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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第5章【Ⅴ:静かな事件】

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第25話「小さな奇跡、大きな伝説」

レオナルドが去ってから、村は再び穏やかな日常に戻っていた。朝は畑仕事をして、昼は温泉に入って、午後は昼寝をする。夕方には誰かが来て、一緒に過ごす。そんな日々が続いていた。でも、最近になって気づいたことがある。村で小さな問題が起きても、いつの間にか解決しているのだ。


ある朝、村の子どもが転んで膝を擦りむいた。血が出ていて、痛そうに泣いている。俺がたまたま近くにいたので、駆け寄って傷を見た。そんなに深くはない。大丈夫だろう。


「痛いの痛いの、飛んでいけ」


と手を当てながら言った。子どもの頃、母親がよくやってくれたおまじないだ。効果があるわけじゃないけど、気休めにはなる。子どもは涙を拭いて、膝を見た。


「あれ……血、止まってる」

「え?」


俺も見ると、確かに血が止まっている。それどころか、傷が小さくなっている気がする。さっきまで赤く腫れていたのに、今はほとんど分からない。


「痛くない?」

「うん、もう痛くない」


子どもは笑顔で走っていった。俺は自分の手を見る。何か、したのか?いや、ただ手を当てただけだ。でも、傷が治った。偶然か。きっと、偶然だ。


その日の午後、畑で害虫が発生しているという報告があった。キャベツの葉っぱが食べられているらしい。村長と一緒に畑を見に行くと、確かに虫がたくさんいる。小さな緑色の虫だ。


「これは……厄介だな」


と村長が言った。


「このままでは、キャベツが全滅する」

「駆除しないとダメですね」

「ああ。でも、数が多すぎる」


俺は畑を見回った。虫がたくさんいる。一匹ずつ取るのは大変だ。どうしよう。そう思いながら、畑の周りを歩いていると、虫が減っていく気がした。最初は気のせいかと思ったけど、本当に減っている。


