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最期の一言

作者: ねーま

寝る前にちょっと考えてみた。

明日死ぬとしたら、最期の一言は何を言おうと。

最期の一言というのは、その人間がどのような人間でどのような人生を歩んできたかというのが一言で簡潔に表せないといけないものである。

僕という人間を、僕の人生を果たして僕は死ぬ間際に上手く表せることができるのだろうか。


例えば、明日僕が銀行に行ったとしよう。僕のことだから昼まで寝てしまって、起きて、シャワーを浴びて、遅めの朝ごはんを食べてさて、歯を磨こうかというタイミングで銀行に行かないといけないと思い出し、銀行が15時までということ気づくだろう。慌てて家を飛び出し、まだ起きて間もないという事実を隠せてない顔で銀行に着き番号札を取る。73番。時刻は14時。

僕が椅子に座ってしばらく経ち、無感情でスマホをイジイジしているとき、事件は起こる。斜め前辺りに座っていた帽子を深く被った男が急に勢い良く立ち上がり、胸ポケットから銃を取り出す。バキュン。銃声が鳴り響く。女性の悲鳴。そう銀行強盗だ。僕の目はスマホから銃声の聞こえた方に移る。でもその前に、4番窓口の従業員が可愛いことに気づく。犯人の男は自分が銀行強盗であると名乗る。それでもなお、4番窓口の従業員は可愛い。たぶん僕と同じ歳か、1個上。僕は年上の女性がタイプだ。いや、僕の恋のスイッチが入るのは統計的に見て比較的に歳上の女性が多いというだけであって、歳上の女性がタイプだと断言してしまうのはいかがなものか。歳下の女性を魅力的に感じたこともあるだろ。ただ、アダルトビデオで熟女物か、ロリ系かの2択を迫られた場合、迷わず前者を選ぶだろう。僕は歳上の女性が好きなのかもしれない。もし、4番窓口の従業員が歳下であっても僕は彼女を魅力的に感じた。あの人に対応してもらいたい。とか、いろいろと考えていると、最悪だ。僕が人質に取られてしまった。銀行強盗の男が人質を取った際に言うセリフをほざいている。皆さんに評価してもらいたいのは、この時点でまだ僕は一言も声を発していない。怖がっていない。この状況を第三者のように、客観的な視点で捉えているのだ。そんなことより、4番窓口の従業員は可愛い。嗚呼、とても魅力的だ。もし、あの子に対応してもらえたらちゃんと最後にありがとうございました。ってちゃんと言おう。あなたの働きぶりをみて、僕も明日から仕事頑張ろうってなりました。働いてくれててありがとうございます。というか就職おめでとうございます。


犯人は無茶を言い出した。あと5分で金を用意できなければコイツを殺す。コイツというのは僕のことだ。

犯人は鼻息が荒かった。僕に銃を強く押し付けていた。犯人はたぶん相当な覚悟ができているのだろう。やっぱやめます。なんていまさら言わないだろう。最後までやり通すだろう。それがたとえ強盗が成功しなくてもだ。僕は犯人が羨ましく思えた。果たして僕は、人生を投げ売ってでも何かを成し遂げようと思ったことはあっただろうか。


僕には好きな女性がいる。同じ職場の女性だ。彼女は1つ年齢が上だ。やっぱり歳上の女性がタイプなのかもしれない。彼女の容姿はもちろん、雰囲気や能力、仕事に対する姿勢。あと彼女が乗っている車も好きだ。僕は、彼女に好意を抱いてからというもの彼女のために生きてる。彼女に認められたい。彼女に釣り合う男になりたい。仕事で彼女に追いつきたい。彼女の笑った顔が見たい。僕はすごくシャイだ。でも、僕なりにちょっとずつではあるが距離を縮めようと努力したつもりだ。彼女はあまり自分自身のことを話したがらない。それがこの恋が上手くいかないことを暗示しているようで怖かった。認めたく無かった。だから僕も僕自身のことを話さないように努めた。でも彼女の笑顔は見たいからよく即興で作り話をした。銀行強盗に銃を強く押し付けられた今、とても情けなく感じている。

彼女には12歳歳上の彼氏がいる。らしい。噂で聞いた。それでも僕はまだ彼女が好きでいる。その噂を聞いたとき、落ち込んだけど、嬉しくも思えた。それは彼氏がいると知ってもまだ好きでいられるくらい彼女が好きで、そんなふうになれる自分がいたことにまだ自分も捨てたものじゃないなと思えたからだ。彼女に出会う前、いや、今でもそうではあるのだが、あまり未来に希望や夢を持てなかった。毎日がつまらなかった。どうせ何をやったってなにもできないし結果は一緒だとふてくされていた。でも、彼女を好きになってから僕は何者にもなれなくていいし、何か欲しいものが手に入らなくても良く感じれた。それは彼女のため、彼女のことを思って何かしたり、考えたりすることが楽しかったからだ。それが今の自分の幸せだと感じることができた。生きてて久しぶりに楽しいというかやりがいがあった。そんなふうに思わせてくれてありがとうっていつか言ってあげよう。好きですって言う勇気はないし、彼氏から彼女を取ろうなんて全く思わない。今の彼氏と一緒にいるほうが絶対幸せになれる。でも、感謝の気持ちは伝えたい。ありがとうございます。って。何に対してって言われたら存在してくれてて?って答えよう。いや、産まれてきてくれて?って。


銀行側は5分で金を用意できなかった。でも、犯人の優しさは見れた。最期に言い残したことはあるかって聞いてくれた。一成一代の大舞台。

僕が最期に言ったセリフ

「おっぱい生で見たかったなぁ。」

バキュン。

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