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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第4章【Ⅳ:感情と絆の芽生え】

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第20話「日常という名の幸せ」

穏やかな日々が続いていた。

朝は畑仕事をして、昼は温泉に入って、午後は森で昼寝をする。夕方にはユイ、セシル、リズの誰かが来て、一緒に過ごす。夜は星を見ながら、一日を振り返る。そんな日常が、当たり前になっていた。

ある日の朝、村長が慌てた様子で小屋にやってきた。珍しいことだ。村長はいつも落ち着いているのに、今日は違う。

「アキト、大変だ」

「どうしたんですか?」

「村の東の森に、魔物が出たらしい」

「魔物?」

「ああ。巡礼者の一人が遭遇したそうだ。幸い怪我はなかったが、このままでは危険だ」

村長は困った顔をしている。「冒険者ギルドに依頼を出すつもりだが、到着まで数日かかる」

「そうですか」

「それまで、村人には森に近づかないように言ってあるが……」

村長は俺を見た。「アキト、お前なら何とかできないか?」

「え、俺?」

「ああ。お前がいれば、魔物も近づかないかもしれない」

村長の期待に満ちた目。断りにくい。でも、魔物と戦う方法なんて知らない。

「……行ってみます。でも、何ができるか分かりませんけど」

「それでいい。頼む」

村長は深々と頭を下げた。


準備をしていると、三人が集まってきた。

「師匠、俺も行く」とリズが言った。

「私もです」とセシルが続けた。

「私も一緒に行きます」とユイが頷いた。

三人とも、真剣な顔だ。心配してくれてるんだろう。

「でも、危ないかもしれないよ」

「だから行くんです」とユイが言った。「アキトさん一人じゃ、心配です」

「私も、アキト様をお守りします」とセシルが言った。

「師匠を守るのは、弟子の役目だ」とリズが笑った。

三人とも、譲らない。俺は困ったけど、結局許可した。

「分かった。でも、無理はしないで」

「はい」と三人が同時に答えた。


東の森に入った。木々が鬱蒼と茂っていて、薄暗い。鳥の声も聞こえない。静かすぎる。なんだか、不気味だ。

「師匠、気をつけろ」とリズが警戒している。彼女は木剣を持っている。

「魔物の気配を感じます」とセシルが小声で言った。

ユイは俺の後ろにいる。少し怯えているみたいだ。俺は彼女の手を握った。

「大丈夫。すぐに終わるから」

「……はい」

ユイは少し安心した顔をした。

森の奥に進むと、開けた場所に出た。そこに、魔物がいた。大きな狼みたいな生き物だ。黒い毛並みで、赤い目をしている。牙が鋭い。威嚇するように唸っている。

「あれが、魔物……」とユイが呟いた。

「デカいな」とリズが構えた。

「気をつけてください」とセシルが言った。

魔物は俺たちを見て、さらに唸る。敵意がある。襲ってくるつもりだ。どうしよう。戦い方なんて知らない。でも、逃げるわけにもいかない。

「……めんどくさいな」

ぼんやり呟いた。本当に、めんどくさい。こういうのは苦手だ。できれば、平和的に解決したい。

魔物が動いた。襲いかかってくる。リズが前に出た。

「師匠、下がってろ!」

でも、俺は動かなかった。ただ、魔物を見つめた。なんでこんなことしてるんだろう、この魔物は。何か理由があるはずだ。

魔物が俺の目の前まで来た。その時、魔物の目を見た。赤い目。でも、その奥に何かが見える。恐怖?痛み?

