7 子は強し
ファウストが書いてくれている間、俺は屑鉄集めも兼ねて他の3人、ニースとジミー、リンに会ってみることにした。
リンに会いたい旨をマフィに告げると、居場所まで快く案内してくれた。
第一印象としては、普通よりは静かな女の子、といった感じだった。マフィと同い年に見えたが、性格としては対照的なので、なかなかいいコンビになりそうだった。午後にはレイと資材調達に向かうのでその場で別れた。
迷った。
方向音痴な体質なので、一生涯立ち入ることのなかったであろうスラムではマフィに道案内をしてもらっていたのだが、彼女はリンと遊んでいる。
ここはどこだ。見当もつかない。
無闇に歩き回るのもいけないとは分かっているのに、前へ前へと歩を進めてしまう。だって帰り道わかんないんだもん。
・・・・・・しょうがねえ、恥を忍んで叫んでやるか。あわよくば来てく
「おう、アズーじゃねえか」
「あ?・・・ニース!」
「おう!こんなところで何してんだ?」
「いや、道に迷っちゃってさ」
というか知らなくてさ。
「レモンの広場まで案内してくれないか?」
「んー俺はいいぞ」
「サンキュ、マジ助かる」
「あいよ」
気のいい兄貴だな。
歩きながら、記憶を失ったこと、魔術を使えるようになったこと、あれから初めての仕事をこなしたことなどを伝えると、何も聞かず手放しに褒めてくれた。
近所に一人は欲しかった、頼れる兄貴分だと切に感じた。
「アズー、遅えぞ・・・お?ニースも一緒に来たか。ちょうど呼びたいところだったから話が早くて助かるぜ」
「すまん、迷っててさ」
「レイ!元気してたか?つっても6日ぶりか!」
「いてえよ!そんなに強く叩かなくても生きてるわ!」
そして三人で談笑していたところにジミーとティトもやってきた。
「なんだ?お前らも来てたのか!奇遇だな!」
「わあ!お兄ちゃんたちが集まるの、久しぶりだねえ!」
うん、やっぱり全員で集まると必然的に音量が大きくなる。
前に集まってもらったのが母親の簡単な葬儀のときだったので、そのときは静かにするよう配慮してくれていたことを考えると、いい友達なんだな、と素直に感心できる。
「たまたまみんな集まれたし、いい機会だからみんなに言いたいことがあるんだ。マフィとリンのところまで来てくれるか?」
「お安い御用だ、アズー。その前にレイ、何か言いたそうなことあったんじゃないのか?みんな行くぞ!」
おう、と口を揃えて返事する一同。
小さな話も聞き逃さない、元の世界のイケメン勇者に似てるとこあるな。
俺が彷徨った道のりを走り抜けると、リンとジミーの家に辿り着けた。
「お兄ちゃん!みんな!どうしたの?」
「うち、入る?」
「マフィ!久しぶりだな!リン、ありがとな!そうさせてもらうよ」
「うん、あがって」
ニース強い・・・これがコミュ強か・・・
✳︎ ✳︎ ✳︎
「これより、第・・・37回!臨時結集会を始める!」
「「おう!」」
これは全員・・・男子全員で挨拶する。
椅子にするのに良さそうな盛り土と、それも含めた五つの席。それぞれ布が敷かれており、俺たちは中央を囲む円卓のようにして座っていた。
マフィは俺に、リンはジミーにくっついて参加している。
子供たちのグループにしてはきちんとしているのな、かつてお兄さんだった少年、感心しちゃう。
「今回の議題は二つ!ひとつは俺から、もうひとつはアズーからだ。先にアズー、話してくれ」
「了解」
そう言って、立ち上がる。
「まず、これだけ言わせてくれ。みんな、俺の記憶がなくなってから、ずいぶん良くしてくれたこと、本当にありがとう」
これだけは言いたかったことだ。礼に欠いては友情も築けないだろう。
「大丈夫だって、気にすんな!」
「ああ!どんどん俺らを頼ってくれよな!」
「困った時はおたがいさまだろう?」
ニースとジミー、レイが口々に励ましてくれる。
人の心があったかいよ・・・生まれて初めてだよお母さん・・・
「みんな、ありがとな。さて、本題だ。まずは報告から」