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辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第4章【Ⅳ:感情と絆の芽生え】

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第16話「弟子という名の闖入者」

村が聖地になってから二週間。巡礼者は増え続けていた。


朝起きると、村の広場はすでに人で賑わっている。祈りを捧げる人、畑を見学する人、温泉に入る人。みんな、それぞれの目的で村を訪れている。賑やかだ。活気がある。それは良いことだ。でも、俺には少し疲れる。


「おはようございます、アキト様」


とセシルが小屋の前で待っていた。最近、彼女は毎朝ここに来る。


「おはよう、セシルさん」

「今日は何をなさいますか?」

「うーん……」


考える。畑仕事は昨日やった。温泉の掃除も済んでる。特にやることはない。なら、


「森に行こうかな」

「森、ですか」

「うん。久しぶりに、静かな場所で昼寝したい」


セシルは少し寂しそうな顔をした。


「そうですか……」

「セシルさんは、村の手伝いをお願いできますか?巡礼者が増えてて、村長も忙しそうだから」

「分かりました」


とセシルは頷いた。


「アキト様のご命令なら」

「命令じゃないよ。お願い」

「……はい」


セシルは微笑んだ。それから、村の方に向かって行った。俺は小屋に戻って、準備をした。水筒とタオルだけ。身軽が一番だ。




森に入ると、空気が変わった。木々が太陽を遮って、涼しい。鳥の声が聞こえる。風が吹くと、葉っぱがさらさらと揺れる。この音が好きだ。心が落ち着く。


獣道を進む。村から離れるにつれて、人の声が遠くなる。静かになる。ここなら、誰にも邪魔されない。昼寝場所まで、あと少しだ。


木々の隙間から、開けた場所が見えてきた。俺の昼寝場所だ。草がふかふかで、風が心地いい。完璧な場所だ。そう思って、足を進めた。


そこに、人が倒れていた。


「え?」


立ち止まる。若い女性だ。草の上に横たわっている。動かない。もしかして、死んでる?いや、胸が動いてる。生きてる。でも、意識がない。


近づいて、よく見る。赤茶色の短い髪。日焼けした肌。服は動きやすそうな革の服だ。冒険者みたいな格好だ。でも、服が破れてる。血が滲んでいる。怪我をしてる。


「おい、大丈夫か?」


肩を揺する。反応がない。額に手を当てる。熱い。熱がある。これは、まずい。このまま放置したら、死ぬかもしれない。


「仕方ない……」


俺は女性を抱え上げた。軽い。痩せてる。栄養が足りてないのかもしれない。急いで村に戻らないと。




小屋に運び込んで、ベッドに寝かせた。それから、村長に報告しに行った。


「森で倒れてたのか?」


と村長は驚いた顔をした。


「はい。怪我もしてます」

「分かった。すぐに医者を呼ぼう」


村長は村の医者、老人のマルクを呼んでくれた。マルクは小屋に来て、女性を診察した。俺とユイ、それにセシルが見守る。


「外傷と、栄養失調だな」


とマルクは言った。


「魔物にでも襲われたんだろう。でも、致命傷じゃない。休めば治る」

「よかった……」

「傷の手当てをしておく。薬草も置いていくから、煎じて飲ませてやれ」

「分かりました」


マルクは手当てをして、薬草を置いて帰っていった。女性はまだ眠っている。苦しそうな顔をしている。


「アキトさん、看病しますか?」とユイが聞いた。

「うん。俺が運んできたし」

「じゃあ、私も手伝います」

「俺もです」


とセシルが言った。


二人とも、心配そうな顔をしている。優しいな、と思った。


「ありがとう。じゃあ、交代で見よう」




夕方、女性が目を覚ました。


俺は椅子に座って、本を読んでいた。村長が貸してくれた、薬草の本だ。どの薬草が何に効くか、勉強しようと思って。そしたら、ベッドから音がした。


「……ん」


振り返ると、女性が目を開けていた。ぼんやりとした目。それから、俺を見て、固まった。


「誰だ、あんた」


警戒した声だ。体を起こそうとして、痛みに顔を歪める。


「動かない方がいい。怪我してるから」

「怪我……?」


女性は自分の体を見た。包帯が巻かれている。それから、周りを見回す。


「ここは……」

「リーヴ村だよ。森で倒れてたから、運んできた」

「森で……」


女性は思い出そうとしている。でも、すぐに諦めた顔をした。


「……そうか。助けてくれたのか」

「うん」

「……ありがとう」


素直に礼を言う。でも、まだ警戒してる。目が、俺を値踏みしている。


「名前は?」


と俺は聞いた。


「リズだ」

「リズさんか。俺はアキト」

「アキト……」


リズは俺をじっと見た。


「あんた、なんでこんなところに」

「ここに住んでる」

「住んでる?森の中に?」

「いや、村に。森には昼寝しに行ってた」

「昼寝……」


リズは呆れた顔をした。「変人だな」


「よく言われる」


リズは小さく笑った。それから、また体を横にした。まだ辛そうだ。


「無理しないで。休んでて」

「……ああ」


リズは目を閉じた。でも、すぐには眠らない。何か考えている様子だ。


「なあ、アキト」

「なに?」

「ここ、聖地なんだって?」

「……らしいね」

「あんたが、その……奇跡を起こしてる人?」

「俺は何もしてないよ」


リズは目を開けて、俺を見た。「なんで、そんなこと言えるんだ」


「本当に何もしてないから」

「……変な奴だな」


リズはまた目を閉じた。今度は、すぐに寝息が聞こえてきた。疲れてるんだろう。ゆっくり休んでほしい。




