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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第1章【欲求のままに生きる】

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第4話「静かに過ごしたいだけなのに」

村での生活が始まって二週間。

村は、賑やかになった。

朝から晩まで、人の声が聞こえる。

畑仕事の声。

温泉に入る声。

子どもたちの笑い声。

悪くない。

みんな幸せそうだ。

でも、俺は疲れてきた。

「……うるさいな」

小屋の中で、ぼんやり思う。

賑やかすぎる。

人が増えすぎた。

最近、近隣の村からも人が来るようになった。

「奇跡の村があるらしい」

「温泉が湧いて、野菜が育つんだって」

噂が広まってる。

商人も来た。

「この野菜、売ってくれないか」

「温泉の湯を分けてほしい」

村長が対応してるけど、小屋の近くまで人が来る。

「あの方はどこに?」

「一目お会いしたい」

めんどくさい。

俺はただ、静かに過ごしたいだけなのに。


その日の午後。

畑仕事を終えて、小屋に戻った。

でも、村の広場では宴会が始まってる。

「豊作を祝おう!」

「アキト様に感謝を!」

俺の名前が出てる。

やめてくれ。

小屋に逃げ込む。

でも、窓から歓声が聞こえる。

笑い声、歌声。

「……落ち着かない」

静かな場所が欲しい。

一人になれる場所。

誰もいない場所。

「森に行くか」

そう決めた。


夕方、村を抜け出した。

誰にも言わず。

森に入る。

木々が夕日を遮って、薄暗い。

でも、静かだ。

鳥の声。風の音。

それだけ。

人の声がしない。

「……これだよ」

足を進める。

温泉の方には行かない。

もっと奥。

誰も来ない場所。

獣道を外れて、木々の間を進む。

草を踏む音。

枝が折れる音。

自分の足音だけが響く。

どれくらい歩いただろう。

開けた場所に出た。

小さな空き地。

木々に囲まれてる。

草が生えてる。

柔らかそうだ。

「ここだな」

空を見上げる。

木々の隙間から、夕焼けが見える。

オレンジ色の空。

風が吹いて、葉っぱが揺れる。

静かだ。

本当に静かだ。

「最高」

草の上に寝転がる。

ふかふかしてる。

気持ちいい。

目を閉じる。

風が頬を撫でる。

鳥が鳴いてる。

遠くで、何かの動物が動いてる音。

でも、人の声はしない。

「……ここで寝よう」

そう思った。


気づいたら、眠ってた。

目を開けると、空が暗くなってる。

星が出てる。

「あー、寝ちまった」

体を起こす。

辺りを見渡す。

暗い。

でも、月明かりがある。

帰れないことはない。

でも、

「このまま寝てもいいか」

村に戻るのが面倒だ。

ここは静かで、気持ちいい。

このまま朝まで寝よう。

草の上に横になる。

空を見上げる。

星が、たくさん。

天の川がくっきり見える。

流れ星が一つ、流れた。

「……綺麗だな」

都会じゃ見られない星空。

ここでは、毎晩見られる。

目を閉じる。

虫の音が聞こえる。

風が吹く。

葉っぱがさらさらと揺れる。

静かだ。

本当に静かだ。

「幸せだな」

呟く。

すぐに、眠りが訪れた。


翌朝。

鳥の声で目が覚めた。

体を起こす。

朝日が木々の間から差し込んでる。

眩しい。

でも、気持ちいい。

「よく寝た」

伸びをする。

体が軽い。

昨日の疲れが取れてる。

「やっぱり静かな場所はいいな」

立ち上がって、周りを見渡す。

草が、昨日より緑に見える。

気のせいか?

