4、恋としてのライバル
家に帰って来るまで相当な気分だった。
というのも...胸が高鳴る。
馬鹿な。
2次元にしか興味の無い俺が。
そう思いながら帰ってから玄関を開ける。
「あれ。お兄ちゃん。おかえり」
「葉月。ただいま」
「...?...どうしたの?顔が赤いね」
「ファ!?そ、そんな事はないぞ」
在里葉月。
目の前の義妹の女の子の名前である。
旧姓は長嶋葉月だった。
今の母親の皐月さんが俺の親父と結婚してから名前が変わった。
容姿としては...先ず三日月の髪留めを髪の毛にしている。
前髪にしている感じだ。
そしてボブヘアーである。
美少女...と言ったらメチャクチャな美少女だと思う。
この家にかなり勿体無いぐらいの。
「...お兄ちゃん?そんなに見つめられると恥ずかしいよ?」
「あ、うわ。すまん」
「私は2次元じゃないからね」
「はい」
葉月は...アニメを容認している。
というか葉月もアニメが好きなのだが。
そして美少女系が好き。
世の中に対してありえないかも知れないが。
だけど俺達の間に恋愛感情はない。
それはあくまで2次元内の話だ。
「お兄ちゃん。何か良い事でもあったの?」
「...いや。良い事っていうか...そうだな。女子の家に行って来た」
「フあ?」
「...何だその反応は」
「いや。ありえないなーって。嘘は良くない」
「嘘じゃねー...が。まあ嘘に聞こえるか」
「そうだね」
嘘では無いんだが。
まあそうしておこう。
それから俺は鞄を下ろしてからそのまま靴紐を解いていると背後から嗅がれた。
そして!!!!!と反応される。
「...お兄ちゃん...女子の香りが...」
「だから言っているじゃないか。...俺は女子の家に行った」
「お、お兄ちゃんの童貞の霊圧が消えた...」
「お、おい。何だそれ...」
俺の霊圧は消えてない。
BL◯ACHじゃ無いんだからな。
俺はチャ◯じゃないからなあくまで。
そう思いながら俺は葉月を見る。
すると葉月は何か重苦しい感じの顔になる。
「...どうしたんだ」
「...いや。お兄ちゃんに彼女かぁ、と思って」
「あのな。何か勘違いしているぞ。彼女はあくまで恋している人が居る」
「そうなの?じゃあ何で呼ばれたの?」
「...そうだなぁ。お礼と言っていたよ」
「お礼ってつまりあの強姦に襲われた時の?」
「そういう事になるかな」
「そうなんだね」
そして葉月は顎に手を添える。
それから「ふむ」と呟きながら俺を見た。
俺はその姿に?を浮かべる。
「...でも女子は変わるって言うし」
「...はい?」
「お兄ちゃん。本当にその子は他の男子が好きなの?」
「そうだな」
「うーぬ」
「怪しむな。マジだって。しかも相手は高スペックだぞ」
「...一テラバイト的な?」
「そうだな。2テラバイトかもしれない」
「そっか。まあ興味無いけど。私の彼氏は2次元だし」
葉月は手を組んで満面の笑顔になる。
俺はその顔を見ながら苦笑いを浮かべる。
それから靴紐を解いてから玄関を上る。
そしてリビングに入った。
☆
お兄ちゃんが他の女子と一緒だったという。
私は驚愕しながらも応援したくなった。
そして私は家事をする。
だけど何だか知らないけど手が進まない。
「...?」
何でか分からない。
だけど何だか知らないけど...お兄ちゃんから女子の話を聞いてから手が上手く動かないのだ。
何故か分からないけど鬱陶しいぐらいに。
「...全く。熱でもあるのかな」
そして私は皿洗いをする。
するとお兄ちゃんがやって来た。
お兄ちゃんは横で皿洗いを手伝ってくれる。
私はそれが何となく嬉しいし。
幸せだった。
「2次元の尊様は元気か」
「2次元に元気もへったくれもないでしょう」
「でもVチューバーなんだろ?」
「そうだね。相手は女の子だけどねぇ」
尊様。
動画サイトで大人気のアニメVチューバー。
容姿は完全な黒髪のイケメンだけど中身は女性とされている。
だって声的に女性だもん。
そう思いながら思い出して...あれ?
「...ん?どうしたんだ」
「...あれ?」
「...?」
お兄ちゃんが私を見る。
私、尊様が好きなのだけど。
だけど今は何だか好きにならない。
というか何だかさっきからハラハラしている。
一体何故?
「どうしたんだ。何かおかしいぞ」
「...いや。ゴメン。何か...尊様はそうなんだけど」
「...???」
「ゴメン。今はその話は良いや」
そして私はお兄ちゃんに苦笑する。
何だかそんな気分じゃない。
私は「トイレに行って来るね」と皿を置いてその場から急いで離れる。
泣きそうだったから。
「...???」
それから便器に腰掛ける。
そして数秒してから...号泣した。
涙が溢れた。
そうしてからポロポロと涙が床に落ちる。
幾つもの真珠の様な無数の水滴が私の目から落ちる。
「...?!」
私は意味が分からないまま嗚咽を漏らした。
やっぱり今日はおかしいな私。
早めに寝ようかな。
そう思っている中で目の前の飾られている写真を見た。
そこに写っているお兄ちゃんを見てまた更に涙が溢れる。
「...嘘でしょ。私」
そんな馬鹿な。
義兄だよ、義兄だよ...義兄だよ。
あくまで血が繋がってないとはいえお兄ちゃん。
そんな感情ってありえない。
絶対にあってはならない。
「...悔しいんだな...取られちゃうのが」
それも胸が痛い。
心が痛い。
確信してしまった。
私は...嫌だった。
幼稚園の頃から知っているお兄ちゃんが。
そして、お兄ちゃん、と思えないのだ。
異性として見ている。
そうこれは...。
「...恋愛感情?」
そして私は落ち込む。
その事を心で考える度に。
間違いない。
私、お兄ちゃんが好きだ。
女子の話で心がグサグサと見えない槍が刺さりまくる。
グラグラ揺れる。
「だから泣いているのか」
私はそう言いながら涙を拭うが。
拭いきれない。
だとするなら...私。
私...は...。