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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第1章【欲求のままに生きる】

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第3話「気持ちいい場所で寝たい」

村での生活が始まって一週間。

畑は順調だ。

野菜は毎日育ち、村人は喜んでる。

俺の生活も落ち着いてきた。

朝は畑仕事。昼は休憩。夕方まで働いて、夜は早めに寝る。

規則正しい。

悪くない。

でも、一つだけ問題がある。

「……暑い」

小屋の中が、暑い。

昼間は日差しが強くて、小屋の中は蒸し風呂みたいになる。

夜も、熱がこもって寝苦しい。

薄い毛布をかけてても、汗が出る。

壁の隙間から風は入るけど、足りない。

「もっと涼しい場所ないかな」

ぼんやり考える。

気持ちよく寝たい。

それだけだ。


翌日。

畑仕事が一段落ついた午後、村長に聞いてみた。

「村の近くに、涼しい場所とかありませんか?」

「涼しい場所?」

「はい。小屋が暑くて、寝にくいんです」

村長は腕を組んで考えた。

「森の奥なら、木陰で涼しいぞ」

「森ですか」

「ああ。ただし、あまり奥に行くなよ。魔物が出る」

「分かりました。気をつけます」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫です。ちょっと見てくるだけなんで」

村長は心配そうな顔をしたけど、結局許してくれた。

「無理はするなよ」

「ありがとうございます」


森に入った。

木々が太陽を遮って、確かに涼しい。

風が吹くと、葉っぱがさらさらと揺れる。

鳥の声。虫の音。

静かだ。

村は賑やかになってきた。

子どもの声、笑い声、話し声。

悪くない。

でも、たまには静かな場所がいい。

一人で、ゆっくりしたい。

獣道を進む。

足元には草が生えてる。苔もある。

土が柔らかい。

気持ちいい。

さらに奥へ。

どれくらい歩いただろう。

ふと、足を止めた。

「……ん?」

空気が、変わった。

温かい。

湿ってる。

何かの匂いがする。硫黄の匂いだ。

「まさか」

足を早める。

木々の間を抜けると、

開けた場所に出た。

そこには、

「温泉……?」

湯気が立ち上っている。

地面から、湯が湧いてる。

小さな池みたいになってる。

透明な湯。

底まで見える。

「マジか」

近づいて、手を入れてみる。

温かい。

ちょうどいい温度だ。

熱すぎず、ぬるすぎず。

「最高じゃん」

周りを見渡す。

木々に囲まれてる。人目につかない。

静かで、涼しくて、温泉まである。

「ここだ」

ここで寝たい。

いや、ここに温泉を引きたい。

村まで。


村に戻って、村長に報告した。

「温泉を見つけました」

「温泉?」

「はい。森の奥に」

「本当か?」

村長は驚いた顔をした。

「この辺りに温泉なんて聞いたことないぞ」

「でも、ありました。湯気が出てて、湯も透明で」

「……案内してくれ」


村長と一緒に、森に向かった。

途中、若い男が二人ついてきた。

「俺たちも行きます」

「温泉、見てみたい」

村長は許可した。

「いいだろう。ただし、魔物には気をつけろ」

四人で森を進む。

村長は剣を持ってる。若い男たちも、槍を持ってる。

俺は丸腰だけど、まあいいか。

昨日と同じ道を進む。

「この奥です」

木々を抜けると、

温泉が現れた。

湯気が立ち上ってる。

「これは……」

村長が呟いた。

「本物だ」

若い男たちも、目を丸くしてる。

「すげえ」

「温泉なんて、初めて見た」

村長は湯に手を入れた。

「温かい。しかも、いい湯だ」

「これ、村まで引けませんか?」

「引く?」

「はい。井戸みたいに」

村長は考え込んだ。

「できないことはないが……距離があるな」

「掘ればいいんじゃないですか」

「掘る、か」

村長は周りを見渡した。

「村まで、どれくらいだ?」

「たぶん、一キロくらいです」

「一キロ……」

若い男の一人が言った。

「みんなで掘れば、できるかもしれません」

「そうだな」

村長は頷いた。

「やってみるか」


