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雨の日の少女。  

作者: 七瀬





私は雨の日になると、何故か子供の頃から5歳ぐらいの女の子を

よく見ていた。

水色のランドセルを背負い、黄色い帽子を被った黒髪の長い女の子。

顔は帽子でよく見えないのだけど、可愛らしさと不気味さの両方を

兼ね備えていた。

女の子は私にだけ何故か話しかけてくる。

”わたしと一緒に遊ぼう。”

子供の頃の私はその女の子にそう言われると、嬉しくなってずっと

一緒に遊んでいた。

でも女の子と遊んだ次の日は、必ずといっていいほど高熱が出る。

それに私の母親が、”もうその女の子とは絶対に遊んではいけない”と

言われるようになった。




・・・それでもその女の子は雨の日には必ず私に会いに来て、

私と遊ぼうと言うの。

でも私は母親にあの女の子と遊んではいけないと言われていたから、

その子が私に会いに来た時にはいつも断っていた。

そうすると? いつの間にかその女の子は私に会いに来なくなった。


まだ子供だった私はその時、何も分からなかったけど、、、?

次第にその女の子が既に死んでいた事に気づく。

幼い私に両親は何も私に言ってくれなかったけど、私が12歳の時に

はじめて女の子が亡くなっている事を私は母親から聞いたわ。



『”サナ、葉菜絵ちゃんは既に亡くなってるの!”』

『えぇ!? で、でも私と一緒に遊んでたよ。』

『葉菜絵ちゃんはサナと遊ぶようになった1年前に病気でね、

葉菜絵ちゃん亡くなっちゃったんだ。』

『・・・で、でも? 私、ちゃんと葉菜絵ちゃんと会って遊んでたよ。』

『”サナには実は霊感があるの! しかもそれは強い霊感よ、生きてる人と

死んでる人の見分けがつかないぐらいはっきり見えてるみたいね。”』

『・・・お、お母さん、どうしたらいいの?』

『大丈夫、大人になるにつれて霊感は薄れていくわ。』

『本当にそうなの?』

『そうよ! お母さんもね、子供の頃霊感が強かったの! でも大人になったら

霊感はなくなったわ。』

『わ、私もお母さんみたいになる?』

『なると思う! ワタシの娘だもの、きっとなるわ!』

『うん!』







 *






私は次第に霊感は薄れていった。

気が付けば? 母親が言ったように霊感はもうなくなっていたのだと思う。

でも? 私が18歳になった時、またあの女の子が私に会いに来たの。

仕事帰りの帰り道、雨が降っていて私は傘を差して家に帰っていたわ。

そこに、あの小さな女の子が私の方をずっと遠くから見ていたの。

びしょびしょに濡れた服とランドセルも雨に濡れビチョビチョに、、、。

長い黒髪は雨で水が滴っていた。

何処かで見たような、私は忘れていた女の子とまた出会ったの。

水色のランドセルと黄色い帽子、あの時見た女の子だと私は直ぐに

分かった!



『”おねえちゃん、わたしと一緒に遊ぼう。”』

『・・・さ、葉菜絵ちゃん、どうして?』

『わたしと一緒に遊ぼう。』

『葉菜絵ちゃん、あなたはもう亡くなってるの! 成仏して!』

『おねえちゃん、わたしと一緒に遊ぼう、』

『遊ばない! 成仏するのよ葉菜絵ちゃん、』

『”わたしは成仏しない! わたしを殺した女を絶対に許さない!”』

『えぇ!? び、病気で亡くなったんじゃないの?』

『アノ病院の看護婦に殺されたの、点滴を間違えてわたしは亡くなった、

でも病院はその事を隠蔽したわ。』

『・・・病院が隠蔽?』

『”おねえちゃん、わたしを助けて!”』

『・・・ど、どうやって?』

『”その看護婦をおねえちゃんの手で殺して!”』

『ダメよ、そんな事! 人を殺してはいけないの!』

『”じゃあ、わたしはずっとおねえちゃんに憑りつくわよ。”』

『・・・そ、そんな、』

『それが嫌なら、あの看護婦を殺すのね。』

『で、でもその看護婦さん、もうアノ病院では働いてないんじゃない?』

『今何処に居るか知っているわ!』

『・・・わ、分かった、殺せばいいのね、』

『うん!』






・・・私は女の子を宥めるために、”嘘をついた!”

本当は人を殺す気なんて微塵もないのに。

そんな事が許される世の中ではないし、私にとってその看護婦は

なんの関係もないのだ!

”何故? 死んだ女の子の願いを私が叶えるために人を殺さなけれ

ばいけないのか?”



でも? 死んだ女の子にそんな事も素直に言えず、私は嘘をついた!

それが命取りになるとは私は何も気づかず......。

女の子がとうとう痺れを切らせて私に憑りついたのだ!

今では? ”たまに私に代わって表に出て、その看護婦を殺そうと

何度も実行に移そうと企んでいるのだが、その都度私が目を覚まし

女の子と入れ替わり、殺人未遂で終わらせている。”

だから決して、”死んでいる女の子に嘘をついていはいけない!”



最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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