表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜 [日間99位!]  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)
第3章【Ⅲ:誤解の拡大】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/30

第11話「教会からの使者」

収穫祭から一週間が経った頃、村に変化が訪れた。

朝、いつものように畑仕事をしていると、村の入口が騒がしくなった。子どもたちが走り回り、村人たちが何かを囲んで話をしている。俺は人参の水やりを終えて、そっちの方を見た。見慣れない馬車が一台、村の広場に停まっている。立派な造りの馬車だ。装飾が施されていて、明らかに金持ちが乗るようなやつだ。

「何だ、あれ」とぼんやり呟いていると、ユイが駆け寄ってきた。少し息を切らしている。

「アキトさん、大変です」

「どうしたの?」

「教会から、人が来たみたいです」

「教会?」

「はい。王都の教会から、正式な使者が」

教会。この世界には、神を信仰する大きな組織があると聞いたことがある。でも、なんでそんなところから人が来るんだ?

「俺、関係ないよね?」

「……たぶん、関係あると思います」

ユイは申し訳なさそうな顔をした。「グラドさんが、王都で色々話したらしくて」

「あー……」

商人のグラドか。確かに、あの人は俺のことを「聖人」だとか言ってた。まさか、教会にまで話が届いたのか。めんどくさいことになった。


村長の家に呼ばれた。広場の馬車から降りてきたのは、三人の神官だった。全員、白と金の刺繍が入った立派な法衣を着ている。一人は初老の男性で、威厳がある顔つきだ。残りの二人は若い男性で、少し緊張した様子で周りを見回している。