「……怪我してるのか?」

小声で呟いた。魔物の足を見ると、血が滲んでいる。罠にでもかかったのか。痛くて、怖くて、それで攻撃的になってるのかもしれない。

「大丈夫だよ」

俺はゆっくり手を伸ばした。魔物は唸る。でも、襲ってこない。俺は魔物の頭に手を置いた。温かい。心臓の音が聞こえる。速く打っている。怖がってるんだ。

「もう大丈夫。誰も傷つけないから」

魔物は静かになった。唸るのをやめた。それから、俺の手に頭を擦り付けてきた。まるで、犬みたいだ。

「え……」とユイが驚いた声を出した。

「マジかよ」とリズが呆然としている。

「奇跡です……」とセシルが呟いた。

魔物は俺の前に座った。もう、敵意はない。ただ、じっと俺を見ている。

「足、見せて」

魔物は素直に足を出した。傷を見ると、深い。罠の跡だ。痛そうだ。

「これ、治さないとな」

俺は持ってきた水で傷を洗った。それから、ユイが持ってきた布で包帯を巻く。魔物は大人しくしている。

「これで、少しは楽になるはずだよ」

魔物は俺の手を舐めた。お礼を言ってるみたいだ。

「もう、村には近づかないでね。人を襲わないで」

魔物は鳴いた。それから、森の奥に消えていった。もう、戻ってこないだろう。


四人で村に戻った。

村長に報告すると、驚いた顔をされた。

「魔物を……懐柔した?」

「懐柔っていうか、手当てしただけです」

「手当て……」

村長は呆れたような、感心したような顔をした。「お前という奴は……」

「怪我してたんです。痛くて怖くて、それで攻撃的になってただけで」

「そうか……」

村長は笑った。「お前らしいな。戦わずに解決するなんて」

「戦う理由がなかったので」

「そうだな」

村長は満足そうに頷いた。「ありがとう、アキト。助かった」


その夜、四人で丘に登った。

村が見下ろせる場所だ。星空が綺麗だ。満天の星。天の川がくっきり見える。四人で並んで座って、星を見上げる。

「今日は、すごかったですね」とユイが言った。

「ああ」とリズが頷いた。「まさか、魔物を懐柔するとは」

「アキト様は、やはり特別な方です」とセシルが言った。

「特別じゃないよ。ただ、怪我してるのが分かっただけ」

「でも、誰もそれに気づきませんでした」とユイが言った。「アキトさんだけです」

「そうだな」とリズが続けた。「師匠は、やっぱりすごい」

「私も、そう思います」とセシルが微笑んだ。

三人に褒められて、少し照れくさい。でも、嬉しい。

「みんながいてくれたから、できたんだよ」

「そうでしょうか?」とユイが首を傾げた。

「うん。一人だったら、怖くて逃げてたかもしれない」

「師匠が?」とリズが笑った。

「本当だよ。でも、みんながいてくれたから、落ち着いて対応できた」

三人は顔を見合わせた。それから、笑った。

「なら、お互い様ですね」とユイが言った。

「はい」とセシルが頷いた。

「だな」とリズが笑った。

しばらく、黙って星を見ていた。静かで、穏やかな時間。風が吹いて、心地いい。

「なあ、みんな」と俺は言った。

「はい」と三人が答えた。

「夢とか、あるの?」

「夢、ですか?」とユイが聞き返した。

「うん。これから、どうしたいとか」

三人は少し考えた。それから、ユイが口を開いた。

「私は、この村で料理を作り続けたいです」

「料理?」

「はい。みんなに、美味しいって言ってもらいたい」

ユイは微笑んだ。「そして、アキトさんと一緒に、ずっとここで暮らしたいです」

「……うん」

次に、セシルが言った。

「私は、この村に来て、本当の幸せを知りました」

「幸せ?」

「はい。アキト様と出会って、普通の日常が、こんなに幸せだと知りました」

セシルは俺を見た。「だから、これからもアキト様の側にいたいです。お役に立ちたいです」

「ありがとう、セシルさん」

最後に、リズが言った。

「俺は、師匠みたいに生きたい」

「俺みたいに?」

「ああ。強くなくても、自分らしく生きる」

リズは笑った。「そして、いつか誰かに、俺も同じことを教えられるようになりたい」

「……そっか」

三人とも、それぞれの夢を持っている。どれも、温かい夢だ。

「アキトさんは?」とユイが聞いた。

「俺?」

「はい。アキトさんの夢は?」

俺は少し考えた。夢、か。特に考えたことがなかった。でも、今なら分かる。

「この日常が、ずっと続けばいい」

「日常?」

「うん。みんなと一緒に、美味しいもの食べて、気持ちよく寝て、笑い合う」

俺は三人を見た。「そんな日々が、ずっと続けばいいなって思う」

「……それだけですか?」とセシルが聞いた。

「それだけ。でも、それが一番幸せだから」

三人は黙った。それから、笑顔になった。

「そうですね」とユイが言った。

「はい」とセシルが頷いた。

「だな」とリズが笑った。

四人で、また星を見上げた。静かで、温かい時間。こういう時間が、ずっと続けばいい。本当に、そう思った。


その夜、一人で小屋に戻った。

今日は色々あった。魔物が出て、手当てをして、みんなで星を見た。充実した一日だった。

ベッドに横になって、天井を見る。三人の言葉を思い出す。ユイの夢、セシルの願い、リズの目標。みんな、それぞれの想いを持っている。

「俺の夢は、日常が続くこと、か」

呟く。シンプルだ。でも、それが一番大切な気がする。特別なことなんていらない。ただ、みんなと一緒に過ごせれば、それでいい。

窓の外を見る。星が輝いている。その向こう、三人もそれぞれの部屋で星を見ているのかもしれない。

「この日常が、ずっと続きますように」

小さく呟いた。願いを込めて。

目を閉じる。心が温かい。幸せだ。みんながいてくれる。それだけで、十分だ。

やがて、眠りが訪れた。静かで、深い眠り。明日も、きっといい日になる。


その頃、三人もそれぞれの部屋で星を見ていた。

ユイは窓の外を見ながら、今日のことを思い出していた。アキトが魔物を懐柔した姿。優しく、穏やかで。そんなアキトが、好きだ。

「ずっと、一緒にいたい」

小さく呟いた。これからも、アキトの側にいたい。一緒に料理を作って、一緒に食べて、一緒に笑いたい。


セシルは手を合わせて、祈っていた。でも、祈っているのは神にではなかった。

「アキト様……」

彼のことを想う。一緒に星を見た。夢を語り合った。幸せだった。これからも、ずっと側にいたい。

「お役に立ちたい」

小さく呟いた。アキトのために、何かしたい。それが、自分の幸せだから。


リズはベッドに横になって、今日のことを考えていた。師匠は、やっぱりすごい。戦わずに解決した。強くなくても、生きていける。それを、また教えてもらった。

「ずっと、ついていく」

小さく呟いた。師匠の生き方を学びたい。そして、いつか自分も、誰かに教えられるようになりたい。


四人は、それぞれの想いを抱きながら、夜を過ごした。

明日も、一緒にいられる。それが幸せだ。

この日常が、ずっと続きますように。

四人とも、同じことを願っていた。


でも、世界は動き始めていた。

遠く離れた王都では、アキトの噂がさらに広まっていた。「魔物を懐柔した聖人」として。教会は、さらなる調査を検討している。貴族たちも、興味を示し始めている。

静かな日常は、いつまで続くのか。

それは、まだ誰も知らない。

でも、今この瞬間、四人は幸せだった。

それだけは、確かなことだった。


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