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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第6章【Ⅵ:満たされた世界】

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第28話「伝説の余波」

最近、村に見知らぬ人が増えてきた。


商人や旅人、中には貴族らしき人もいる。みんな、村を見て回っている。畑を見たり、温泉を覗いたり、村人に話を聞いたり。


最初は気にしていなかったけど、だんだん数が増えてきて、少し気になるようになった。


ある朝、畑仕事をしていると、見知らぬ男性が近づいてきた。立派な服を着ていて、商人のような雰囲気だ。


「失礼します。あなたが、アキト様ですか?」


と男性は丁寧に聞いてきた。


「はい、アキトですけど」

「お会いできて光栄です。私、王都で商いをしておりまして」


男性は深々と頭を下げた。


「ぜひ、あなた様の村の産物を、私に卸していただけないでしょうか」

「産物?」

「はい。この村の野菜や、温泉水など。王都で大変な評判になっておりまして」


男性は興奮した様子で話し続ける。でも、俺は困った。別に、売るために作っているわけじゃない。ただ、食べるために作っているだけだ。


「すみません、そういうのは村長に聞いてください」

「村長様にですか」

「はい。俺は、ただの村人なので」


男性は少し残念そうな顔をしたけど、頷いて村長の家に向かっていった。俺はホッとして、また畑仕事を続けた。


昼過ぎ、温泉に入っていると、村長が来た。彼は少し疲れた顔をしている。


「アキト、大変なんだ」


と村長は言った。


「どうしたんですか?」

「最近、村に訪問者が多すぎる。対応しきれないんだ」


村長は湯船に浸かりながら、ため息をついた。


「商人は商売の話を持ってくるし、貴族は視察だと言って来るし、旅人は『奇跡の村を見たい』と言って来る」

「そんなに来てるんですか」

「ああ。今日だけで五組だ。このままでは、村の生活が乱れてしまう」


村長の言う通り、確かに村は騒がしくなっている。以前は静かで穏やかだったのに、今は人の出入りが激しい。それは、少し居心地が悪い。


「何か、対策はあるんですか?」

「それが......」


村長は考え込んだ。


「何か規則を作らないといけないと思うんだが」

「規則?」

「ああ。訪問を制限するとか、立ち入り禁止区域を作るとか」


村長の提案は、もっともだと思った。このままでは、村の平和が壊れてしまう。




その夜、村の集会が開かれた。村人全員が集まって、訪問者の問題について話し合う。村長が前に立って、現状を説明した。


「皆さん、最近の訪問者の増加について、どう思われますか?」


村長の問いかけに、村人たちが次々と手を上げた。


「正直、困っています」


と年配の男性が言った。


「畑仕事をしていても、話しかけられて集中できません」

「私も」


と若い女性が続けた。


「洗濯をしていたら、『どうやって洗っているんですか』と聞かれて」

「温泉も、最近は人が多くて落ち着かない」


と別の男性が言った。


みんな、困っている。村の平和が、訪問者によって乱されている。村長は頷いて、言った。


「では、これから規則を作りたいと思います。訪問者の数を制限し、立ち入り禁止区域も設けます」

「賛成です」


と村人たちが声を揃えた。それから、具体的な規則について話し合いが始まった。


訪問は月に数回まで、事前に許可が必要、アキトの小屋周辺は立ち入り禁止、温泉の利用も制限する。色々な案が出て、最終的にまとまった。


「これで、村の平和を守れると思います」


と村長が言った。


「でも、一つ問題があります」

「何ですか?」


と俺は聞いた。


「アキト、お前のことだ」


村長は真剣な顔で俺を見た。


「訪問者の多くは、お前に会いに来ている。お前が『奇跡の人』として有名になっているからだ」

「俺に......」

「ああ。だから、お前の小屋周辺は特に厳重に守る必要がある」


村長の言葉に、村人たちが頷いた。


「アキト様の静かな生活を守るのが、私たちの役目です」


と年配の女性が言った。


「そうです。アキト様には、これまで通り穏やかに過ごしていただきたい」


