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第3話 旧校舎

 『見せたいものあって来たの。つまんなかったら戻っていいから来てよ』


 見せたいもの?それよりまわりの視線が集まりすぎて怖いけど。


 手を引かれるまま着いた場所は静かで誰も通らない、旧校舎に繋がる廊下。

旧資料室。告白の穴場スポットと言われる場所。

「ここに何かあるんですか?」

「別になんもないけど」

「…帰っていいですか」

中瀬さんが旧資料室のドアを開けた。

「鍵かかってないんですか?」

不思議そうにする私を見て少し微笑んだ。

「鍵壊れてるんだよ。ここ落ち着くんだ。愛苺ちゃん好きそうだと思って」

…私のため?いやまさかね。

「私は中瀬さんから見たら大人しいキャラなんですか?」

「いーや、いじめ止めに入る子が大人しいとか俺は思わないけど、うるさいのは嫌いそうだな」

いわゆる陽キャと私では別次元。うるさいとか楽しいとか嫌いなわけじゃないけど…。

「慣れてないだけです…。多分。でもやっぱり苦手です。教室の空気とか」

静かに平和に過ごしたい。陽キャに生まれていたら、こんなこと思わなかっただろうな。

でも私にとってこの世界がつまらないことに変わりはない。

「俺は学校自体嫌でさ、授業受けないでサボれるとこ探しまくったんだよね」

こんなに明るい人が学校自体が嫌、だなんて意外だなぁ。

「なんか意外です」

「だろうね。まあ人間不信なだけなんだよねー」

「私のことも信じてないってことですか」

人間不信とかいってちょっと距離感おかしいし…。

「俺は信じてるけど」

「どうして?出会ったばかりなのに」

「見たらわかっちゃうんだよ」

そう言って中瀬さんは私の顔を覗き込んだ。

「だって愛苺ちゃん可愛いもん」

…へ?

いやまって破壊力やばいって。

「な……んて…?」

びっくりしすぎて言葉が出ない。

「顔赤いよ笑…こっちが照れる」

ん…???

本当に先輩ですかこの人…。ちょっとかわいくないですか??

「…というか、ここ結構いいですね。サボりやすそう」

「おばけ出るって噂だから先生すら来ないよ。一回も出たことないんだけどね」

「来るのちょっと抵抗あるんですけど中瀬さんは怖くないんですか?」

日もあまり十分に入ってこなくて薄暗いから少し怖い。

「怖くないよ。なに、こわいの?」

馬鹿にしてるなこの人。

「…どっちかといえば、怖いですけど…」

それを聞いた中瀬さんは少し優しく笑った。

「強そうかと思ったけどかわいいとこあるんだね」

「からかってるんですか」

「んーん。…実はここから愛苺ちゃんの教室見えなくもないんだよ。右奥の方にある」

うそ。サボってたらバレちゃいそうだなぁ。

「教室嫌いだから、もうずっとここにいたいです…」

つまらなくて自分の存在価値もよくわからないこの世界が嫌い。

なるべく早く死にたい、と思ってしまう。

「ずっといなよ。俺もいるし」

「でも授業出ないと留年しちゃう」

「こわい?」

「学費も、親からの期待も、まわりの人にどう思われるかも、私にとっては全部怖くて仕方ないです」

〝うちの一人娘なのに、何の才能もなくて期待外れだわ〟

〝高い学費払ってるのに学校行きたくないって何?〟

〝東さんっていつも一人でいるし楽しくなさそう〟

〝真面目だけが取り柄〟

〝なんか飾りみたいな笑い方だよね〟

全部自分が原因なのに、傷ついて泣きそうで、明日なんてこないで欲しいと思ってる。

「普通はそうなんだよ。俺は弟の方が優秀だからもう期待なんてされてない。多分、留年も近いかな」

「…留年になってもいいんですか?」

「学校は辞めるかもね。家族も俺なんて興味ないし友達も少ないし、結局は一人なんだよね」

「意外ですね…。こんなに気さくで話しやすいのに…」

見た目も人形みたいな、綺麗だし彫刻のようでかっこいいし、話すと明るくて面白いのに。

この人がひとりぼっちなんて考えられない。

「俺さ、嫌われやすいんだ。女は寄ってきたりするんだけど男には殴りかかられたりするよ」


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