3.2_文明導入
職人さんたちには科学的思考力というものを獲得してもらいたいんだよな
とはいっても、ミキューの物理法則は地球のそれとは異なるだろうから、"科学"がどこまで通用す
『お待たせして申し訳ございません、神の御使様
どうぞお入りくださいませ』
「ありがとうございます、ギャムル
あと、ここでは先生と呼んでくださいね」
『かしこまりました、か、先生』
さて、だいぶ職人さんは科学的思考力の基礎は身につけてきた気がする
以前は物を作る時も個人の技量に依存している部分が非常に大きかったけど、自身の技術をより客観的に他者に伝達することができるようになった
なんていうか、"見て盗め"から”教える"に変化した感じ?
だから、今日からは少し難しいことをする
「じゃあ、今日も科学を学びましょう
今日は今までとは少し異なることをします
これから目指したいことは皆さんに気球を作ってもらうことです」
『え?
でもわいらの遠ーい祖先しか気球を飛ばせなかったそうですし、その祖先ですら、気球を作ることはできなかったと聞いていますよ、か、先生
わいらにはできませんよ』
「いやいや、作れなかったのは教えてくれる人がいなかったからですよ
貴方たちにはできますよ
ではその前に気球の仕組みを話します
まず気球はどういうものか知っていますか?」
『はい、人を天に近づけさせてくれる乗り物です』
「そうですね
では、なぜ気球は上に向かうことができると思いますか?
みなさんで議論してみてください」
職人さんたちすごい一所懸命に議論してくれてんなー
いやー、それにしてもミキューの基本的な物理法則は地球と同じで助かったな
"空気"は存在して、暖かいほど上昇するから気球は機能する
まぁ根本的に違ったら色々大変だからよかっ
『か、先生』
おっ纏まったんかな?
「どう?何か思いついた?」
『いえ、まだなのですが、この装置がどういうものか教えていただけますか?
話し合った結果、この装置が気球というモノの本質だと思うのですが』
めっちゃいい着眼点!
そう、バーナーは気球の心臓部と呼ばれてるくらいだし
「それは火を起こす機械だよ
ちゃんと稼働してる時には火を起こすんだ」
『火ですか?
なぜ火を起こす機会を載せるのですか?』
「それが君たちへの課題だよ、サド」
なぜ暖かい空気は上昇するかの理由までは求めてないけど、火の近くの空気は上昇するくらいのことはわかってほしいし
まあ、もし理由まで分かったら困るけどね!
私もよくわかってないから!
そういえば、ミキューの空気成分ってどうなってるんだろう?
地球と同じく、窒素8割、酸素2割とかなのかな?
それとも、地球には存在しない原子、いやそもそも地球に存在するなら"原子"という表現が適切かすら疑わしいぞ
原子が存在しないとしたら、この世界の人間が吸ってる物質はどうやって存在してるんだ?
あー、やばい
最近暇なせいかこの世界の理がすっごい気になってきてる
ミキューは球体の星なのか、宇宙が存在するのか、天動説はここでも正しいのか、魔物の生態系はどうなってるのか、ミキューに鷹たちはどこま
『先生!
火の周囲では軽い物質が上に行きます!
これが気球のカラクリですか!?』
え!?
気づくの早くない!?
「そうだよ
火の力とかをうまく調整すると人を数人乗せても空にいられるようになるんだ」
『『『なるほど!』』』
『調べてみるぞ!』
『暖炉につけるくらいの火の強さだったらどれくらいの重さのものまで浮かせられるのか試そうぜ!』
『いや、それよりも』
いやー、こういうのって気づくまでが一番大変なはずなんだけど、かなりあっさりいったなー
いろんな意見はあるけど、絶対に1から100を作るよりも0から1を作る方が大変だと思うんだよね
それこそ正解でも教えてもらわない限りは
まあ、ここまできたら私が出しゃばるのも違うし、一言だけ言って今日は帰ろ
「ちょっとしたアドバイスなんだけど、現象を考察するときは前提条件を意識するといいよ
例えばさ、同じ重さでも落ち葉と網だったら、落ち葉は浮いても網は浮き上がりにくそうでしょう?
重さに注目するのも正解だけど、理論と現象が食い違うときは現象の方が正しいんだよね
だから柔軟に理詰めしてみてね」
『...『はい!』...』
『アドバイスありがとうございます!』
『参考にさせていただきます、か、先生!』
うん、私がこの世界の理についてアドバイスできる範囲は基本的な事柄に限定されるから、是非とも頑張ってほしいなー
「じゃあ、私は帰るけど、研究だけじゃなく仕事も頑張ってね」




