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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第1章【欲求のままに生きる】

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第2話「腹が減ったから畑を作る」

村での生活が始まって三日目。

朝、村長が小屋にやってきた。

「アキト、畑仕事を手伝ってくれ」

「はい」

鍬を渡される。

重い。でも、持てないことはない。

村長について、畑に向かった。


村の畑は、村の東側に広がっていた。

でも、広いとは言えない。

家族ごとに小さな区画が割り当てられてる感じ。

土は乾いてる。

色も茶色っぽくて、栄養がなさそうだ。

「ここを耕してくれ」

村長が指さしたのは、端の方の区画。

雑草が生えてる。土も固そうだ。

「分かりました」

鍬を振り下ろす。

ガツン、と固い音。

土が硬い。

何度も何度も鍬を打ち込む。

汗が出る。

日差しが強い。

でも、不思議と嫌じゃない。

体を動かすのは、悪くない。


昼になった。

村長が水を持ってきてくれた。

「休め」

「ありがとうございます」

水を飲む。

美味い。冷たい。

村長は俺の作業を見て、頷いた。

「なかなかやるな」

「いえ、まだまだです」

「謙遜するな。お前は働き者だ」

村長は腰を下ろした。

俺も隣に座る。

畑を見渡す。

他の村人も作業してる。

鍬を振るう音。水を運ぶ音。

みんな、黙々と働いてる。

「この村、食べ物足りてるんですか?」

「ギリギリだな」

村長は苦笑した。

「土が痩せてる。雨も少ない。収穫量は年々減ってる」

「そうなんですか」

「ああ。だから、お前みたいな働き手は貴重だ」

村長は空を見上げた。

「昔はもっと豊かだったんだがな。この土地も、もっと緑が多かった」

「何があったんですか?」

「分からん。ただ、少しずつ枯れていった。魔力が薄れたのかもしれん」

魔力。

この世界には、魔法があるんだっけ。

「魔力って、土地にも影響するんですか?」

「ああ。土地に魔力が満ちてれば、植物も育つ。逆に枯れれば、土地も死ぬ」

「なるほど」

「まあ、仕方ない。ここで生きていくしかないからな」

村長は立ち上がった。

「さあ、午後も頑張ろう」

「はい」


夕方まで作業した。

区画の半分ほど、耕すことができた。

体中が痛い。

でも、達成感がある。

「今日はここまでだ」

村長が言った。

「よくやった。明日も頼むぞ」

「はい」

小屋に戻る。

井戸で水を浴びた。

冷たい。でも気持ちいい。

汗が流れる。

体が軽くなる。

小屋に戻って、村長が置いていってくれたパンを食べる。

今日のは少し大きい。チーズと干し肉も。

齧る。

硬い。でも、腹が満たされる。

「……もっと美味いもん、食いたいな」

ふと、思った。

パンも肉も悪くない。

でも、もっと野菜が欲しい。

果物も。

新鮮な、みずみずしいやつ。

「そういえば、畑で野菜作ってるのか?」

考える。

畑では穀物を育ててるみたいだった。

野菜は、あまり見なかった。

「……自分で作るか」

そう思った。


翌日。

村長に聞いてみた。

「野菜、育てたいんですけど」

「野菜?」

「はい。自分で食べたいので」

村長は少し驚いた顔をした。

「野菜か。育てるのは難しいぞ。この土地じゃ」

「でも、試してみたいです」

「ふむ」

村長は考え込んだ。

「まあ、いいだろう。種ならある。好きに使え」

「ありがとうございます」

村長は倉庫から、小さな袋をいくつか持ってきた。

「これは人参。これは玉ねぎ。こっちはキャベツだ」

「助かります」

「ただし、期待するなよ。この土地で野菜はほとんど育たん」

「大丈夫です。ダメ元でやってみます」

村長は笑った。

「お前、本当に変わってるな」


その日の午後。

俺は小屋の近くに、自分用の畑を作り始めた。

小さな区画。

でも、自分一人が食べる分には十分だ。

鍬で土を耕す。

雑草を抜く。

石を取り除く。

汗が滴る。

でも、楽しい。

自分のために作ってる。

それが、なんだか嬉しい。

夕方までに、なんとか畑らしくなった。

種を蒔く。

人参、玉ねぎ、キャベツ。

適当に並べて、土をかぶせる。

井戸から水を運んで、たっぷりかける。

「これでいいだろ」

手を叩いて、土を払う。

あとは育つのを待つだけ。

数週間かかるかもしれない。

でも、楽しみだ。


翌朝。

小屋を出て、畑を見に行った。

「……は?」

固まる。

畑が、緑だった。

昨日蒔いたばかりの種から、芽が出てる。

しかも、ただの芽じゃない。

すでに葉っぱが広がってる。

人参は、地面から葉っぱが伸びてる。

玉ねぎも、緑の茎が立ってる。

キャベツに至っては、もう玉になりかけてる。

「……嘘だろ」

一晩で。

これ、一晩で育ったのか?

