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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第5章【Ⅴ:静かな事件】

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第21話「静かな日常の終わり」

魔物を懐柔してから一週間が経った頃、村に奇妙な静けさが訪れていた。いつもなら朝から巡礼者で賑わっているはずの広場が、妙に人が少ない。村長も首を傾げている様子だったが、俺はむしろホッとしていた。静かな方がいい。ゆっくり過ごせる。


朝、いつものように畑仕事を終えて小屋に戻ると、ユイが心配そうな顔で待っていた。籠を持っているけど、いつもの笑顔がない。


「おはようございます、アキトさん。あの、少しお話しいいですか?」

「おはよう。どうしたの?何か心配事?」

「はい……実は、村人の何人かが体調を崩しているんです」


とユイは眉をひそめた。


「熱が出て、だるそうにしていて。最初は一人だけだったんですけど、今朝になって三人に増えて」

「病気かな」

「かもしれません。でも、原因が分からなくて」


ユイの心配そうな顔を見て、俺も少し不安になった。病気は厄介だ。広がれば、村全体が大変なことになる。村長のところに行って、話を聞いてみることにした。


村長の家に着くと、中では医者のマルクが村長と話し込んでいた。二人とも深刻な顔をしている。俺が入ると、村長が顔を上げた。


「アキト、ちょうどよかった」

「体調不良の人が出てるって聞きました」

「ああ。今朝の時点で五人になった」


と村長は疲れた顔をした。


「マルクに診てもらったが、原因が分からないらしい」


医者のマルクは腕を組んで考え込んでいた。


「症状は熱と倦怠感。魔力の流れも乱れているようだが、毒でも病気でもない。今まで見たことがない症状だ」

「魔力の流れが乱れてる?」

「ああ。まるで、何かに吸い取られているような感じだ」


マルクの言葉に、俺は嫌な予感がした。魔力を吸い取る、か。何かが、村の魔力を奪っているのかもしれない。


「村の畑や温泉は、異常ありませんか?」


と俺は聞いた。


「今のところは大丈夫だ」


と村長が答えた。


「でも、このままでは心配だ」


その時、扉が勢いよく開いた。セシルとリズが駆け込んできた。二人とも息を切らしている。


「アキト様、大変です!」


とセシルが叫んだ。


「師匠、花畑が!」


とリズが続けた。


「花畑?」

「枯れ始めてます。急に」


セシルの言葉に、全員が顔を見合わせた。花畑が枯れる?あの、いつも綺麗に咲いていた花畑が?嫌な予感が確信に変わった。何かが起きている。村に、何かが起きている。


すぐに花畑に向かった。村長、マルク、ユイ、セシル、リズ、そして俺。六人で駆けつけると、本当に花が枯れ始めていた。昨日まで咲き誇っていた白い花が、茶色く変色している。まるで、生気を吸い取られたように。


「これは……」


と村長が呟いた。


「魔力が枯渇している」


とマルクが言った。


「土地の魔力が、急速に失われている」

「なんでこんなことに」


俺は花に触れた。冷たい。生命の温かみがない。まるで、死んでいるみたいだ。


「アキト様、これは一体……」


とセシルが不安そうに聞いた。


「分からない。でも、何かが村の魔力を奪ってる」


その時、村の入口の方から悲鳴が聞こえた。女性の声だ。みんなで駆けつけると、村人が一人倒れていた。気を失っている。顔色が悪い。まるで、生気が抜けたような顔だ。


「また一人……」


と村長が呟いた。


マルクがすぐに診察する。脈を取って、目を見て、それから首を横に振った。


「同じ症状だ。魔力が奪われている」

「どうすればいいんだ」


と村長が俺を見た。


「アキト、お前なら何か分かるか?」


俺は考えた。魔力を奪う何か。村全体から、じわじわと魔力を吸い取っている。それは、どこにいる?何をしている?


