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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第6章【Ⅵ:満たされた世界】

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第27話「それぞれの道」

王都から戻って一週間が経った。


村の生活は、相変わらず穏やかだ。朝は畑仕事をして、昼は温泉に入って、午後は昼寝をする。そんな日々が続いている。


でも、最近少しだけ変化を感じるようになった。それは、三人の様子だ。


ユイは相変わらず料理を作ってくれるけれど、最近は村の他の人たちにも教えるようになった。


村長の家の前に、小さなかまどを作って、そこで料理教室を開いている。朝、畑仕事をしていると、ユイの明るい声が聞こえてくる。


「火加減は、こうやって調整するんですよ」

「お肉は、焼く前に塩を振っておくといいです」


若い娘たちが集まって、真剣にユイの話を聞いている。ユイは教えるのが上手だ。分かりやすくて、優しくて、みんなが楽しそうに料理を作っている。




ある日の昼、温泉に入っていると、村長が話しかけてきた。


「アキト、ユイさんのことなんだが」


と村長は言った。


「隣の村から、料理を教えてほしいと依頼が来ているんだ」

「隣の村から?」

「ああ。ユイさんの料理の噂が広まっていてな。ぜひ、うちの村でも教えてほしいと」


村長は嬉しそうだ。ユイの料理は、本当に評判がいい。シンプルで、優しくて、心がこもっている。それが、多くの人に伝わっているんだろう。


「ユイは、何て言ってるんですか?」

「まだ本人には伝えていない。お前に相談してからと思ってな」

「俺に?」

「ああ。ユイさんは、お前のことを一番に考えるだろう。だから、お前から背中を押してやってくれ」


村長はそう言って、温泉から上がっていった。


俺は湯船に浸かったまま、考えた。ユイが隣の村に行く。それは、いいことだ。ユイの料理を、もっと多くの人に知ってもらえる。


でも、少し寂しい気もする。毎日一緒に食べていた食事が、少し減るかもしれない。


夕方、ユイの家に行った。扉をノックすると、ユイが笑顔で出迎えてくれた。


「アキトさん、どうしたんですか?」

「ちょっと話があって」


居間に通されて、お茶を出してもらった。ユイは俺の向かいに座って、不思議そうな顔をしている。


「村長から聞いたんだけど、隣の村から依頼が来てるんだって」

「あ......はい」


ユイは少し困った顔をした。


「村長さんから聞いたんですね」

「うん。でも、まだ返事してないんでしょ?」

「はい。まだ、どうしようか迷ってて」


ユイは視線を落とした。彼女は、何かを悩んでいる。


「どうして迷ってるの?」

「だって、隣の村に行くと、アキトさんとご飯を食べる時間が減るかもしれません」


ユイは顔を上げて、俺を見た。その目は、少し不安そうだ。


「私、アキトさんと一緒にご飯を食べる時間が、一番好きなんです」


その言葉に、胸が温かくなった。ユイは、俺とのこの時間を大切にしてくれている。それが、すごく嬉しい。


「ユイ、俺は大丈夫だよ」


と俺は言った。


「ユイの料理を、もっと多くの人に知ってもらいたい。それに、隣の村に行っても、一緒に食べる時間は作れるよ」

「本当ですか?」

「うん。週に何回か、一緒に食べよう。それで十分だから」


ユイは少し考えてから、微笑んだ。


「分かりました。じゃあ、引き受けます」

「うん。頑張って」

「はい!」


ユイの笑顔は、いつもより明るかった。彼女は、自分の道を歩み始めようとしている。それを、俺は応援したい。




翌日、リズが小屋に来た。彼女は何か、真剣な顔をしている。


「師匠、相談があるんだ」

「どうした?」

「冒険者ギルドから、講師の依頼が来た」


リズはそう言って、手紙を見せてくれた。近隣の街にある冒険者ギルドからの手紙だ。内容を読むと、新人冒険者の育成を手伝ってほしいとのことだった。


「講師か。リズなら、できるよ」

「本当に?」


リズは不安そうな顔をしている。


「俺、教えるのとか、得意じゃないんだ」

「大丈夫。リズは優しいし、強いし、みんなに慕われてる。きっと、いい講師になれるよ」


俺の言葉に、リズは少し照れたように笑った。


「師匠がそう言うなら、やってみるよ」