「アキト、こちらが教会の使者だ」と村長が紹介してくれた。

「初めまして。私はルシウスと申します」と初老の神官が言った。声は低く、落ち着いている。「王都の大聖堂から参りました」

「あ、どうも。アキトです」

「お噂は、かねがね」

ルシウスは俺をじっと見た。値踏みするような目だ。なんだか居心地が悪い。

「商人のグラド殿から、詳しい話を聞きました」とルシウスは続けた。「この村に、不思議な力を持つ方がおられると」

「力なんて持ってないですよ」

「謙遜なさらずとも」

またそれか。何度言っても信じてもらえない。

「我々は、この村の状況を調査するために参りました」とルシウスは村長に向き直った。「数日間、滞在させていただきたいのですが」

「もちろんです。どうぞ、ごゆっくり」

村長は快く承諾した。それから俺を見て、少し申し訳なさそうに笑った。俺は小さくため息をついた。


その日の午後、神官たちは村を見て回った。畑、温泉、花畑。村のあちこちを歩いて、色々と質問をしている。俺も付き添わされた。

「この畑は、いつ頃から豊かになったのですか?」と若い神官の一人が聞いた。

「一ヶ月くらい前からです」と村長が答えた。「アキトが来てから、急に野菜が育つようになりました」

「一ヶ月で……」

神官たちは驚いた顔をした。それから畑をじっくり観察し始める。土を触ったり、野菜を見たり、時には目を閉じて何かを感じ取ろうとしているようだった。

「魔力の流れが、非常に豊かです」とルシウスが言った。「この土地には、明らかに神の加護があります」

「加護なんて、大げさですよ」と俺は言ったけど、聞いてもらえなかった。

「アキト殿、あなたは魔法を使えますか?」

「いえ、全然」

「祈りは?」

「してないです」

「では、どうやってこの豊かさを?」

「普通に種蒔いて、水やってるだけです」

ルシウスは眉をひそめた。納得してないみたいだ。それから、若い神官たちと何かを話し合っている。俺には聞こえない声で。

次に案内したのは温泉だ。湯気が立ち上っていて、いい匂いがする。神官たちは温泉を見て、また驚いた顔をした。

「これは……天然の温泉ですか?」

「はい」と村長が答えた。「アキトが発見して、村まで引きました」

「一ヶ月前に?」

「はい」

「信じられない……」

ルシウスは温泉に手を入れた。それから、何かを確かめるように目を閉じる。

「この湯にも、神聖な力が宿っています」とルシウスは言った。「ただの温泉ではない。癒しの力がある」

「そうなんですか?」

「ええ。間違いありません」

ルシウスは俺を見た。「アキト殿、あなたは本当に、何も特別なことをしていないのですか?」

「してないです」

「祈りも、儀式も、魔法も?」

「全部してないです」

「……」

ルシウスは深く考え込んだ。それから、若い神官たちに何か指示を出した。二人は頷いて、温泉の周りを歩き始める。何かを調べているみたいだ。


夕方になって、神官たちは村長の家で報告会をした。俺も呼ばれた。ユイもお茶を出すために来ている。

「結論から申し上げます」とルシウスが言った。「この村には、明らかに神の加護があります」

村長は頷いた。「それは、アキトのおかげでしょうか?」

「恐らく」

ルシウスは俺を見た。「アキト殿、あなたは自覚がないようですが、あなたの存在自体が祝福をもたらしているのです」

「そんなこと……」

「いいえ、事実です」

ルシウスは手元の羊皮紙を広げた。「畑の魔力密度、温泉の癒しの力、村全体の活気。全てが、あなたが来てから変化しています」

「偶然じゃないんですか?」

「偶然が、ここまで続くはずがありません」

ルシウスは真剣な顔をした。「あなたは、神に選ばれた方です。聖人、と呼ぶべきでしょう」

「聖人なんかじゃないです」

「謙虚なお方だ」と若い神官の一人が言った。「それもまた、聖人の証です」

何を言っても無駄みたいだ。俺はため息をついた。ユイが心配そうな顔でこっちを見ている。

「村長殿」とルシウスが言った。「我々は、数日間この村に滞在し、詳しく調査させていただきたい」

「もちろんです。どうぞ、ごゆっくり」

「ありがとうございます」

ルシウスは俺に向き直った。「アキト殿、あなたの日常を観察させていただきたい。差し支えなければ」

「日常って……」

「はい。どのように過ごしているのか、何をしているのか。それを知ることが、神の意志を理解する助けになります」

観察される。それは嫌だ。すごく嫌だ。でも、村長が「頼む」という顔をしている。断れない。

「……分かりました」

「ありがとうございます」

ルシウスは深々と頭を下げた。若い神官たちも、それに続く。


神官たちが村長の家を出た後、俺とユイだけが残った。村長は別の用事で席を外している。

「アキトさん、大丈夫ですか?」とユイが心配そうに聞いた。

「大丈夫じゃないかな」

「そうですよね……」

ユイは困った顔をした。「観察されるなんて、落ち着かないですよね」

「うん。すごく嫌だ」

「でも、村長さんも困ってますし……」

「分かってる。だから、我慢する」

ユイは俺の手を握った。温かい。

「私も、できる限りサポートしますから」

「ありがとう」

「一緒に頑張りましょう」

ユイは笑顔で言った。その笑顔を見ると、少し元気が出た。一人じゃない。ユイがいる。それだけで、少し楽になる。


その夜、小屋に戻って一人になった。窓の外には星が見える。いつもの静かな夜だ。でも、明日からは違う。神官たちに観察される日々が始まる。

「めんどくさいな……」

呟く。本当に、めんどくさい。ただ普通に過ごしたいだけなのに、なんでこんなことになるんだろう。

でも、村のためだ。村長も、村人も、みんな困ってる。だから、我慢するしかない。

「まあ、いいか」

そう言い聞かせて、ベッドに横になった。毛布をかぶって、目を閉じる。明日からどうなるか分からないけど、とりあえず寝よう。考えるのは、明日でいい。

でも、なかなか寝付けなかった。神官たちの顔が頭に浮かぶ。観察される日々。どんな風に誤解されるんだろう。想像しただけで、ため息が出る。

「……はぁ」

窓の外を見る。星がたくさん出ている。綺麗だ。この星空だけは、変わらない。それが、少し救いだった。

やがて、眠りが訪れた。浅い眠りだったけど、それでも眠れただけマシだった。


翌朝、目を覚ますと、すでに神官たちが小屋の外で待っていた。

「おはようございます、アキト殿」とルシウスが言った。

「……おはようございます」

まだ寝起きなのに、もう観察が始まるのか。これは、本当にめんどくさいことになった。

そう思いながら、俺は一日の始まりを迎えた。


読んで下さりありがとうございました!

★★★★★評価と[[[ブックマーク]]]、リアクションお願いします!

Youtubeにて作品公開中!

http://www.youtube.com/@mizukara-h2z

ご感想やご質問など、ぜひコメントでお聞かせください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