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13. Give and Take

「バイト決まったよ」

目をキラキラさせて抱きついてくる。はしゃぐ姿はまるで子犬だった。

そう言った日が懐かしい。2週間もすれば、だんだんこの生活にも慣れてきて、シロはこの世界の勝手がよくわかってきた様だ。やっぱり、家より、たくさんの人がいる外に出た方が、学べるしね。


彼のバイトは駅近くのカフェで即採用された。かの有名な多様性の時代に逆行した顔面偏差値に対して厳しい面接をいまだに行なっているあのカフェが当日採用をしたのだ。今度様子を見にいって、チョコレートクリームフラペチーノや抹茶フラペチーノを頼んで見ようかな。彼のギャルソンエプロン姿を拝見させて頂きたいのだ。


確か週4〜5のフルタイムで採用してもらったようだ。だからお互いバタバタしている。しかし、私は在宅の日もあり、平日時間があればランチをすることもあった。もちろん私は奢ってあげるつもりで、支払うときにシロは耳をペシャンとした犬の時の姿が重なる様に落ち込むので、あまり外食はしない様になった。たまに休みの日が被ればショッピング施設や海、山などに行った。海、山の時は犬に変身したりすることもあった。幸い人が少ないところだったのでバレていないといいが.....。シロいわく四輪駆動の犬の方がアクティブ活動にはもってこいだそうだ。でも今度は人間としてちゃんと水着を着て再チャレンジしようと密かに思っていた。プールにも連れていってあげたい!






「ちょっと行ってくる」

「はあい、いってらっしゃーい」

どこに行くんだろう。なんか、買い物かな。

「ついでにアレ買ってきて。アイス〜」

私はお笑い番組を見ながら答えた。


「了解。じゃあね。待っててね」

背後からふわっといい香りがした。今日はカシスオレンジの香りがした。バックハグからの髪の毛を一束とって長いまつ毛を伏せてキスを落とす。

スマイル。


ばたん。がちゃ。


肩を優しく抱きしめられた感触と甘い匂いが残っていて、私はしばらくぽーっとして、いってらっしゃいを言うことも忘れていた。


よく懐く少年みたいなリアクションが多いくせに、こういった大人っぽい所作の方も割と多いのである。切り替えというか、たまにギャップがすごくて、グッとくる。どっちが本物のシロの性格なのか、ふと考えるが、たぶんどっちもだと勝手に思うことにしている。


録画番組を2つくらい見た後、シロ遅いなーと思いながら、先にお風呂に入っていることにした。


その頃のシロ*****************************************


今日は念願の給料日、シロは携帯ショップを訪れることにしたのだった。


「ただいま。」


手を洗い、スプーンを持ってきてアイスをくれた。


「遅くなってごめんね。」

そう言って、私の目を見つめてくる。かわいい、なんて従順な犬なんだ。


私の目はカップアイスに釘付けである。

「今開けてあげるからね。」

優しくそう言って、私を子供扱いする。

シロは、私がどんだけ非力だと思っているんだ。アイスくらい自分で開けられるよ。丸い青い紙でできた容器の蓋をシロが外した。その中にはお甘いクリーム色の滑らかな水平線があった。


「口開けて」


早く甘いのがほしい。そう思ったら自然と口が開いた。

ん〜。バニラの香りが口全体に広がり、冷たくて心地いい。お風呂上がりだから体温が下がって余計に美味しく感じた。


どんどん食べさせてくれるので、甘えた。目の前には甘いフェイス。バニラアイスのCMに出てきそうな俳優よりかっこいいんじゃないか。爽やか。彼には、氷属性が入っているんじゃ無いかとも思ってしまうくらい氷が似合う気がする。絶対氷を操っていそうだ。萌える。


幸せな目の前のキラキラした乙女ゲースチルを堪能した後、ちょっと眠いなと思っていたら、

ブロー。

いつものようにシロがコンセントにドライヤーをさして、左手には櫛を持ってきた。ドライヤーで聞こえなかったが、むにゃむにゃ。気持ちいい暖かさで目がトロンとなる。


ドライヤーが終わったみたいだ。

髪が櫛で解かれて、頭皮が刺激されて血流が良くなった。

なんか華やかな香りがする。


「え?それどうしたの?」

シロはといていた櫛の手を止めた。

「これのことかな」

そう言ってヘアオイルを渡してくれた。


「ローズの香り」って書いてある。

なんか、最近髪がまとまりやすいなーと思っていたら、シロのおかげか。買ってくれたんだ。私の為に。すごく嬉しい。


「ありがとう、シロ」


私もシロに何か喜ぶことしてあげたい。自然とそう思えた。利害の関係じゃない、ギブアンドテイクじゃない。彼氏持ちの女の子はよく悩むよね。私はこんなにしてあげているのに彼はなんにもしてくれない、といった悩みはネット上でよく書かれている。でも、シロのような彼氏だったら、そんな悩む必要はないと思った。いや、シロが彼氏だったら、その彼女はどんなに幸せなんだろうか。シロが優しくする度に、その女の子も優しさを、受け取った愛情を、同じくらいに返したい、そう自然と思うのではないか。もしシロが大切な人と巡り会えたら、その人は幸せだろうな、そう、思った。少し、羨ましいな。心がちくんってした。


「シロは何か欲しいものはある?」


答えにくそうだ。私が何か奢ろうとしたり、こう聞くと彼は困った顔をする。


「あ、わかった。ジャーキー?ボール?ガムかな??」


本当は欲しいんだろうな、言いにくいのか、可愛いやつめ!君は犬の本能に抗えない!


「......君だ」


え?なんか言っていたけど、私の頭の中は今度アレとアレをプレゼントしようとラッピングのところまで想像をふくらませていた。今度、好きなフレーバーとカミカミする好きな硬さの傾向を調査しようと決心した。




「そういえば、アイス買う前、何処行ってたの」


帰宅後に畳の端に置いていた紙袋をこっちに持ってきた。


「これを買ったんだ」


スマホだ!日本人がみんな持っているアイポンじゃない、他ブランドのスマホを買っていた。安かったそうだ。


「いいじゃん!スマホデビューだね!おめでとう!最近バイト頑張ってたもんね」


私まで嬉しくなった。ほくほくした気持ちで彼が開封していくのを横で見ていた。

初期設定はさくさく進んでいた。あらかたショップでやってもらったのかな。でもシロは賢いから、自分でやってそうな気がした。スマホを手にしたら、もっと知識をつけるんだろうな。私よりネットに詳しくなりそうだ。


「私の電話番号これね。かけてみて。」


「よし、シロの電話番号はこれかー。登録しとくね!」






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