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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第5章【Ⅴ:静かな事件】

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第24話「勅令という名の騒動」

雨が降ってから五日後の朝、村に豪華な馬車が到着した。エドワードの時より、さらに立派な馬車だ。金の装飾が施されていて、王家の紋章が描かれている。護衛の騎士も十人以上いる。ただごとじゃない雰囲気だ。


俺は畑仕事をしていたけど、村の入口が騒がしくなったので様子を見に行った。馬車の前には村長が立っていて、困った顔をしている。馬車から降りてきたのは、五十代くらいの男性だった。立派な服を着ていて、威厳がある。王都の高官、という感じだ。


「村長殿、お久しぶりです」


と男性が言った。


「これは、レオナルド様。ようこそおいでくださいました」


村長は丁寧に頭を下げた。レオナルド、という名前に聞き覚えはないけど、村長が敬語を使うということは、かなり偉い人なんだろう。俺は少し離れたところから見ていたけど、レオナルドの視線がこっちに向いた。


「あの方が、アキト殿ですか」

「はい。アキトです」


村長が俺を呼んだ。仕方なく前に出て、頭を下げる。


「初めまして。アキトです」

「初めまして。私はレオナルドと申します。王都の宰相を務めております」


宰相。つまり、王様の次に偉い人だ。そんな人が、なんでこんな辺境の村に来たんだろう。嫌な予感がした。


「お話があります。村長殿の家で、よろしいでしょうか」

「もちろんです。どうぞこちらへ」


村長の家に案内された。レオナルドと村長、それに俺の三人が居間に座る。レオナルドは護衛に何か指示を出してから、俺たちに向き直った。


「単刀直入に申し上げます」


とレオナルドは言った。


「アキト殿、王都にお越しいただけないでしょうか」

「王都?」

「はい。国王陛下が、ぜひお会いしたいと仰っておられます」


レオナルドは懐から書類を取り出した。金の封蝋が施されている。


「これは、正式な招聘状です」

「招聘状……」


村長が横から覗き込む。


「これは……勅令ですね」

「はい。国王陛下直々のご命令です」


レオナルドは俺を見た。


「アキト殿、あなたの功績は王都でも有名です。村を豊かにし、奇跡を起こし、人々を救う。その功績を讃え、国王陛下は直接お会いしたいと願っておられます」

「……」


俺は黙っていた。王都に行く。国王に会う。そんなの、考えたこともない。というか、行きたくない。


「恐縮ですが、お断りします」


俺の言葉に、レオナルドは眉をひそめた。


「お断り、ですか」

「はい。俺は、ここにいたいんです」

「しかし、これは勅令です。国王陛下のご命令を拒むことは……」

「それでも、行きたくないです」


俺は真剣な顔をした。


「俺は、この村が好きです。ここで、みんなと一緒に暮らしたい」


レオナルドは困った顔をした。村長も、どうしたものかと考え込んでいる。その時、扉が開いて、ユイが飛び込んできた。


「アキトさんを、行かせません!」

「ユイさん?」

「私も反対です」


とセシルが続けて入ってきた。


「師匠は、俺たちのものだ」


とリズも来た。


三人とも、真剣な顔だ。レオナルドを睨んでいる。レオナルドは驚いた顔をした。


「あの、皆さん……」

「アキトさんは、この村に必要な人なんです」


とユイが言った。


「連れて行かないでください」

「私たちが、アキト様をお守りします」


とセシルが続けた。


「王都なんかに、行かせるかよ」


とリズが言った。


三人の迫力に、レオナルドは少したじろいだ。でも、すぐに冷静さを取り戻して、言った。


「お気持ちは分かります。しかし、これは国王陛下のご命令です。個人の感情で拒否することは……」

「でも、アキトさんが行きたくないって言ってます」


とユイが反論した。


「それに、アキト様はここで多くの人を救っておられます」


とセシルが言った。


「王都に行けば、この村の人々は困ります」

「師匠がいないと、俺たちはダメなんだ」


とリズが言った。


レオナルドは困った顔で、村長を見た。村長も困っている。俺は、三人を見た。みんな、俺のために怒ってくれている。俺のために、戦ってくれている。胸が熱くなった。


「レオナルド様」と俺は言った。

「はい」

「俺は、王都には行けません。でも、年に一度、報告に行くことならできます」

「年に一度?」

