42 前を向こう。
???パート含みます。
荒れ果てた町の真ん中で、青年は立ち尽くしていた。
「ジョズ…ビクター…メイ…ナット…」
傍らの槌を拾い上げ、勇者は久方ぶりの涙を流した。
「ライノ…」
徐々に滲みゆく瓦礫の山は、自分の背丈がいかに小さいかを思い出させた。
「紺野…」
旧友の名を口ずさみ、彼は拳を握った。滴り落ちる血は、死んだ街の地に染みて消えた。
* * *
「戦力を増強しよう。セリア、文書の作成をよろしく。新たにダンクスに配置するパーティの募集を掛けたいな、ディック頼む…それもこれも一旦シビリティアに戻ってからだな、帰ろうか」
「…っす」
「り、了解!」
明らかに焦った様子の将軍。二年前から交友のあった、あの少年との親交は浅くなかったのだろう。現地に駐屯していた軍の壊滅も相まって、相当困惑し、衰弱しているに違いない。近くにいたい、傍で支えていたい…
二人で、静かな場所で…
「セリア」
「ひゃ、は、はい!」
後ろから突然声を掛けられ、思わず跳び上がってしまった。
「いつも雑務を投げちゃって、ごめんな。戻ってゆっくりできるようになったらまた、一緒に稽古でもしよう」
「…はい!ありがとうございます!」
「『鶴首』のみんなでな!」
…にぶ。
「とりあえず、向こうの様子も気になるし、仕事の確認もしたし、行こっか」
立ち上がり、砂を払うおにーさん。優しい背中、さみしそうな背中。いつも大きく見えていた背中。
そうか、おにーさんは激動の中にいる。人ひとり分では背負いきれないほどの重責と経験の中にいる。どうしようもないことだって、弱音を吐きたいことだって、涙を流したくなるようなことだって、ずっと戦ってきた。抗い続けてきたんだ。なら僕たちが掛けられる言葉は一つ。
「…おにーさん」
「どうし…」
唇が触れ合う。
「戦おう、みんなで!」
「……ああ!」
背中が大きくなる。僕はまた、事が終わってからおにーさんの強さに気づく。
* * *
「あら… 結局生き延びちゃったわね」
「そうだねぇ、ハードモードでも序盤くらいは突破してほしいとこだから」
「その原因もあんたでしょ、もうすこしショタには優しくしなさいよ」
「黙れ黙れ、ゲームなんか難しければ難しいほど楽しいんだから」
「あんたねぇ…それずっと言ってるけど、うっかり死なないでよ」
「わかってる、新しくゲームを始めるのも大変だし、俺たちにとっての娯楽なんてこれくらいしかないからな」
「それよりも主人公よ、彼はどうなっているの?」
「すっかり推しだね、つい最近まで別の子に夢中だったのに」
「いいのよそんなこと、彼の成長が知りたいわ。自信作なんでしょ?」
「はいはいっと…そもそも、成長が飛躍的に増進するには激情が必要で、あのモブはそれを果たしてくれたはずだから…」
「はいはいオタクさん、彼のレベルはいくつですか?」
「ったく…今は54だ」
「あら、だいぶ伸びたわね。あとはこのレベルに合わせて能力も上がっていくでしょう…いや~今から楽しみだわ!」
「そうね、そういう導きだからね」
「ええ、大いなる運命の導きのままに…」
とりあえず一区切り。ここまで読んでいただいた方へ、本当にありがとうございました。まだまだ読んでくださる方へ、これからもよろしくお願いします。




