第1話 梅雨
なんてつまらない世界なんだろう。
毎日同じことの繰り返しで、平凡以下で、生きる意味なんて正直わからない。
東愛苺、高校1年生。
やっとJKという生き物になれたのに、まったくキラキラしてない。
話しかけてくれる人も特にいないし、友達も作れないまま梅雨に入ってしまった。
あれ、筆箱…。
絶対体育館に忘れてきた。
せっかく早く帰れると思ったけど、仕方ないから取りに行くかー…。
外は雨。体育館へは一度外に出なきゃいけないから面倒くさい。
…あった。筆箱も見つけたことだし帰ろう。雨は嫌いだし。
「やっ…やめてっ、ください…!」
…ん?
どこから…?
器具倉庫の方から声がしたし、まさか誰かいじめられてる…!?
ひぇー…、あとは先生に言って私は帰ろうかなぁ。本当にいじめなのか分からないし…。いやでも雨の中苦しむなんて…。
足がすくむけど覗いてみよう。
あの人同じクラスの…?
顔が血だらけだよ。けんか…?いじめ…?今助けないと怪我した上に風邪まで引いちゃうし…。
「あの…!」
いじめてる人と目が合った。上級生?の男の人が3人。
…怖い
やめとけばよかったかな
でも私は……失うものもないし。
少なくとも私以外の人には楽しく高校生活を送ってほしい。
「誰?女の子じゃん」
「君もわざわざやられに来たの?」
怖い…。きもい…。近づいてこないで…。
「まじで何の用?今忙しいからさ、どっか行ってくんない?」
「な、なにしてるんですか…その人に…」
「見ればわかるじゃーん。ただの喧嘩ごっこ♡」
「関係ない子は早く帰りなー?」
ここで私が帰ってしまったら、ものすごく後悔すると思う。
「そ、その人から離れていただけませんかっ」
殺されるかも…。
「は?こいつの彼女なわけ?まぁいいや、離れてあげるからさ代わりに着いてきてよ」
手を掴まれる。怖い。まって、触んないで…!
「あのっ…!やめて…」
「こいつと同じことされたいの?嫌でしょ?雨しのげるとこでゆっくりお話しよーよ」
力が強くて逃げられない。
お母さんごめんなさい。私もう家に帰ってこれないかも…。
「痛い痛いっ!!!」
…?私の手を掴んでいた男がしゃがみ込んだ。
「俺の女に手出さないでよ。殴りたくなっちゃうでしょ」
ぐっ、と肩を引き寄せられた。
その勢いで思わず抱きついてしまった。
誰なのかよくわかんないけど安心する…。
…俺の女?
見上げるととんでもない美少年…?いやいや待って誰ですか。
「中瀬っ……!覚えとけよ…!」
中瀬?
男3人は走って逃げていった。
「あ、えと、守ってくれてありがとうございます…」
「うん。気をつけてね。…あ、君立てる?わー、すげー怪我だね。保健室行きなよ」
…校則違反の茶髪に服装の乱れ…。なんだかヤンキーみたいな人…。
なにより、かっこいいなこの人…。