「おい、アキト!」

後ろから声がした。

振り返ると、村長が走ってきた。

息を切らしてる。

「お前、これ……」

「あの、俺も意味が分からないんですけど」

「一晩で育つなんて……」

村長は畑を見て、それから俺を見た。

「やはり、お前は……」

「違います。俺は何もしてないです」

「種を蒔いて、水をやっただけか?」

「はい」

「それだけで、こんなことになるか?」

村長は頭を抱えた。

「信じられん。だが、現実だ」


その日、また村中が騒ぎになった。

「奇跡だ!」

「野菜が一晩で育った!」

「あの方のおかげだ!」

村人が俺の畑に集まってくる。

キャベツを見て、驚いてる。

人参の葉っぱを触って、呟いてる。

「本物だ……」

「こんなに立派な野菜、見たことない」

「神様が、本当に遣わしてくれたんだ」

俺は小屋の中に逃げ込んだ。

窓から外を覗く。

村人がまだ集まってる。

めんどくさい。

ただ野菜を育てたかっただけなのに。

でも、腹は減る。

畑に戻って、キャベツを一つ収穫した。

村人が道を開ける。

「あ、収穫なさる……」

「すみません、ちょっと通ります」

キャベツを抱えて、小屋に戻る。

重い。でも、新鮮だ。

葉っぱが瑞々しい。


小屋の中で、キャベツを切った。

村長が貸してくれたナイフで、ざくざくと。

生で食べる。

シャクシャク、と音がする。

甘い。

水分たっぷりで、美味い。

こんなに美味いキャベツ、初めてかもしれない。

「……最高だな」

もう一切れ食べる。

うまい。

これが食いたかったんだ。

新鮮な野菜。

瑞々しくて、甘くて、美味いやつ。

満足した。

腹も満たされた。

「よし」

外を見る。

村人はまだ畑の周りにいる。

でも、もう気にしない。

俺は俺のペースで生きる。

美味いもん食って、気持ちよく寝る。

それだけだ。


その日の夕方。

村長が訪ねてきた。

「アキト」

「はい」

「村のみんなが、お前に感謝してる」

「いえ、俺は何も……」

「分かってる。お前は何もしてないと言うだろう」

村長は笑った。

「だが、結果は出てる。お前が来てから、村が変わり始めた」

「それは……」

「偶然かもしれん。奇跡かもしれん。理由は分からん」

村長は俺の肩に手を置いた。

「だが、お前がここにいてくれることが、村の希望になってる」

「重いですよ、それ」

「すまんな」

村長は苦笑した。

「無理に何かしてくれとは言わん。お前はお前のペースで生きてくれ」

「……ありがとうございます」

「ただ、一つだけ頼みがある」

「なんですか?」

「明日、畑の野菜を村のみんなに分けてやってくれんか」

「え?」

「お前一人じゃ、食いきれんだろう」

確かに。

キャベツだけでも十個以上ある。

人参も玉ねぎも、大量だ。

「……分かりました」

「ありがとう」

村長は去っていった。


翌日。

朝から村の広場で、野菜を配った。

村人が列を作ってる。

一人一人に、キャベツや人参を渡す。

「ありがとうございます!」

「神のご加護を!」

「あの、神じゃないんですけど……」

誰も聞いてない。

みんな、嬉しそうに野菜を受け取って帰っていく。

子どもたちは、人参を齧ってる。

「甘い!」

「美味しい!」

笑顔が溢れてる。

「……まあ、いいか」

喜んでくれてるなら、それでいい。

俺は何もしてないけど、結果的に良かったなら。

最後の一人に野菜を渡した時、村長が言った。

「アキト、本当にありがとう」

「いえ」

「これで、しばらくは食べ物に困らない」

村長は空を見上げた。

「久しぶりだ。こんなに希望を感じるのは」


その夜。

小屋に戻って、残った野菜でスープを作った。

人参と玉ねぎ、キャベツを煮込む。

塩を少し。

村長がくれた干し肉も入れる。

ぐつぐつと煮える音。

いい匂いがする。

スープを飲む。

温かい。

野菜の甘みが染み出てる。

肉の旨味も。

「……うまい」

一人で食べるスープ。

でも、幸せだ。

美味しく食べられる。

それだけで、十分だ。

外では、星が瞬いてる。

風が吹いて、木々が揺れる。

静かな夜。

俺は小屋の中で、スープを飲み干した。

「ごちそうさん」

満足した。

今日も、いい一日だった。

明日も、きっと。


村での生活は、少しずつ変わり始めていた。

畑は豊かになり、食卓は賑やかになった。

村人は笑顔を取り戻し、子どもたちは元気に走り回ってる。

でも、俺は変わらない。

ただ、美味しく食べて、気持ちよく寝る。

それだけだ。

これからも、きっと。


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