設計段階で『多重エネルギー連結』を想定した構造になっている。つまり、俺の核融合と、この世界の魔力を混合すれば……もっと化ける」


湊は戦いながらも、すでにレグ・ルクスの構造を完全に解析していた。


この星に眠る古代兵器たちは、単なる兵器ではない。


それぞれが特定の役割を持った「モジュール」なのだ。


残り二機の敵が、湊の異常な機動力に怯え、距離を取ろうとする。


だが、湊は逃がさない。


「テスト走行は終わりだ。……全回路、同期シンクロ


レグ・ルクスの背部から、プラズマの残光が翼となって広がる。


それは太陽の表面にも似た、清冽な熱。 湊が引き金を引き、腕部に内蔵された魔導砲を放つ。


放たれたのは、核融合の熱量によって超高温・高圧化された「プラズマ魔導弾」だった。


光の一閃が空を裂き、残りの二機を装甲ごと蒸発させた。


爆発の衝撃波が雲海を割り、はるか下方の地表までを照らし出す。


「……掃討完了。リュミエ、次の目的地を決めよう」


「次? どこへ行くつもり?」


湊は、地表のいたる所に反応を見せる「エンジニア・インターフェース」のマップを指差した。


そこには、帝国が「ゴミ捨て場」と呼び、放置している古代の遺跡群が点在していた。


「このレグ・ルクス一機じゃ、守れるものは限られている。……あそこに眠っているジャンク共を、全部叩き起こす。帝国が恐れて捨てるほどの『本物』を、俺の手で再生させてやるんだ」


湊の瞳には、かつて工場で新車がラインオフされるのを見守った時と同じ、静かな熱が宿っていた。


「俺たちが新しい秩序を作る。……帝国でも王国でもない。完璧に整備された、最強の『技術帝国』だ」


それは、一人の整備士が世界に叩きつけた、宣戦布告だった。 浮遊大陸ゾディアの空に、新しい太陽が昇ろうとしていた。

【後書き】


第二話をお読みいただきありがとうございます。 湊の目的が「古代兵器の復活による建国」へと大きく動き出しました。 圧倒的な核融合の力で敵を排除しつつ、その本質は「壊れたものを直す」という整備士の矜持にあります。


帝国が使いこなせずに捨てた旧時代の遺産が、湊の手によって「近代化改修(近代化改装)」され、一つ、また一つと蘇っていく過程は、本作の醍醐味となるでしょう。 技術の粋を集めた、世界で最も「合理的で頑強な国」がどのような姿を見せるのか。


次回は、最初の拠点となる廃工場の確保と、新たな仲間(あるいは新たな機体)との出会いを描く予定です。 このまま、真柴湊の覇道にお付き合いいただけますと幸いです。

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