「はい。村の様子とか、色々報告します。それじゃ、ダメですか?」


レオナルドは考え込んだ。しばらく黙っていたけど、やがて頷いた。


「……分かりました。その案で、国王陛下にお伝えします」

「本当ですか?」

「ええ。ただし、必ず年に一度は来ていただく。約束してください」

「約束します」


レオナルドは安堵のため息をついた。


「では、その旨を書面にまとめます。村長殿、お手伝いいただけますか」

「もちろんです」


村長とレオナルドは書類を作り始めた。俺は三人と一緒に、外に出た。


外に出ると、ユイが俺の腕を掴んだ。


「アキトさん、本当に行かなくていいんですか?」

「うん。ここにいたいから」

「……よかった」


ユイは涙ぐんでいた。


「アキトさんがいなくなったら、私……」

「大丈夫。どこにも行かないよ」


俺はユイの頭に手を置いた。セシルも、ホッとした顔をしている。


「よかったです。アキト様がいなくなったら、私たちは……」

「大丈夫。ここにいるから」


リズは少し照れたように笑った。


「師匠、俺たち、ちょっと出しゃばりすぎたかな」

「いや、嬉しかったよ。ありがとう」


三人は笑顔になった。それから、小屋に戻って、お茶を飲むことにした。


小屋の前で、四人でお茶を飲む。ユイが淹れてくれたお茶は、温かくて優しい味がする。


「でも、年に一度は王都に行くんですね」


とユイが言った。


「うん。まあ、それくらいなら」

「私も一緒に行きます」


とセシルが言った。


「俺もだ」


とリズが続けた。


「私も行きます」


とユイが頷いた。


「え、みんなで?」

「当然です」


とセシルが言った。


「アキト様を一人にはできません」

「師匠が、変なことに巻き込まれないように見張る」


とリズが笑った。


「それに、王都も見てみたいです」


とユイが微笑んだ。


三人とも、本気みたいだ。俺は苦笑した。


「じゃあ、みんなで行こうか」

「はい!」


と三人が同時に答えた。


しばらくして、村長の家から出てきたレオナルドが、こっちに向かってきた。書類を持っている。


「アキト殿、書類ができました」

「ありがとうございます」


書類には、年に一度の報告義務が書かれている。俺はそれにサインした。


「では、これを国王陛下にお渡しします」


とレオナルドは言った。


「来年、お待ちしております」

「はい」


レオナルドは馬車に乗り込もうとして、振り返った。


「アキト殿」

「はい」

「あなたは、本当に変わった方ですね」

「変わってますか?」

「ええ。国王陛下のお召しを断る方など、初めてです」


レオナルドは笑った。


「でも、それがあなたの魅力なのでしょう」

「魅力なんて……」

「いいえ、あります」


レオナルドは真剣な顔をした。


「あなたは、本当に大切なものが何か、分かっている。それは、素晴らしいことです」

「……」

「では、また来年」


レオナルドは馬車に乗り込んで、去っていった。豪華な馬車が、村の入口を出ていく。村は、また静かになった。


「やれやれ」


と俺は呟いた。


「疲れましたね」


とユイが言った。


「ああ。でも、なんとかなった」

「師匠、よく頑張ったな」


とリズが笑った。


「いえ、みんなのおかげです」


と俺は言った。


「みんながいてくれたから、断れた」

「当然です」


とセシルが微笑んだ。


四人で笑い合った。それから、また小屋の前に座る。風が吹いて、心地いい。静かだ。平和だ。


「でも、来年は王都か」


と俺は呟いた。


「どんなところなんでしょうね」


とユイが言った。


「楽しみだな」


とリズが笑った。


「はい。でも、すぐ帰ってきましょうね」


とセシルが言った。


「もちろん。ここが一番いいから」


三人は頷いた。そうだ、ここが一番いい。この村が、この日常が、一番大切だ。


その夜、一人で星を見ていた。今日は色々あった。勅令が来て、断って、妥協して。でも、結果的にはよかった。ここにいられる。みんなといられる。


「めんどくさいけど、まあいいか」


呟く。年に一度の報告。めんどくさいけど、それくらいならできる。それで、ここにいられるなら。


窓の外から、三人の笑い声が聞こえてくる。ユイの家で、お茶を飲んでいるみたいだ。楽しそうだ。


「よかった」


そう思いながら、ベッドに横になった。今日も、いい一日だった。明日も、きっといい日になる。


目を閉じる。すぐに、眠りが訪れた。


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