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49 脱出劇

 飛び交う怒号と悲鳴。どこからともなく現れる兵隊。パニックになりかける実習生たちを集めんと奔走する教員の姿が見えては隠れる中、最初の集合場所へ急いだ。とにかくやばいサイレンであることには間違いなく、聞いたこともないのに「敵襲」の2文字が頭を駆け巡る。困惑するエイトとは対照的に、なぜか落ち着いているアルバが不思議だった。


 「ど、ど、どうしよう、どこへ行けばいい?何が起こってる?」


 「落ち着けエイト。俺たちは中立のリボンをつけている、狙われることはない」


 「みんなだいぶ集まってるみたい。早くここを脱出しなきゃ…」


 まずは教員の指示を聞くのが先決だ。非常時であるからこそ頼らなくてはならない。何より、市街戦で孤立しては死を待つのみである。


 刹那、爆発音が響いた。斜め後方からである。場所は遠いが…

 

 「あそこ…難民のみんながいた場所…」


 「今は急ぐぞ、俺たちの命が大切だ」


 どうやら、敵も味方もないのかもしれない。いよいよもって俺たちの命も危うくなってきたな。

 

 「お前たちで最後だ、行くぞ」


 「はい、先生」


 他の学生たちと合流した。教員も含めて全員そろっている。無事だったようだ。難民団に別れを告げるため、軽く振り向いた瞬間だった。


 爆炎が人間を見境なく呑み込んだ。兵も、子どもも、全てが黒い煤と化してしまった。


 意味が分からない火力だ。いくつの命が散った?再び眩暈が起こった。


 「あの気球からの攻撃だ。全員固まれ。アルバ、ポー、お前たちは皆を守る石壁の準備をしろ。アズーとエイトは私と一緒に、車を回収する。ついてこい」


 「は、はい!」


 「了解しました」


 「うす…『石壁ウォール』」


 「えっと次は…『氷壁アイスウォール』」


 事前の指示通りの壁が形成される。最低限の効率で防御力の高い組み合わせだ。


 「おかあさ…」


 視界の端に跪く幼女の姿が見えた。同時に、過去の記憶がフラッシュバックする。


 気づけば駆け出していた。小さい体で呆然とする幼女を背負い、走っていた。教員の怒号が聞こえ、車を操縦せんとするエイトの驚く顔が見えた。飛来する瓦礫を確認した。


 「『岩礁ヴァンプ』」


 咄嗟に口走り、地面からせりあがる壁をイメージする。瓦礫は壁に衝突し、砕け散った。遠くない場所で爆発があったことをその時点で認識した。


 「乗れ!アズー!」


 どちらの声ともわからぬままに、車に乗り込んだ。


 「…その少女については、後で聞いてやるからお前が保護していろ。エイトは皆のもとまで車を回せ」


 背負ったままであった幼女を下ろし、顔色を確認する。虚ろな目は見開かれ、こちらと相対しているにも関わらず、眼窩がんかを越えてどこか遠くを見ているようだった。


 「俺はアズーだ、家族はどうした」


 「おかあさん…おとうさん…」


 「どうしたんだ」


 「みんな、いなくなっちゃった」


 「爆発に巻き込まれたか」


 「みんなと一緒にいたら…落ちてきた」


 「建物に潰されたか…ありがとう、説明してくれて。俺たちはここから逃げるけど…」


 「逃げろって、言った、おかあさん」


 「一緒に行こう」


 幼女が頷き、こちらを見る。今度こそ焦点が合った。その瞬間、幼女の目から涙があふれだした。


 同時に他の生徒たちも乗り込んできた。なんとか耐えられたようだ。


 「アズー君!?どうしたの、その子…」


 「頼めるか?」


 「…わかったよ。それと、疲れてるから防衛お願い」


 「マルク、ロト、それと…アズー、防衛線だ。死ぬ気で車を守れ。運転はエイト、できるな?」


 「わ、わかりました。大丈夫です」


 「よし、脱出するぞ、道案内はする。生きて帰ろう」


 「「はい!」」


 掛け声とともに荷台から身を乗り出す。気を伺ったかのように、気球からまっすぐに複数の火球が飛んできた。今度は落ち着いて、正確に打てる。


 「…『氷礁アイスヴァンプ三重トリリオン』」


 3枚の壁が火球の届く位置にせり上がり、衝突した場所に爆風が起きる。


 「アズー、正当防衛だ。威嚇射撃いかくしゃげきの用意をしろ」


 「了解。ロト、火球は当たれば爆発する。氷で防御しろ」


 「わかってる。俺たちでやるぞ、マルク」


 「おう、氷な?把握した」


 ここ2か月間で力学魔道をきちんとやった甲斐がある。あの気球には実験台になってもらおう。


 「子どもを泣かすな、『ペンシルロケット』」


 発射されたロケットを爆発の推進力でマトリョーシカ的に3弾に分けて切り離す自慢の狙撃魔法だ。お前たちが爆発してしまえ。


 しかし、相手側も一枚岩ではないようで、すぐさま墜落させられてしまった。撃墜されやすいのが難点だ。だが、瓦礫がそこら中にあふれている以上こちらにだって打つ手はある。


 「『鋳造キャスティング』『オルガンロケット・五重奏クインテッド』」


 しかし、5連ペンシルロケットもすんでのところで防がれてしまった。


 「死にやがれ、『第3番』」


 26個のペンシルロケットが放たれる。それぞれの軌道を微調節し、場所とタイミングをずらすことで、無数の爆発が気球を襲ったことを確認した。全身を疲労感が襲った。素材を生成しないとはいえ、複数の魔道を並行して使うのはいまだに慣れない。


 「お前…容赦ないんだな」


 「…腹立ってたんだ」


 「アズー君、今日調子良いね。いつもより出力出てるよ」


 確かに…今までと比べて10倍くらいの出力が…10倍?


 視界が真っ暗になる。鼓動が早まる。意識が…遠のいていく…


魔術とか魔法の類は考えれば考えるほど楽しくなっちゃうんです。


追記:計算間違えていたので訂正しました。78=3×26

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