「森を調べてみます」


と俺は言った。


「魔力を奪ってるものが、森に隠れてるかもしれない」

「危険じゃないのか?」

「分かりません。でも、このままじゃもっと危険です」


村長は少し考えてから、頷いた。


「分かった。だが、無理はするな」

「俺も行く」


とリズが言った。


「私もです」


とセシルが続けた。


「私も一緒に行きます」


とユイが頷いた。


三人とも、譲らない。俺は少し迷ったけど、結局許可した。一人より、四人の方が安心だ。


「分かった。じゃあ、行こう」


四人で森に向かった。昼過ぎの森は薄暗くて、いつもより静かだった。鳥の声も聞こえない。虫の音もしない。まるで、森全体が息を潜めているみたいだ。


「気味悪いな」


とリズが呟いた。


「魔力の流れが、乱れています」


とセシルが言った。


「まるで、何かに引っ張られているような……」


ユイは俺の袖を掴んでいる。怖いんだろう。俺も正直、怖い。でも、引き返すわけにはいかない。


森の奥に進むと、開けた場所に出た。そこに、見たことのない植物が生えていた。大きな花だ。黒い花びらで、真ん中が赤く光っている。まるで、目玉みたいだ。不気味だ。


「これは……」


とセシルが息を飲んだ。


「魔喰花だ」


とリズが言った。


「魔力を吸い取る植物。冒険者の時、一度だけ見たことがある」

「魔力を吸い取る?」

「ああ。周囲の魔力を全部吸い取って、枯らす。放っておけば、森全体が死ぬ」


リズの言葉に、全員が顔を見合わせた。これが原因か。この花が、村の魔力を奪っていたのか。


「どうすればいいの?」


とユイが聞いた。


「根を断つしかない。でも、近づくと魔力を吸い取られる」


とリズが言った。


「普通の人間なら、近づいただけで倒れる」

「じゃあ、どうやって……」


その時、花が動いた。まるで、俺たちに気づいたように。黒い花びらが揺れて、赤い中心が俺たちを見つめている。


「やばい、気づかれた!」


とリズが叫んだ。


花から、黒い霧が噴き出した。魔力を吸い取る霧だ。あれに触れたら、倒れる。みんな後ろに下がる。でも、霧は追いかけてくる。


「アキト様、危ない!」


とセシルが叫んだ。


俺は咄嗟に手を前に突き出した。何かしなきゃ。でも、何ができる?俺には魔法も使えない。戦う力もない。でも、


「やめろ!」


叫んだ。ただ、それだけ。でも、その瞬間、黒い霧が止まった。まるで、目に見えない壁にぶつかったように。霧は俺たちの手前で停止して、それから消えていった。


「え……」


とユイが呆然としている。


「師匠、今の……」


とリズが驚いた顔をしている。


「奇跡です」


とセシルが呟いた。


俺も驚いていた。何が起きたんだ?俺、何かしたのか?でも、考えている暇はない。花が、また動き始めた。今度はもっと大きな霧を出そうとしている。


「もう一度!」


とリズが叫んだ。


俺は深呼吸した。落ち着け。さっきと同じように。それから、花に向かって手を伸ばした。


「頼むから、静かにしてくれ。村を、みんなを傷つけないでくれ」


その瞬間、花が震えた。黒い霧が消えていく。花びらが閉じていく。まるで、眠りにつくように。やがて、花は完全に動かなくなった。赤い光も消えた。


「……終わった?」


とユイが小声で聞いた。


「みたいだね」


四人で花に近づく。もう、魔力を吸い取る気配はない。ただの植物だ。でも、念のため根を掘り起こして、村から遠くに運ぶことにした。二度と村を脅かさないように。


作業を終えて村に戻ると、すでに夕方になっていた。村長に報告すると、安堵の顔をされた。


「よくやってくれた、アキト」

「いえ、みんなのおかげです」

「それにしても、お前はまた戦わずに解決したな」と村長は笑った。「お前らしい」


倒れていた村人たちも、少しずつ回復し始めていた。顔色が戻ってきている。花畑も、また咲き始めるだろう。村は、また平和になる。


その夜、四人で小屋の前に座っていた。疲れたけど、無事に終わって良かった。星が綺麗だ。いつもの星空。変わらない、静かな夜。


「今日は、大変でしたね」


とユイが言った。


「ああ。でも、師匠がいてくれて助かった」


とリズが笑った。


「アキト様の力は、やはり特別です」


とセシルが言った。


「力なんてないよ。ただ、頼んだだけ」

「でも、花は止まりました」


とセシルが続けた。


「それは、アキト様の力です」


俺は何も言えなかった。本当に、何が起きたのか分からない。ただ、花に頼んだら、止まった。それだけだ。


「まあ、何はともあれ、村は無事だ」


とリズが言った。


「それでいいだろ」

「そうですね」


とユイが微笑んだ。


四人で星を見上げる。静かで、穏やかな時間。でも、どこか不安も残っている。また、何か起きるんじゃないか。この平和は、いつまで続くんだろう。


でも、今はみんながいる。それだけで、十分だ。明日のことは、明日考えればいい。


そう思いながら、俺は星を見続けた。


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