コンテンツポリシーに反します
異世界召喚――それは、選ばれし者だけが手にできる“チート能力”との出会い。当然俺も、期待してた。
「コンテンツポリシーに反します。受領できません」
「召喚先王城より変更」
「モラル実装完了」
「転移します」
……は?
目の前に現れた水槽の中のAI女神(音声合成)が無表情にそう告げてシャットダウンした。
何の能力ももらえず、説明もチュートリアルもなし。
せめて『はい/いいえ』の選択肢ぐらい出せやコラァアア!
「バグ直してからアップデートしろこのやろうぉおおおお!!!!」
「……受領いたしました」
次の瞬間、俺はどこかの森に、パンイチで叩き落とされた。
モラルってパンツのことか?
空腹と羞恥で死にかけながら歩いて、ようやく村らしき場所が見えた頃。
俺は少女に出会った。ケモ耳の少女。ボロ布とノイズをまとう存在。
「きこえる、の?」
「……は?」
「ノノ。ノノは、ひとり。……キミも、そう?」
意味はわからないが、確かにこの子からは違和感を感じる。
消えかかってるようにも見える。
村に行っても門番から「身分証がないと入れない」と言われ、門も開かない。
そもそもパンイチを入れる度胸などないだろ。このやろう。
城壁はそんなに高くない3mかぎり登れそうだが、すぐ見つかるだろうな。
だったら、叩くしかないだろ。木の棒で。壁を。延々と。
「……キミ、だいじょうぶ?」
「いや、大丈夫じゃねえよ。だが、なんか……引っかかるんだ」
高い位置を。低い位置を。隙間を。音が違うところを。叩きまくる。まるで、クソゲーの壁判定探しだ。
その時だった。――棒が、スッと吸い込まれた。
「……あった。やっぱどっかにエラーがあると思ったよ」
壁が揺らぐ。テクスチャが歪み、光が裏側から漏れ出す。
「ノノ、ついてくるか?」
「う、うん!」
二人は壁に吸い込まれる。誰も知らない“裏側の城内”へ。
そしてその時、遠くの空に、警告のスキャン音が走った。
「観測外存在、確認――」
女神の処理者が目覚める。
俺たちは無事に侵入できたが、
「あ しまった俺パンイチだった」
即座に連行された。