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41 夜が明ける

前回までの話にもちょくちょく手を加えせさていただきました。

 天をも焦がす暗い炎が猛る夜。しかして、その炎ですら消えてしまうと思えるほどの血が流れる夜だった。喧騒、爆発、轟音の演奏会はやむことを知らず、茹だる熱気に包まれて誰もかれもがおかしくなっていた。


 王国軍第三大隊将軍ダンテに与えられた命は、ガザに蔓延る犯罪組織の掃討と、第八の軍の排除である。しかし、二つの誤算が彼をこの場所に留めていた。ひとつは、ほかならぬ自国民を燃えるゴミとして大義名分のもとに虐殺できる愉悦から。もうひとつは、金の卵を見つけてしまったからである。


 第三大隊は、個の力を重んじる隊である。その性格故に、小隊規模以上での統率された作戦が不得手であるほか、市街戦や略奪を率先して引き受けるという特色がある。そういう集団の中にいて将軍を務める彼もまた、無類の強さと決闘に対する強い執着があるのだ。


 ニースと呼ばれた少年と対峙し、彼は殺すことを躊躇ってしまった。欲しい、求めていた人材だ。タイマンにおける格闘センス、全体の構図から的確な位置をとる頭脳、何より怒りに身を任せて戦える動物性に惹かれてしまったのだ。


「ふぅ……そろそろですかね」


 ダンテはため息をつくと、その巨漢を煙の中に消した。次の瞬間、彼の刃はマイザスの首を貫き、続けざまにキールの胴を串刺しにした。


「ぐぁっ……」


「オヤジ…ッ!?」


 仕事は終わりだ、金の卵が孵化する様子を楽しみにでもしていよう。


「逃がすかよ」


「!!??」


 突如として現れた、小さな、ひどく痩せた、怒りをあらわにした少年に背後をとられた。それ(・・)はぶら下げた剣を振り上げると同時、ダンテの防御を跳ね除け、頬に深い傷を負わせた。咄嗟の防衛反応から動いた足は、少年の腹に突き刺さっていた。死を直感していた。


 もう一人いた……!!


 彼は歓喜に打ち震え、一秒にも満たない世界の中で余韻と呆けていた。


「アメリゴ!貴方が殿を!」


「うぃっす!」


「ゲホッ……にが…すかよ…」


「クソッ!アズー…!」


 ニースはすぐに駆け出し、煙の中を細心の注意と共に進むが、終ぞ敵の姿を捉えることはできなかった。踵を返すと、炎に紛れるようにして友達の死体を持ち去り、行方をくらませるように建物に入った。アズーも自力で立ち上がり、冷たくなったティトとレイを担いで後を追った。


 師匠たちは、見分けがつかないほどに解体され、晒されていた。黙って遠くから見ていることしかできない現実が腹立たしかった。


 郊外に遺棄された死体の中には、凌辱された冒険者らしき女の死体が混じっていた。傍らには通信中の特殊発信機が、破壊された跡もなく放置されていた。


 第十一大隊将軍ファウストが到着した段階では、ブルぺスタ本部及び『砂漠のハイエナ』拠点は全焼し、生存者の数は不明であった。


 大都市の一地域で起きた紛争は、ここに決着した。


   


   死者数


   ガザ市民  戦闘員:78人 非戦闘員:約12000人


   王国軍   戦闘員:81人 非戦闘員:2人




   *  *  *  


 静かになってしまったガザにおいてさらに静かな場所、小高い丘のような場所にて。二人の少年は静かに立ち上がった。


「俺、兵士になってくる。こんな腐った国だけど、ぶっ壊すには内部からじゃないと」


「賛成だ。俺も魔術を修めて…お前の隣に立てるようになってやるよ」


「そしたらまた、ここに集まろう。みんなもここで待ってくれるから…」


「ああ…そうだな」


「…なあ」


「なんだ?」


「名前を…くれないか?親父がくれるはずだった…から、さ」


「ああ、そういえばそんな話もあったな」


 少年は数舜悩んだ。


「ゼン…ゼンでどうだ?苗字まで言われたら、ディグローズで」


「かっけえじゃん。ゼン…ゼンねぇ…」


「気に入ってくれんなら、俺としてもうれしいよ」


「おう、今日から俺の名前は…ゼンだ!」


「よろしくな、リーダー・ゼン」


「おう!」


 二人の少年は、経験と絶望、新世界への期待を胸に歩き始めた。残酷な光が灯った深く暗い夜は、誰も知らぬ夜明けを迎えた。


情勢が情勢なだけに不謹慎すぎて申し訳なくなっています。

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