翌朝、リズはベッドから起き上がっていた。


俺が小屋に入ると、窓の外を見ている。村の様子を眺めているみたいだ。


「起きて大丈夫?」

「ああ。だいぶ楽になった」


リズは振り返った。「あんたの村、賑やかだな」


「巡礼者が来るようになったから」

「聖地だもんな」


リズは複雑そうな顔をした。


「俺、そういうの苦手なんだ」

「俺も苦手」

「だろうな」


とリズは笑った。


「昼寝してるような奴だし」

「それは関係ないと思うけど」


二人で笑った。なんだか、リズとは話しやすい。警戒心は薄れてきたみたいだ。


ドアをノックする音がした。ユイとセシルだ。


「おはようございます、アキトさん」

「おはよう」

「あの方、起きてるんですか?」


とユイが心配そうに聞いた。


「うん。だいぶ良くなったみたい」


二人が入ってくると、リズは少し身構えた。でも、ユイが笑顔で挨拶した。


「初めまして。ユイです」

「セシルと申します」

「……リズだ」


リズは短く答えた。人見知りなのかもしれない。


「朝ごはん、持ってきました」


とユイが籠を置いた。


「食べられますか?」

「……ああ。ありがとう」


ユイがパンとスープを並べる。リズは少し躊躇してから、食べ始めた。ゆっくりと、一口ずつ。美味そうに食べてる。


「美味いな、これ」

「ありがとうございます」とユイは嬉しそうに笑った。


セシルはリズを観察している。不思議そうな顔だ。


「リズさんは、冒険者ですか?」

「……元、な」

「元?」

「もう、やめた」


リズは淡々と答える。それ以上は聞くなという雰囲気だ。セシルは察して、それ以上聞かなかった。




その日の午後、リズは小屋の外に出た。


まだ少しふらついてるけど、歩ける。俺は隣で様子を見ている。


「村、見て回りたい」


とリズが言った。


「大丈夫?」

「大丈夫。じっとしてるのは性に合わない」

「分かった。じゃあ、案内する」


村を歩く。リズは畑を見て、温泉を見て、花畑を見た。そのたびに、驚いた顔をする。


「本当に、豊かなんだな」

「そうだね」

「こんな村、見たことない」


リズは畑の野菜に触れた。


「これ、全部あんたが育てたのか?」

「うん」

「……信じられない」


リズは俺を見た。


「あんた、本当に何もしてないのか?」

「してない」

「嘘だろ」

「本当だよ」


リズは首を傾げた。


「分からない。でも、まあいいか」


それから、また歩き始めた。俺もついていく。


温泉に着くと、リズは湯気を見て目を細めた。


「温泉か。久しぶりに見た」

「入る?」

「……いいのか?」

「もちろん。ゆっくり浸かって、体を休めて」


リズは少し躊躇してから、頷いた。


「じゃあ、入らせてもらう」


夕方、リズは温泉から上がってきた。顔色が良くなっている。


「どうだった?」

「最高だった」


とリズは笑った。


「生き返った」

「よかった」


二人で小屋に戻る。夕焼けが綺麗だ。オレンジ色の空に、雲が浮かんでいる。


「なあ、アキト」


とリズが言った。


「なに?」

「あんた、俺を助けてくれて、看病してくれて、村まで案内してくれた」

「うん」

「なんで、そこまでしてくれるんだ?」

「え?」

「見ず知らずの俺に。普通、そこまでしないだろ」


リズは真剣な顔をしている。俺は少し考えてから、答えた。


「困ってたから」

「それだけ?」

「うん。困ってる人がいたら、助けるでしょ」

「……そんな簡単なことか?」

「簡単だよ」


リズは黙った。それから、小さく笑った。


「変な奴だな、本当に」

「またそれ?」

「でも、嫌いじゃない」


リズは空を見上げた。


「あんたみたいな奴、初めてだ」

「そう?」

「ああ。普通、見返りを求めるもんだ。でも、あんたは何も求めない」


リズは俺を見た。


「それに、強がらなくていいって雰囲気がある」

「強がる必要ないからね」

「……そうか」


リズは何か考え込んでいる。それから、急に立ち止まった。


「なあ、アキト」

「なに?」

「俺、ここに残ってもいいか?」

「え?」

「まだ体も完全じゃないし、行くあてもない。それに……」


リズは少し照れたように言った。


「あんたのこと、もっと知りたい」

「知りたい?」

「ああ。あんたがどうやって生きてるのか。何を考えてるのか」


リズは真剣な目をした。


「あんたみたいに、生きられたらって思うんだ」

「……いいよ。好きなだけいて」

「本当か?」

「うん。村長にも話しておく」

「ありがとう」


リズは嬉しそうに笑った。その笑顔が、夕焼けに照らされて綺麗だった。




その夜、小屋で一人になった。


リズは村長が用意してくれた部屋で休んでいる。俺はベッドに座って、今日一日のことを思い出していた。


森で倒れてたリズ。最初は警戒してた。でも、だんだん心を開いてくれた。そして、村に残ると言った。


「また、人が増えた……」


呟く。ユイ、セシル、そしてリズ。三人も、俺の周りに人がいる。前は一人が好きだった。でも、今は違う。みんながいてくれるのが、嬉しい。


窓の外を見る。星が出ている。いつもの星空。でも、今日は少し違って見える気がする。


「賑やかになるな」


そう呟いて、笑った。賑やかなのは苦手だけど、悪くない。みんながいてくれる。それが、幸せだ。


目を閉じる。明日から、リズも一緒だ。どんな日々になるんだろう。楽しみだ。


そう思いながら、眠りについた。


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