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48 実習先「戦場」

前回の話でちょうど50話目だったみたいです。というわけで、記念すべき51話目です。

凄惨、その一言に尽きた。


「戦場」という言葉をこれほど如実に表現した状況もない、ヒトによるヒトの業の成れの果てだった。


ルヴル大陸北部、アルマキア半島は、古くから三つの大陸間における交通の要衝であり、現世で言うアラビア半島程度の面積を三つの国が分割して統治していた。半島の付け根には、侵略を広げるヌーヴォスト帝国との戦闘が絶えず、今なお停戦の目途が立っていない紛争地域であった。


今回の実習は、ポーザオルフという戦場跡での実施となった。跡といえど占領下の街であり、そこら辺には銃をたずさえた兵士たちがうろついているもんだからおっかない。ヌーヴォスト軍によって一週間ほど前に占領されたことから、廃墟となった建物と難民たちの悲痛な表情が散見される、見るも惨たらしい荒れ地となっていた。


「今回はここで1時間ほど見学し、その内容をまとめて報告書とします。中立である証となる赤いリボンは常に携帯しておくように。また、現地の兵隊による規制が入ったら素直に諦めな、質問がなければ解散とする」


8人しかいない実習生であるが、担当教員の指示のもと各々の興味の向く方へと散っていった。ある者は難民の話を伺いに、ある者は果敢にも兵士と相対しに、ある者は破壊跡の様子を確認しに行った。俺も広域破壊魔道には興味があるので、廃墟を見て回っていた。


「アズー、よくお前は平気な顔で見て回れるな」


「…ああ、慣れてるからな。」


「強いんだね、アズー君は」


「そんなこともない、経験があるだけだ」


「火事の話か?」


「まあ、そんなとこだ」


話しながら廃墟の裏手に回ったとき、軽い眩暈めまいを覚えた。異臭を放つどす黒い山がそびえ立っていたからだ。


もっともアズーには別の意味と眩暈を伴っているが。少年と少女が吐瀉物としゃぶつを撒き散らす中、アズーは果敢にも死体に近づき、その傷跡を見て回っていた。


傷の多くは火傷となっている、熱を帯びた衝撃波による傷が多い。爆発魔道は対人戦において特に優秀であり、火力の効率が高いことが見て取れる。無数の穴が開いているのはそういう魔道か、或いは銃によるものか。腐乱の程度に差があることから、戦闘は長時間にわたって続いたか、処理の程度そのものに差があったのかは考察しなければならないな。


「どけ、小僧」


視界を大きな影が覆う。魔道兵士が今まさに、死体の山を燃やすところであったようだ。油のようなものを撒いた後、着火される。俺たち学生が放てる炎の大きさではなく、兵士の肩書は伊達ではないことがわかる。


「…なんだ小僧、死体の焼却なんかに興味があるのか?」


死体性愛者ネクロフィリアなのさ」


「ははっ…何言ってやがる」


「…冗談さ、気にしないでくれ」


「残ってるオイルをやるよ、せいぜいお勉強に役立てな」


そう言うと、小瓶に移し替えられた黄色い液体を投げられた。意外と学生にも協力的なんだな。


「感謝するよ、また会えるといいな」


「兵士が再び相見えるのは戦場だけだ、できれば…お前みたいな小僧は殺したくねえ」


「…そうだな」


最低限の会話でその場を立ち去る。内心、突然銃口を向けられないか恐怖していた。殺意の無くなった戦場も慣れない。煙にまみれた血の匂いこそが、俺の経験した唯一の戦場であったがために、眩暈に再び侵されるのも当然か。


「終わったか?申し訳ない、俺たちは別のところを見てたよ」


「いいよ、しょうがない」


「私たちも、巻き込まれた方々のお話を聞いてきたんだ。報告書はこれで書けると思う」


「そしたら、そろそろ戻ってみるか」


踵を返したその時、不吉極まりないサイレンが鳴り響いた。



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