「うん。頑張れ」

「でも、師匠。俺、時々村に帰ってくるから」

「もちろん。いつでも帰ってきていいよ」

「ありがとう、師匠」


リズは嬉しそうに笑った。彼女も、自分の道を歩み始める。それは、俺にとっても誇らしいことだ。




数日後、セシルが小屋を訪ねてきた。彼女は少し緊張した顔をしている。


「アキト様、お話があります」

「どうしたの?」

「教会から、戻ってくるよう指示がありました」


セシルはそう言って、手紙を見せてくれた。教会長からの手紙だ。内容を読むと、村での任務は終了したので、本部に戻るようにとのことだった。


「そうか......」


俺は少し寂しくなった。セシルがいなくなるのは、やっぱり寂しい。でも、彼女には彼女の役割がある。仕方ないことだ。


「いつ出発するの?」

「それが......」


セシルは少し言いづらそうにした。


「私、断ろうと思っています」

「え?」

「ここに、残りたいんです」


セシルは真剣な顔で言った。


「この村が好きです。アキト様と一緒にいたいんです」


その言葉に、俺は驚いた。セシルは教会の巫女だ。教会の指示に従うのが、彼女の役割のはずだ。


「でも、教会は......」

「説得します。アキト様のおそばで、私にしかできない役割があると。この村で、神の教えを広めることができると」


セシルは微笑んだ。


「それに、もう決めたんです。私の居場所は、ここだって」


その決意に、俺は何も言えなくなった。セシルは、本気だ。彼女も、自分の道を選ぼうとしている。


「分かった。じゃあ、応援するよ」

「ありがとうございます、アキト様」


セシルは嬉しそうに微笑んだ。彼女の笑顔は、とても穏やかで、温かかった。




それから数日が経った。


ユイは週に三回、隣の村に行くようになった。朝早く出発して、夕方には帰ってくる。帰ってくると、いつも楽しそうに話してくれる。


「今日は、スープの作り方を教えました」

「みんな、すごく真剣に聞いてくれるんです」

「アキトさん、今度一緒に行きませんか?」


ユイは生き生きとしている。彼女は、自分の道を楽しんでいる。それを見ていると、俺も嬉しくなる。


リズは週に一度、街のギルドに行くようになった。新人冒険者たちに剣の使い方や、魔物との戦い方を教えている。最初は不安そうだったけど、今では楽しそうだ。


「師匠、今日はすごかったぞ」


とリズは報告してくれる。


「新人の一人が、初めて魔物を倒したんだ」

「俺が教えたことを、ちゃんと実践してくれて」

「なんか、嬉しかったな」


リズの笑顔は、自信に満ちている。彼女は、立派な講師になっている。




セシルは教会に手紙を送った。村に残りたいという意思と、その理由を丁寧に書いた手紙だ。


返事が来るまで、少し時間がかかった。でも、やがて教会長から返事が届いた。内容を読んだセシルは、涙を流して喜んでいた。


「許可が出ました」とセシルは言った。


「村に残って、活動を続けていいと」

「よかったな」

「はい。本当に、よかったです」


セシルは村の巫女として、正式に活動することになった。村人たちに神の教えを伝えたり、困っている人を助けたり。彼女は、自分の役割を見つけた。




ある日の夕方、四人で温泉に入っていた。女性陣は別の時間に入るけど、今日は貸し切りにしてもらって、みんなで話すことにした。


もちろん、タオルで仕切りを作って、男女は分かれている。でも、声は聞こえるから、会話はできる。


「最近、みんな忙しそうだね」


と俺は言った。


「はい。でも、楽しいです」


とユイが答えた。


「料理を教えるのって、すごく楽しいんです。みんなが喜んでくれるのを見ると、嬉しくて」

「俺も、講師の仕事が楽しい」


とリズが言った。


「新人たちが成長していくのを見るのは、なんか誇らしいんだ」

「私も、村での活動が充実しています」


とセシルが続けた。


「神の教えを伝えることで、人々が笑顔になる。それが、私の喜びです」


三人とも、それぞれの道を歩んでいる。それぞれの場所で、輝いている。俺は、それが嬉しかった。


「でもさ、アキト様」


とセシルが言った。


「私たち、変わりましたけど、アキト様は変わらないですね」

「え?」

「ええ。相変わらず、畑仕事をして、昼寝をして、温泉に入って」


とユイが笑った。


「それが、アキトさんらしいです」

「師匠は、そのままでいいんだよ」


とリズが言った。