いや、

「……また?」

草が、伸びてる。

昨日は膝くらいだったのに、今は腰くらいある。

花も咲いてる。

小さな白い花。

昨日はなかった。

「俺が寝ただけなのに……」

ため息をつく。

また、何か起きたのか。

でも、まあいいか。

花が咲くだけなら、害はない。


村に戻る。

村人が騒いでる。

「アキト様がいない!」

「どこに行かれたんだ!」

「まさか、魔物に……」

村長が慌てた顔で走ってくる。

「アキト!無事だったか!」

「はい、森で寝てました」

「森で!?」

村長は俺の肩を掴んだ。

「心配したんだぞ!なぜ黙って出て行った!」

「すみません。ちょっと静かな場所で寝たくて」

「静かな……」

村長は呆れた顔をした。

「お前という奴は……」

「本当にすみません」

「いや、無事ならいい」

村長は安堵の息をついた。

「だが、次からは一言言ってくれ」

「分かりました」

村人が集まってくる。

「ご無事で!」

「心配しました!」

「どこにおられたんですか?」

質問攻めだ。

「森の奥で寝てただけです」

「森の奥で!?」

「魔物は出ませんでしたか!」

「いえ、全然」

「奇跡だ……」

誰かが呟いた。

「きっと、あの方の周りには魔物が近づけないんだ」

「そうに違いない」

「やはり、神の加護が……」

話が大きくなってる。

めんどくさい。

「あの、俺は小屋に戻ります」

「お待ちください!」

若い男が言った。

「森で何があったんですか?」

「何もないです。ただ寝ただけで」

「でも、何か起こったはずです!」

「いや、本当に何も……」

「案内してください!」

断れる雰囲気じゃない。

「……分かりました」


村人数人と、森に向かった。

昨日寝た場所まで案内する。

「ここです」

空き地に着いた。

村人が、固まった。

「これは……」

空き地が、花畑になってる。

白い花。ピンクの花。黄色い花。

草も緑々と茂ってる。

蝶が飛んでる。

「こんなに花が……」

「一晩で?」

「信じられない」

村長が俺を見た。

「お前、ここで何をした?」

「寝ただけです」

「寝ただけで、こんなことになるか?」

「分かりません」

本当に分からない。

俺はただ寝ただけだ。

村人の一人が、花を触った。

「本物だ……」

「しかも、こんなに綺麗な花、見たことない」

「香りもいい」

「奇跡だ」

また、そうなる。

俺は何も言えなかった。


その日の夕方。

村人が俺の昼寝場所を「聖地」と呼び始めた。

「あの場所は、アキト様が祝福した場所だ」

「花が咲き、魔物が近づかない」

「みんなで守ろう」

話が勝手に進んでる。

小屋に戻って、一人になる。

「……疲れた」

静かに過ごしたかっただけなのに。

結果的に、また騒ぎになった。

窓の外を見る。

村人が花畑の話をしてる。

子どもたちが、花を摘みに行きたいと言ってる。

賑やかだ。

「静かにならないかな」

呟く。

でも、無理だろう。

村はどんどん賑やかになってる。

「……まあ、いいか」

みんな幸せそうだ。

それなら、いい。

俺は俺のペースで生きる。

たまに、森で一人になる時間を作る。

それでバランスを取ろう。


その夜。

温泉に浸かった。

一人で。

静かだ。

湯気が立ち上る。

星が見える。

「……やっぱり、これが一番だな」

温かい湯。

静かな夜。

誰もいない時間。

これがあれば、十分だ。

湯から上がって、小屋に戻る。

毛布に包まって、横になる。

今日も、色々あった。

でも、悪い日じゃなかった。

静かな場所も見つけた。

明日も、きっと。

目を閉じる。

すぐに、眠りが訪れた。


翌朝。

村長が小屋に来た。

「アキト、頼みがある」

「なんですか?」

「昨日の花畑だが、魔物が本当に近づかないか確認してほしい」

「え?」

「村人が花を摘みに行きたいと言ってる。だが、森の奥だ。危険かもしれん」

「……分かりました」

村長と一緒に、森に向かった。

花畑に着く。

相変わらず、花が咲き乱れてる。

「ここで待ってみます」

草の上に座る。

村長も隣に座った。

「お前は不思議な奴だな」

「そうですか?」

「ああ。お前が来てから、村が変わった」

「俺は何もしてないですけど」

「それが不思議なんだ」

村長は空を見上げた。

「お前はただ、自分の欲望に従ってる。それだけなのに、村が救われてる」

「……偶然ですよ」

「偶然が、こんなに続くか?」

村長は笑った。

「まあ、理由はどうでもいい。お前がここにいてくれる。それだけで、村は幸せだ」

「重いですよ、それ」

「すまんな」

しばらく、二人で黙って座ってた。

鳥が鳴いてる。

風が吹く。

静かだ。

「……魔物、来ませんね」

「ああ。お前がいるからかもしれん」

「そんなことないと思いますけど」

「いや、あるんだ」

村長は立ち上がった。

「村人に伝えよう。ここは安全だと」

「あの、あんまり人が来ると……」

「分かってる」

村長は笑った。

「お前の静かな場所が欲しいんだろう?」

「……はい」

「じゃあ、ここは村人が花を摘むだけにする。お前専用の場所は、別に作ろう」

「本当ですか?」

「ああ。お前にも、静かな時間が必要だろう」

「ありがとうございます」

村長は俺の肩を叩いた。

「礼はいい。お前のおかげで、村は豊かになった。このくらいはさせてくれ」


その日から、花畑は村人の憩いの場になった。

子どもたちが花を摘みに来る。

女たちが花を編んで、飾りを作る。

男たちは、周りに柵を作った。

「聖なる花畑」と呼ばれるようになった。

でも、俺には別の場所ができた。

村長が案内してくれた、森のさらに奥。

小さな空き地。

木々に囲まれて、誰も来ない。

「ここなら、静かに過ごせる」

村長が言った。

「ありがとうございます」

「いいんだ。お前も、たまには休め」


その夜。

新しい場所に行ってみた。

草の上に寝転がる。

静かだ。

本当に静かだ。

星が見える。

風が吹く。

虫が鳴いてる。

「……最高だな」

目を閉じる。

村は賑やかだ。

でも、ここは静かだ。

両方あれば、いい。

バランスが取れる。

「これで、また頑張れる」

呟く。

すぐに、眠りが訪れた。


村は変わり続けていた。

花畑ができ、人々は笑顔を絶やさなくなった。

賑やかで、温かい村。

でも、俺には静かな場所がある。

一人で過ごせる場所。

それがあれば、十分だ。

これからも、きっと。


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