翌日から、村総出で作業が始まった。

森から村まで、溝を掘る。

男たちは鍬やスコップを持って、土を掘り返す。

女たちは水や食料を運ぶ。

子どもたちも、小さな石を運んでる。

「頑張れー!」

「もうすぐだ!」

みんな、楽しそうだ。

俺も鍬を振るう。

汗が出る。

でも、悪くない。

温泉が村に来る。

そう思うと、やる気が出る。


三日かかった。

溝が、村まで繋がった。

最後の土を掘り終えた瞬間、

湯が流れ始めた。

溝を伝って、ゆっくりと。

湯気が立ち上る。

「来た!」

「温泉だ!」

村人が歓声を上げた。

子どもたちは溝に手を入れて、はしゃいでる。

「温かい!」

「気持ちいい!」

村長は俺の肩を叩いた。

「やったな、アキト」

「みんなのおかげです」

「いや、お前が見つけてくれたんだ」

村長は笑った。

「これで、村に温泉ができた。信じられん」


その日の夜。

村の中央に、簡易の浴場ができた。

溝から引いた湯を、大きな木の桶に溜める。

屋根もつけた。

「さあ、入ってくれ」

村長が言った。

「アキトが最初だ」

「え、俺ですか」

「当然だ。お前が見つけたんだから」

村人が拍手してる。

「どうぞ!」

「ゆっくり入ってください!」

断れる雰囲気じゃない。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

服を脱いで、湯に浸かる。

「あー……」

極楽だ。

温かい。

体中の疲れが溶けていく。

筋肉が緩む。

湯気が顔を包む。

気持ちいい。

「最高……」

目を閉じる。

静かだ。

村人の声も遠くなって。

ただ、湯の音だけが聞こえる。

ちゃぷん、ちゃぷん、と。


しばらくして、湯から上がった。

体がぽかぽかしてる。

村長が笑ってる。

「いい顔してるな」

「最高でした」

「そうか。じゃあ、次は俺たちの番だ」

村長たちが次々と湯に入る。

「うおお、温かい!」

「気持ちいい!」

「こんな幸せ、初めてだ!」

みんな、嬉しそうだ。

俺は小屋に戻った。

体が軽い。

さっぱりしてる。

毛布に包まって、横になる。

「……これだよ、これ」

気持ちよく寝られる。

それだけで、幸せだ。

目を閉じる。

すぐに、眠りが訪れた。


翌朝。

村長が慌てた様子で小屋に来た。

「アキト!大変だ!」

「どうしたんですか?」

「井戸だ。井戸の水が増えてる」

「え?」

外に出る。

村の井戸に向かった。

村人が集まってる。

井戸を覗くと、

水が溢れんばかりに満ちていた。

「こんなに水が出たの、初めてだ」

「昨日までカラカラだったのに」

「奇跡だ」

村長が俺を見た。

「お前が温泉を引いてから、地下水脈が活性化したんだろう」

「そんなことあるんですか?」

「分からん。だが、現実だ」

村人たちは喜んでる。

「これで水不足も解消だ!」

「畑にも水をやれる!」

「神様のおかげだ!」

俺は何も言えなかった。

ただ温泉を引いただけなのに。

「……まあ、結果オーライか」

村長が笑った。

「お前のおかげだ、アキト」

「いえ、俺は気持ちよく寝たかっただけで……」

「それでいいんだ」

村長は空を見上げた。

「お前は自分の欲望に従って生きてる。それが、村を救ってる」

「そんな大げさな……」

「いや、事実だ」

村長は俺の肩を叩いた。

「ありがとう」


その夜。

温泉に浸かった。

一人で。

静かだ。

星が見える。

湯気の向こうに、天の川が広がってる。

「……幸せだな」

呟く。

温かい湯。

満ちた水。

豊かな畑。

すべてが満たされてる。

俺は何もしてない。

ただ、気持ちよく過ごしたかっただけ。

でも、結果的に村が豊かになった。

「不思議なもんだ」

湯から上がって、小屋に戻る。

体が軽い。

心も軽い。

毛布に包まって、目を閉じる。

今日も、いい一日だった。

明日も、きっと。


村は変わり続けていた。

温泉ができ、水が満ち、人々は笑顔を取り戻した。

子どもたちは元気に遊び、畑は緑に輝いてる。

でも、俺は変わらない。

ただ、気持ちよく寝たいだけ。

それだけだ。

これからも、きっと。


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