「俺たちが変われたのは、師匠がいたからだ。師匠が変わらないでいてくれるから、俺たちは安心して変われる」


その言葉に、俺は少し驚いた。俺は、何も変わっていない。ただ、いつも通りに過ごしているだけだ。でも、それが三人にとって大切なことなのかもしれない。


「そうか。じゃあ、これからも変わらないでいるよ」

「はい。お願いします」


と三人が言った。


温泉から上がって、小屋の前で星を見た。四人で並んで、空を見上げる。星は相変わらず綺麗で、静かで、穏やかだ。


「アキトさん、これからも一緒にご飯食べましょうね」


とユイが言った。


「もちろん」

「師匠、また修行つけてくれよ」


とリズが言った。


「うん、いつでも」

「アキト様、これからもよろしくお願いします」


とセシルが言った。


「こちらこそ」


三人は、それぞれの道を歩み始めた。でも、この村に帰ってくる。この場所が、みんなの原点だから。


そして、俺は変わらず、ここにいる。畑仕事をして、昼寝をして、温泉に入る。それが、俺の役割なのかもしれない。


「明日も、いい日になるといいな」


と呟いた。


「なりますよ、きっと」


とユイが微笑んだ。


「なるさ」


とリズが笑った。


「神のご加護がありますから」


とセシルが言った。四人で笑い合った。静かで、穏やかな夜。こんな時間が、ずっと続けばいい。そう思いながら、星を見ていた。




翌朝、いつも通りに畑仕事を始めた。土を耕して、種を蒔いて、水をやる。


シンプルで、気持ちがいい。作業をしていると、遠くからユイの声が聞こえてきた。料理教室をしているみたいだ。


「はい、次は野菜を切りますよ」

「包丁は、こう持つんです」


明るい声が、風に乗って聞こえてくる。



昼過ぎ、リズが村に帰ってきた。


「師匠、ただいま」

「おかえり。どうだった?」

「うまくいったぞ。新人たちも、だいぶ強くなってきた」


リズは満足そうだ。彼女は、講師の仕事を楽しんでいる。


「それはよかった。昼寝するか?」

「ああ、する」


二人で木陰に横になった。風が心地よくて、すぐに眠くなる。



夕方、セシルが村の広場で祈りを捧げていた。村人たちが集まって、一緒に祈っている。

セシルの声は穏やかで、優しくて、聞いているだけで心が落ち着く。


「神よ、この村に平和を。この人々に幸せを」


祈りが終わると、村人たちは笑顔でセシルに感謝を伝えていた。セシルも、嬉しそうに微笑んでいる。



夜、四人でユイの家に集まった。ユイが夕食を作ってくれる。今日のメニューは、シチューとパン、それにサラダ。シチューは野菜がたっぷり入っていて、温かくて、優しい味がする。


「美味しい」と俺は言った。


「ありがとうございます」


とユイが微笑んだ。


「今日、隣の村で作ったレシピなんです」

「そうなのか。みんな喜んだだろうな」

「はい。すごく喜んでくれました」


食事をしながら、色々な話をした。リズの講師の仕事のこと、セシルの村での活動のこと、ユイの料理教室のこと。みんな、それぞれの場所で頑張っている。そして、この村に帰ってくる。この時間を、大切にしている。


「アキトさん、明日は何するんですか?」


とユイが聞いた。


「明日?畑仕事して、昼寝して、温泉入るよ」

「相変わらずですね」


とユイが笑った。


「それが、アキトさんらしいです」

「師匠は、そのままでいいんだよ」


とリズが言った。


「はい。変わらないでください」とセシルが微笑んだ。


三人の言葉に、俺は頷いた。変わらない、か。確かに、俺は何も変わっていない。でも、それでいいんだろう。三人が変わっていく中で、俺は変わらない。それが、バランスなのかもしれない。


食事を終えて、外に出た。星が綺麗だ。四人で並んで、空を見上げる。


「今日も、いい一日だったな」


と俺は呟いた。


「はい」と三人が答えた。


こんな日々が、ずっと続けばいい。みんなが幸せで、穏やかで、笑顔でいられる日々が。それが、俺の願いだ。


「じゃあ、また明日」と言って、小屋に戻った。


ベッドに横になると、すぐに眠くなった。


今日も、いい一日だった。明日も、きっといい日になる。そう信じながら、目を閉じた。


窓の外から、三人の笑い声が聞こえてくる。温かくて、優しい声。この声が、ずっと聞こえますように。そう願いながら、眠りに落ちていった。


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