と若い男性が続けた。


村人たちの温かい言葉に、俺は胸が熱くなった。みんな、俺のことを考えてくれている。


「ありがとうございます」


としか言えなかった。村長は微笑んで、「では、明日から新しい規則を実施します」と宣言した。


集会は終わり、村人たちはそれぞれ家に帰っていった。俺も小屋に戻ろうとしたとき、ユイが声をかけてきた。


「アキトさん、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫」

「訪問者が多くて、疲れてませんか?」


ユイは心配そうな顔をしている。


「少し疲れたけど、みんなが守ってくれるから」

「はい。私たちが、アキトさんを守ります」


ユイは力強く言った。その言葉が、すごく嬉しかった。


翌日から、村の入口に看板が立てられた。


「訪問には事前許可が必要です」

「立ち入り禁止区域があります」

「村の平和を守るため、ご協力ください」


看板を見て、訪問者の数は確実に減った。それでも、時々許可を得て訪れる人はいる。でも、以前ほど騒がしくはない。村は、少しずつ静けさを取り戻していった。




ある日の午後、昼寝をしていると、誰かが近づいてくる気配がした。目を開けると、商人グラドが立っていた。


「やあ、アキト殿。お久しぶりです」

「グラドさん、どうしたんですか?」

「実は、提案があって」


グラドは笑顔で言った。


「この村を、観光地にしませんか?」

「観光地?」

「そうです。『奇跡の村』として、多くの人に訪れてもらう。そうすれば、村は繁栄し、経済も潤います」


グラドの提案は、一見良さそうに聞こえる。でも、俺には合わない気がした。


「それは......」と言いかけたとき、村長が現れた。


「グラド殿、それはお断りします」


村長の声は、珍しく厳しかった。


「村長殿?」

「この村は、観光地にはなりません。私たちは、静かで穏やかな生活を望んでいます」

「しかし、経済的には......」

「必要ありません」


村長はきっぱりと言った。


「私たちは、今のままで十分に幸せです」


グラドは驚いた顔をしたけど、やがて理解したように頷いた。


「分かりました。では、この話はなかったことに」

「ありがとうございます」


村長はそう言って、グラドを見送った。グラドが去った後、村長は俺に向き直った。


「アキト、すまなかった。勝手なことを言う商人がいて」

「いえ、ありがとうございます」

「この村は、お前のような人が穏やかに暮らせる場所であるべきだ。それを守るのが、私の役目だから」


村長の言葉に、俺は深く頷いた。




それから数日が経った。村は、以前の静けさを取り戻していた。


訪問者はほとんど来なくなり、村人たちはいつも通りの生活を送っている。畑仕事をして、料理を作って、笑い合っている。


俺も、いつも通りだ。朝は畑仕事、昼は温泉、午後は昼寝。そんな日々が、また戻ってきた。


三人が小屋に集まった。


ユイが料理を持ってきて、リズが薪を運んできて、セシルがお茶を淹れてくれた。四人で食事をしながら、最近のことを話した。


「最近、人が来なくなりましたね」


とユイが言った。


「ああ。村が、規則を作ったからな」


と俺は答えた。


「よかったです。アキトさんが、静かに過ごせるようになって」

「うん。みんなのおかげだよ」

「でも、師匠」


とリズが言った。


「外では、師匠の伝説がどんどん広がってるぞ」

「伝説?」

「ああ。『世界を救った聖人』とか『神の化身』とか、色々言われてる」


リズは笑いながら言った。


「街に行くと、みんな師匠の話をしてるんだ」

「それは......」


俺は少し困った。そんな大げさな話、誰が広めているんだろう。


「でも、本人は知らないんですよね」


とセシルが微笑んだ。


「アキト様は、今日も昼寝をしていた、と」

「それが、一番面白いところだな」


とリズが笑った。


三人は楽しそうに笑っている。俺も、一緒に笑った。外でどんな噂が広がっていても、ここでは関係ない。この村で、いつも通りに過ごせればいい。それが、一番大切なことだ。


「アキトさん、明日は何するんですか?」

「明日?畑仕事して、昼寝して、温泉入るよ」

「相変わらずですね」


とユイが笑った。


「それが、いいんだよ」


とリズが言った。


「はい。変わらないでください」