「村長、虫が……」

「ん?ああ、本当だ。いなくなってる」


村長も驚いた顔をしている。さっきまでたくさんいた虫が、ほとんどいない。どこに行ったんだろう。


「お前、何かしたか?」


と村長が聞いた。


「いえ、ただ歩いただけです」

「歩いただけで……」


村長は呆れたような、感心したような顔をした。


「やはり、お前は特別だな」

「特別じゃないですよ」

「いや、特別だ」


村長は笑った。


「まあ、いい。虫がいなくなって、助かった」


夕方、井戸の水が濁っているという報告があった。何か混ざったのか、茶色く濁っている。これでは飲めない。村人が困っている。


「どうしたんだろう」

「分かりません。朝は普通だったのに」


村人たちが井戸を覗き込んでいる。俺も覗いてみた。確かに、濁っている。底が見えない。


「一度、掃除した方がいいかもしれませんね」

「ああ。でも、今日は遅いから、明日にしよう」


村長がそう言った時、俺はふと思いついて、井戸に手を伸ばした。水面に触れる。冷たい。それだけだ。でも、手を引いた時、水が透明になっていた。


「あれ?」

「おい、水が……」


村人たちが驚いている。濁っていた水が、透明になっている。底まで見える。


「アキト、お前……」

「いや、何もしてないです。ただ、触っただけで」

「触っただけで、こんなことになるか?」


村長は困った顔をしている。でも、水は透明だ。飲める。それでいいじゃないか。


「まあ、結果オーライですね」

「……そうだな」


村長は諦めたように笑った。


その夜、四人で星空を見ていた。今日も、色々あった。子どもの怪我、害虫、濁った水。でも、全部解決した。なぜか分からないけど、解決した。


「アキトさん、今日もすごかったですね」とユイが言った。

「何が?」

「子どもの怪我を治したり、虫を追い払ったり、水を綺麗にしたり」

「いや、俺は何もしてないよ」

「でも、アキトさんが近づくと、問題が解決するんです」


ユイは不思議そうな顔をしている。セシルも頷いた。


「やはり、アキト様は神に愛されています」

「神とか、そんな大げさな……」

「大げさじゃないです」


とセシルは真剣な顔をした。


「これは、奇跡です」

「師匠、もう諦めろよ」


とリズが笑った。


「お前は特別なんだ。認めろ」

「特別じゃないって……」


三人は笑っている。俺は何も言えなくなって、空を見上げた。星が綺麗だ。いつもの星空。変わらない、静かな夜。


「まあ、何はともあれ、問題が解決してよかった」


と俺は言った。


「そうですね」


とユイが微笑んだ。


「はい」


とセシルが頷いた。


「だな」


とリズが笑った。


四人で、しばらく星を見ていた。静かで、穏やかな時間。こういう時間が、一番好きだ。


同じ頃、王都では商人グラドが酒場で語っていた。周りには人だかりができている。みんな、グラドの話に聞き入っている。


「本当なのか、その話は」


「本当だとも!」


とグラドは力強く言った。


「私はこの目で見たんだ。アキト殿が、魔物を懐柔するところを」

「魔物を……懐柔?」

「ああ。戦わずに、ただ手を置いただけで、魔物が大人しくなった」


グラドは酒を飲んで、続けた。


「それだけじゃない。雨を降らせたり、病気を治したり、村全体を豊かにしたり」

「すごい……」

「聖人どころじゃない。神の化身だ」


周りの人たちが、ざわめいている。グラドの話は、少しずつ誇張されていく。でも、基本は真実だ。アキトは、本当にそういうことをしている。


「その方に、会ってみたいものだな」

「私もだ」

「王都に来てくれないだろうか」


人々の興味は、どんどん高まっていく。グラドは満足そうに笑った。アキト殿のことを、もっと多くの人に知ってもらいたい。それが、彼への恩返しだ。


王宮では、レオナルドが国王に報告していた。


「アキト殿は、王都への招聘を辞退されました」

「辞退?」


国王は驚いた顔をした。


「なぜだ」

「彼は、村にいたいと。村の人々と一緒に暮らしたいと、そう仰いました」

「……なるほど」


国王は考え込んだ。それから、笑った。


「面白い男だな」

「はい。ですが、年に一度の報告には来ていただけることになりました」

「それでいい」


国王は頷いた。


「無理に連れてくる必要はない。彼は、彼のままでいい」

「ありがとうございます」

「それより、レオナルド」

「はい」

「彼に会って、どう思った」


レオナルドは少し考えてから、答えた。


「普通の方でした」

「普通?」

「はい。でも、だからこそ特別なのだと思いました」


レオナルドは微笑んだ。


「彼は、本当に大切なものが何か、分かっている。それは、誰にでもできることではありません」

「そうか」


国王は満足そうに頷いた。


「では、来年を楽しみにしていよう」


貴族の間でも、アキトの噂は広がっていた。サロンでは、彼の話題で持ちきりだ。


「聞きましたか?辺境に、聖人がいるそうですよ」

「ええ。エドワード様が訪ねたと聞きました」

「どんな方だったのでしょう」


エドワードは、みんなに囲まれて話をしている。


「素晴らしい方でした」


とエドワードは目を輝かせた。


「一緒に昼寝をしたのですが、あれほど心が休まったことはありません」

「昼寝……ですか」

「ええ。彼と一緒にいると、すべてがどうでもよくなる。いい意味で」


エドワードは微笑んだ。


「私は、彼に救われました」


貴族たちは、興味津々だ。みんな、アキトに会ってみたいと思っている。


教会でも、アキトの話題が出ている。セシルからの報告を受けて、教会長は考え込んでいた。


「セシルは、彼を神の化身だと言っている」

「はい」

「しかし、本人は否定している」

「そのようです」


教会長は笑った。


「面白い。神に選ばれながら、それを認めない」

「どういたしましょうか」

「何もしなくていい」


教会長は言った。


「彼は、彼のままでいい。それが、神の意志だ」


こうして、アキトの伝説は広がっていった。王都で、貴族の間で、教会で。みんなが、彼のことを語る。「聖なる男」「神の化身」「奇跡の人」。色々な呼び方で。


でも、リーヴ村は変わらなかった。相変わらず、静かで穏やかな村だ。畑は緑で、温泉は湯気を上げ、人々は笑顔で暮らしている。そして、アキトも変わらない。朝は畑仕事をして、昼は温泉に入って、午後は昼寝をする。夕方には誰かと過ごして、夜は星を見る。


その夜、アキトは一人で小屋の前に座っていた。星が綺麗だ。最近、色々なことがあった。魔喰花、貴族の訪問、干ばつ、勅令。でも、全部乗り越えた。みんながいてくれたから。


「明日も、いつも通りにしよう」


呟く。特別なことは何もしない。ただ、いつも通りに過ごす。それが、一番いい。


窓の外から、三人の笑い声が聞こえてくる。楽しそうだ。俺も、そこに行こうかな。そう思って立ち上がった時、空に流れ星が流れた。


「あ」


思わず声が出た。流れ星。久しぶりに見た。


願い事、か。何を願おう。考えて、すぐに答えが出た。


「この日常が、ずっと続きますように」


小さく呟いた。それだけでいい。この村で、みんなと一緒に。ずっと、こうしていられますように。


流れ星は消えていった。でも、願いは心に残った。きっと、叶う。そう信じている。


ユイの家に向かう。扉を開けると、三人が振り返った。


「アキトさん!」

「来てくれたんですね」

「師匠、遅いぞ」


三人は笑顔で迎えてくれた。俺も笑顔で、中に入る。温かいお茶の香りがする。


「今日も、色々ありましたね」とユイが言った。

「うん。でも、いい一日だった」

「明日も、いい日になりますように」とセシルが微笑んだ。

「なるよ、きっと」とリズが笑った。


四人で、お茶を飲む。話をする。笑い合う。こんな時間が、一番幸せだ。


外では、星が輝いている。静かで、穏やかな夜。


村は眠りにつく。明日も、きっといい日になる。


そう信じながら、夜は更けていった。


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