とセシルが微笑んだ。三人の言葉に、俺は頷いた。変わらない。それが、俺の役割だ。


食事を終えて、外に出た。


星が綺麗だ。四人で並んで、空を見上げる。


村は静かで、穏やかだ。風が優しく吹いて、木の葉が揺れる。こんな夜が、一番好きだ。


「今日も、いい一日だったな」


と俺は呟いた。


「はい」


と三人が答えた。明日も、きっといい日になる。そう信じながら、星を見ていた。




その頃、王都では商人グラドが酒場で語っていた。周りには、いつものように人だかりができている。


「それで、アキト殿の村に行ったんだが」


とグラドは言った。


「観光地にしようと提案したら、村長殿に断られてしまった」

「断られた?」

「ああ。『静かな生活を守りたい』と」


グラドは少し残念そうに言った。


「でも、その気持ちも分かる。あの村は、本当に穏やかで美しい場所なんだ」

「アキト殿は、どうしていた?」


と誰かが聞いた。


「昼寝をしていたよ」


とグラドは笑った。


「相変わらず、のんびりとな」


周りの人たちも笑った。


「さすが、アキト殿だ」

「伝説の人なのに、昼寝か」

「それが、また面白い」


人々は、アキトの話を楽しそうに聞いている。グラドは満足そうに酒を飲んだ。アキト殿の村は、このままでいい。静かで、穏やかで、美しいまま。それが、一番ふさわしい。




王宮では、レオナルドが国王に報告していた。


「陛下、リーヴ村の件ですが」

「うむ」

「訪問者が増えすぎて、村が対策を講じたようです」

「ほう。どんな対策だ?」

「訪問の制限と、立ち入り禁止区域の設定です」


レオナルドは報告書を差し出した。国王はそれを読んで、満足そうに頷いた。


「良い判断だ。あの村は、静かであるべきだ」

「同感です」

「アキトは、どうしている?」

「相変わらず、昼寝をしているそうです」


レオナルドは微笑んだ。国王は笑って、「それでいい。彼は、彼のままでいればいい」と言った。


貴族の間でも、アキトの噂は続いていた。サロンでは、彼の話題が絶えない。


「聞きましたか?アキト様の村は、今は訪問が制限されているそうですよ」

「まあ、残念」

「でも、それも彼らしいわ。静かに暮らしたいのでしょう」

「ええ。きっと、今も昼寝をしているのでしょうね」


貴族たちは、アキトのことを温かく語り合っている。彼の伝説は、ますます広がっていく。でも、本人は何も知らない。


教会でも、アキトの話題が出ていた。教会長が、セシルからの報告書を読んでいる。


「セシルは、村に残ることにしたか」

「はい」


と側近が答えた。


「それでいい。彼女の居場所は、あそこだ」


教会長は微笑んだ。


「アキトは、今も変わらずか」

「はい。相変わらず、昼寝をしているそうです」

「ふふ、それがいい。彼は、世界の安定そのものだ」


教会長は報告書を閉じて、窓の外を見た。


「彼が変わらないでいてくれる限り、世界は平和だ」


こうして、アキトの伝説は広がり続けた。王都で、貴族の間で、教会で。みんなが、彼のことを語る。


「奇跡の人」「神の化身」「聖なる男」。色々な呼び方で。でも、リーヴ村は変わらなかった。


静かで、穏やかで、美しい村。訪問者は減り、村人たちはいつも通りの生活を送っている。そして、アキトも変わらない。朝は畑仕事をして、昼は温泉に入って、午後は昼寝をする。




その日の夜、アキトは一人で小屋の前に座っていた。星が綺麗だ。最近、色々なことがあった。訪問者が増えて、村が規則を作って、グラドが提案を持ってきて。でも、結局は静かな日常に戻った。


それが、一番いい。「最近、人が来ないな」と呟いた。


「静かでいいな」


窓の外から、三人の笑い声が聞こえてくる。温かくて、優しい声。この声が、ずっと聞こえますように。そう願いながら、空を見上げた。


「明日も、いつも通りにしよう」


呟く。畑仕事をして、昼寝をして、温泉に入る。


それが、俺の幸せだ。伝説がどうなろうと、関係ない。この村で、みんなと一緒に。ずっと、こうしていたい。星が瞬いている。静かで、穏やかな夜。


「今日も、いい一日だった」


と呟いて、小屋に戻った。ベッドに横になると、すぐに眠くなった。明日も、きっといい日になる。そう信じながら、目を閉じた。


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